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「ある明治人の記録 会津人柴五郎の遺書」柴五郎著 石光真人編 中公新書
義和団の乱における北京の各国公使館地区での籠城戦において実質的な指揮をとり、世界各国から賞賛された柴五郎の日記とその解説です。
柴五郎は、会津の生まれで、幕末に会津若松城が落城した時、10歳でした。
五郎は、会津若松城が黒煙に覆われ、わが家と思しきあたりが火の海になっているのを見ます。家の女性たち、祖母(81歳)、母(50歳)、兄太一郎の妻(20歳)、姉(19歳)、妹(7歳)は会津戦争の際に自
「The Person You Mean to Be」 Dolly Chugh 著
人は、限定倫理的に物事を判断して、限定合理的に行動を決定します。そして「限定」の範囲は非常に狭く、99.999996%の情報が無意識に追いやられているのです。つまり、人は、0.000004%の情報だけを経験的に選択しているのにすぎません。たぶん、これが自我の大きさなのでしょうね。
そんな狭い範囲での判断で、自分が完璧に正しいと考えるのはおこがましいのです。われわれにできることは「(完全に)いい人
「ソーシャル物理学」 アレックス・ペントランド著 草思社文庫
アイデアの流れは速いが、似たアイデアに繰り返し晒されているエコーチェンバー状態にある人は、孤立状態にある人と同じくらい、現実から切り離されていきます。
アイデアの流れが速いということは、新しいアイデアが出ると素早くそれを参照すること。情報は素早く入ってくるのですが、偏りができてしまいます。心理療法にしても、一部の療法が極端に注目されることがよくあります。政治や外交の情報にしてもどうも偏りがある。
「南京事件を調査せよ」 清水潔著 文春文庫
目立たず地道だけど、とても大切な仕事をする人がいるものです。例えば、南京攻略戦に参加した兵士たちの日記を集めた小野賢二さんです。小野さんは、歴史の専門家でもない「化学労働者」です。小野さんは、会津若松で編成された「歩兵第65連隊」、「山砲兵第19連隊」の兵士たちの日記を集めました。その数31冊、うち26冊分はコピーで5冊は現物であり、立派な一次資料です。
これらの日記には、複数の人たちが、193
「ブラックホールを見つけた男」アーサー・I・ミラー著 草思社文庫
スプラマニアン・チャンドラセカールは、インド生まれの理論天体物理学者で、1983年にノーベル物理学賞を受賞しています。
受賞の理由は、白色矮星の構造の研究に対してなされたものでした。しかし、チャンドラセカールは、その受賞理由に対しては、複雑な思いがあったそうです。
彼は、インドからイギリスにわたり、ケンブリッジで白色矮星を研究していた1930年代に、白色矮星になるためには上限の質量があり、それ
「戦争まで 歴史を決めた交渉と日本の失敗」 加藤陽子著 朝日出版社
この本は、東大文学部教授の加藤陽子さんが、28人の中高生を相手に行った講義をまとめたものです。
複雑怪奇な戦前から日米開戦までの流れについて解説し、「リットン報告書」、「日独伊三国同盟」、「日米交渉」の3つの機会でなぜ開戦を避ける選択ができなかったのかについて、中高生に質問を投げかけながら講義が進んでいきます。それぞれの史実に対し、その背景を多角的に考察する加藤さんの歴史観には、厚みがあります。