【読書感想文】芥川龍之介「秋」
こんばんは!
秋に相応しい短編小説をご紹介します!小栗義樹です!
本日は読書感想文を書かせて頂きます!
僕が好きな本・読んだ本を題材に感想文を書く試みです!この感想文を通して、ちょっとでも題材にした本が知れるきっかけになればいいなと思っております。
本日の題材はコチラ!
芥川龍之介「秋」
です。
どうなのでしょうか?
芥川龍之介の作品の中で「秋」はメジャーな作品に入るのでしょうか?
僕は色々な作家の小説を読みますが、芥川龍之介が作家としては一番好きです。そして、芥川龍之介の作品の中で一番好きな作品が「秋」です。
9月中旬~10月末くらいまでの中で、どこかで「秋」を差し込みたいなと思っていました。もう少し待とうかなとも思ったのですが、我慢できないのでもう書きます(笑)
それくらい好きな作品です。
初めて読んだときの衝撃を未だにはっきり覚えています。高校生1年生の時でした。失恋・すれ違い・女性視点・大正ロマン・個人主義といった、明治時代には無かった新しい視点が存分に盛り込まれています。しかも、お話がすごく美しい。切なくてきれいで、とにかく崇高です。
夏目漱石の三四郎というお話がありますが、あの感覚にすごく近いです。三四郎は、新しい恋愛の価値観みたいなものを提示した作品だと思うのですが、この作品をより個人的な視点に落とし込み、時代観のズレみたいなものを全面的に反映すると秋のようなお話にならざるを得ないと思うのです。
簡単に言えば失恋、諦めなければいけない恋の話を書いているのですが、この書き方が本当に上品です。制約が多い時代の恋心とは、こんなにも儚いものなのかと思って、僕の中に大きな理想を植え付けていきました。正直言って、秋を読んで以降、他の恋愛小説があんまり素敵なものに思えなくなってしまったように感じます。
タイトルのつけ方も上手です。秋って妙に寂しいというか切ない気持ちになるじゃないですか。冬の前に訪れる通り過ぎるだけの季節みたいな印象があって、刹那的な分鮮烈でもある。メインの登場人物である信子は、最後にバスの中で「秋」としみじみ思う描写があり、そこでこの作品は終わるんですけど、自分の中の恋心に結論を出して、前に進まなければいけないという究極の寂しさが、秋という季節が持つ切なさと非常にリンクしていて、とにかくもうたまらんのです。
なんでも自由にできてしまう現代と比較すると、制限があった時代の方がシンプルに物事が済んで見えるのではないかと思えるくらい、この物語は実に綺麗で儚いなと思います。
この作品、一貫して男性側の気持ちが見えないようになっています。そこも色気があって良いです。ダラダラダラダラ正直な気持ちを吐露されるくらいなら、このくらい奥行きがあって、読んでいる側の人間がその気持ちを想像できるようにしておいた方が、深みがあるし、心が抉られるように思います。
ポジションとセリフだけを読めば、その人の価値観が分かるように書かれているのも素敵だなと思います。そして、それぞれの登場人物がきれいに対比できるようになっている点も美しいです。
構成として完璧なんじゃないですかね?
これよりきれいな作品を見たことがないです。
ページにして21ページの短い作品ですが、この短いお話の中にこれだけの要素を盛り込んだうえで、ここまで感情を動かせる作品を作れる芥川龍之介は、本当に天才だったのだと思います。
羅生門や鼻など、素敵な作品が沢山ありますが、秋こそ芥川龍之介の真骨頂なのではないでしょうか?
文学というよりもエンタメに近い作品だと思っていて、非常に読みやすい作品だなと思っています。河童とか歯車など、晩年の作品を読む前に、ぜひ「秋」を読んでみてほしいです。
古本屋で芥川龍之介の短編集を買えば大体入っていると思います。
ぜひ読んでみてください。
というわけで、本日はこの辺で失礼いたします。
ここまで読んで下さりありがとうございました。
また明日の記事でお会いしましょう!
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