記事一覧
「工場」 小山田浩子 著 新潮文庫
会社員時代を思い出させてくれた短編集でした。
表面に見えている世界は、真実なのでしょうか?薄皮一枚剥いだとこっろに、全く違う世界が展開しているのではないか・・・と言うことを、僕は会社員時代に常に感じていました。
僕が最初に配属されたのは、製油所です。石油製品を作る工場でした。僕は、入社した直後、偉い方から「自分の年収の3倍稼げ。それくらい会社に貢献できたら一人前だ」と言われました。
それから
「お探し物は図書室まで」 青山美智子 著 ポプラ文庫
どこかでだれかと知らないうちに繋がっているかもしれないと感じさせる短編集です。
それぞれの短編の主人公たちの人生は思い通りになっていません。東京に出てファッション業界で働いていると地元の友達に言っていながら、実はスーパーの婦人服売り場で働いている藤木朋香、出産を機に編集の担当から外され資料室に異動することになった崎谷夏美、真面目に家具メーカーの経理として働いているけれど社長の姪の部下の女性に当た
「愛の夢とか」 川上未映子 著 講談社文庫
短編小説集です。
川上未映子さんの文章が好きです。思わず立ち止まってしまうフレーズがある。矛盾もある(作者があえてそうしたのだろうけれど)。その中で、情景のビジュアルなイメージが浮かんでくるし、そこから妄想も働き始めます(時に暴走します)。
ビアンカ、でお願いします。(p.24)・・・「愛の夢とか」
最小と最少がおなじもの。(p.36)・・・「いちご畑が永遠につづいていくのだから」
最大と最多
「日の名残り」 カズオ・イシグロ 著 ハヤカワepi文庫
静かな心に染み入るような小説でした。
物語は、ダーリントン・ホールと呼ばれる大邸宅の執事ミスター・スティーブンスが、かつての同僚ミス・ケントン(現ミセス・ベン)に会いに行く旅行の道程を、スティーブンスの一人称の形で進められていきます。
旅行中、スティーブンスは、ダーリントン・ホールで起こった様々な出来事を思い出します。ダーリントン・ホールには、欧米の要人がやってきます。ハリファックス卿、チャー
「群青の夜の羽毛布」 山本文緒 著 角川文庫
虐待を受けているのなら、そんな家から逃げればいいと思うのですが、実際に長年虐待を受けてきた人には、それが難しい。ずっとジャッジされ批判されてきているわけですから、人の目が怖くなる。電車にも乗れなくなり、お店に一人で入って食べることもできなくなる場合が少なくありません。
主人公のさとるは、男性のような名前ですが24歳の女性です。なぜ男性のような名前になったのかには、重要な意味があるのですが、ネタバ
「プロット・アゲインスト・アメリカ」フィリップ・ロス 著 集英社文庫
「プロット・アゲインスト・アメリカ」フィリップ・ロス 著 集英社文庫
舞台は1940年代アメリカです。ローズベルトの代わりに、空の英雄あのリンドバーグが大統領になるという歴史改変小説。
物語の中では、リンドバーグは親ナチス的な傾向を持つ孤立主義者として描かれています。実際には、リンドバーグは大統領候補にもなれませんでしたが、親ナチスの傾向はあったようです。また、反ユダヤ的な姿勢をとっていました。
「「私」という男の生涯」 石原慎太郎 著 幻冬舎文庫
僕は、石原慎太郎さんとは、考え方も理想とする方向も違います。
でも、自分が死んで妻も亡くなってから絶対に出してくれと、幻冬舎の見城社長に著者が生前に頼んでいた本とのことなので、手に取ってみました。
よくここまで赤裸々に書いたなと思います。
女性遍歴がすごい。
「無謀な結婚の後、妻に支えられながらも繰り返した女たちとの不倫は、間に入った弁護士に、あれは面倒な相手だと同情されたほどの女にまでひ