蛙太郎

俳優志望の20代です。 詩作挑戦中。何度も読まれる詩を目指します。

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  • よいしょ(自選詩)

記事一覧

詩| 汀

歯を磨いて布団を被る 気になる肝機能血糖値 五畳の部屋に散らばる毛髪 一本一銭の価値もない もう使わないマスクの束 一枚二十円にしちゃ軽い 今月の家賃が払えない 爪が…

蛙太郎
2週間前
11

詩| 衣替え

厚着明けは首周りが心許なくて、忘れ物の予感と似ていたから、振り返れば春だった。 建設現場のフェンスから漏れ出すノスタルジア。愛しい轍は霞んでいく。 スカーレットの…

蛙太郎
1か月前
19

詩| 穴

夜を穿った角部屋の 満ち足りないベランダで ループ再生の夜を見てた 月と嘯く黄信号の点滅 砂枯れた室外機の羅列 寿命を終えた星の幽霊 人も車輪も猫も踏まない交差点の中…

蛙太郎
3か月前
15

詩| 河口にて

ウミネコが二羽隣り合って、乾いた空を見上げて鳴いた。 じれったい別れ話の行方を、彼らは知る由もなかった。 あっけらかんの空が吸い上げた寂寞は、人工衛星が回収するさ…

蛙太郎
4か月前
12

✉️

2024/2/23から、僕が出演する舞台があります。この投稿を見て興味を持ってくれた方がいましたら是非観に来て頂きたく。 演劇二本立ての公演で、僕は「てんとう」という演目…

蛙太郎
4か月前
8

詩| 夜行バス Part II

ヘッドライトが影を伸ばして モーテルを串刺しにした 昨日のくちづけがはにかむ 外付けメモリから流れてくる 他人事のような持ち物だ 忘れられて、荷物になって、ガサゴソ…

蛙太郎
5か月前
17

詩| 日傘

くよくよくよと鳴る言葉を、毎日いくつも飲み込んで、アセトアルデヒドは乱痴気。今日を終わるのが苦手みたい。 直線道路を一人ゆく、あの人はまだ日傘を差している。 叫…

蛙太郎
8か月前
24

詩| 送電塔を見に行く

産毛だけ濡らすような雨 正午過ぎから降り続き 季節を塗り替える薄い風が 夜を讃えて吹き渡った 送電塔を見に行く 骨組みのシンメトリー 過ぎた夏も短すぎる秋も 二十歩先…

蛙太郎
9か月前
17

詩| レ

愛着から膨らんで、風船はほら、市松模様の雲を透過した。 エプロンのポッケから、はみ出る程のありがとうを、結わえて一緒に放ったでしょう。 今、何を見ていますか? 欄…

蛙太郎
9か月前
11

詩| テンプレ

僕たちは何も持たなかった 漲ったものも乾いてしまうし 結んで開いた拳の中には琥珀色の生命線 占いを信じないのは最大限の抵抗で 最小限の夕焼けがずっと縁取っているせい…

蛙太郎
11か月前
16

詩| 惑星交信

もしもし 幸せを捨てちゃって、悲しみを拾ってきたような人。 あなたが捨てた幸せを拾った、幸運な人もいるようです。 感謝も同情もされないあなたが、ラブソングを口遊む…

蛙太郎
1年前
16

漢検準一級受けてきました。自己採点は合格圏内!やぴ✌️

蛙太郎
1年前
6

詩| 空け

   浮雲ひとつ  さびしい片足が      空中に蹲る    破れた靴下みたく     今にも千切れそう 死ぬ間際だけお前を   もう忘れるから  お前は死ぬ間際…

蛙太郎
1年前
15

あおぞら探訪記

色々が膨らんでメンタルが危うくおわりを告げかけた。こりゃアカンということで、タイムカードをンニャー!と押した勢いのまま夜行バスに飛び乗った。 行き先は幼少期を過…

蛙太郎
1年前
23

詩| 待ち惚け

待ち合わせたランドマークに ぬるい水たまりがあったら それは私のつま先から 溢れた歓喜のオアシスです。 帰り着いた最寄駅のホームを 一陣の風が通り過ぎたら それは私…

蛙太郎
1年前
23

詩| 羽

待ちくたびれたような青 明日こそ私も空を飛べたら ありふれた悩みに薬はないから ありふれた夜に物語はないから 夜が明るければ もっと強く 翼があったならば もっと清く …

蛙太郎
1年前
13
詩| 汀

詩| 汀

歯を磨いて布団を被る
気になる肝機能血糖値
五畳の部屋に散らばる毛髪
一本一銭の価値もない
もう使わないマスクの束
一枚二十円にしちゃ軽い
今月の家賃が払えない
爪が死んでも詩と志は辞さない

いつでも抜け出していい街
居場所つくっても空調が効かない
猥雑で醜悪で狡猾な口角
恐れてたどん底はそう深くはない
粋と意気地の二本脚
背水の陣で仁王立ち
惚れた腫れたは波がさらった
身の程なんてとっくに分か

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詩| 衣替え

詩| 衣替え

厚着明けは首周りが心許なくて、忘れ物の予感と似ていたから、振り返れば春だった。
建設現場のフェンスから漏れ出すノスタルジア。愛しい轍は霞んでいく。
スカーレットの鈍行列車。秘色の膝の裏。おやすみのベルガマスク。
質量を失くしても背負い続けて、土踏まずを凹ませた。
あれから何も出来ないままで、湿っぽくなった風が吹く。

トーキョータワーのアンテナが、脳漿に放つ微弱な電流。目まぐるしいこの街で、立って

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詩| 穴

詩| 穴

夜を穿った角部屋の
満ち足りないベランダで
ループ再生の夜を見てた
月と嘯く黄信号の点滅
砂枯れた室外機の羅列
寿命を終えた星の幽霊
人も車輪も猫も踏まない交差点の中央で
思い出はいつも酔い痴れている
サンダルからはみ出した小指に
コニャックを垂らすと
言いそびれたサヨナラが
恍惚としてむしゃぶりついてくる
祭りの後の匂いがした
道端に落ちたソース焼きそばと
恋人たちの頬に残った微かな唾液と
それ

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詩| 河口にて

詩| 河口にて

ウミネコが二羽隣り合って、乾いた空を見上げて鳴いた。
じれったい別れ話の行方を、彼らは知る由もなかった。
あっけらかんの空が吸い上げた寂寞は、人工衛星が回収するさ。
忘れなくたって幾星霜。そうだね、空は明るかった。

終の住処はどこだろう。前奏曲を湛えた水平線を望む坂。
二人が見向きもしなかった、跨線橋の端に伸びた階段。
下ると決まって陽だまりがあって、自販機にはラムネだけ並ぶ。
ほんの数十秒夢見

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✉️

✉️

2024/2/23から、僕が出演する舞台があります。この投稿を見て興味を持ってくれた方がいましたら是非観に来て頂きたく。
演劇二本立ての公演で、僕は「てんとう」という演目の主人公を演じます。
noteに詩を投稿していることもありまして、「てんとう」のあらすじというか、作品紹介文を頼まれて書きました。

以下、公演の詳細です。

劇団FAX 二本立て公演「ボツワナ・てんとう」

■日時
2024年2

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詩| 夜行バス Part II

詩| 夜行バス Part II

ヘッドライトが影を伸ばして
モーテルを串刺しにした
昨日のくちづけがはにかむ
外付けメモリから流れてくる
他人事のような持ち物だ
忘れられて、荷物になって、ガサゴソ鳴って
おやすみ。

螺旋状に上昇すると
故郷も酸素も遠のいた
夜行は全角スペース一個分
体を丸めて宇宙への旅
周回するライカの郷愁
回る往年のキラーチューン
放り出されて、荷物になって、ガサゴソ鳴って
おやすみ。

好きで嫌いなひとた

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詩| 日傘

詩| 日傘

くよくよくよと鳴る言葉を、毎日いくつも飲み込んで、アセトアルデヒドは乱痴気。今日を終わるのが苦手みたい。

直線道路を一人ゆく、あの人はまだ日傘を差している。

叫んでしまえば簡単に世界は壊れる。そんな緊張感でコンクリートは地球に根を張る。冷ややかな輪郭に、触れようとは誰も思わない。

遮る物は無くなって、日傘は吸い切れない光を浴びる。

蟠りに覆われた都市、メランコリック・ワンダーランド。抜け穴

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詩| 送電塔を見に行く

詩| 送電塔を見に行く

産毛だけ濡らすような雨
正午過ぎから降り続き
季節を塗り替える薄い風が
夜を讃えて吹き渡った
送電塔を見に行く
骨組みのシンメトリー
過ぎた夏も短すぎる秋も

二十歩先の生垣からドロン
と落ちた白い毛むくじゃら
夜道の猫とだけ分かち合える
人の哀しさいじらしさ
送電塔を見に行く
よい子はたちいりきんしの
半端な大人と猫のランデヴー

キンモクセイに関する記述に
むず痒くなる鼻をつまんだ
一月前の十

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詩| レ

詩| レ

愛着から膨らんで、風船はほら、市松模様の雲を透過した。
エプロンのポッケから、はみ出る程のありがとうを、結わえて一緒に放ったでしょう。
今、何を見ていますか?
欄干に手を置く度。

敵はどいつと、あいつが憎いと、ギンガムチェックの重なり探し。
取り合ってから綻ぶ手、昨日の夢の落とし前に、カラーコーンを並べました。
今なに見てる?
赤信号で止まる度。

空を仰げば背筋が伸びる、靴下が覗く、おかえりの

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詩| テンプレ

詩| テンプレ

僕たちは何も持たなかった
漲ったものも乾いてしまうし
結んで開いた拳の中には琥珀色の生命線
占いを信じないのは最大限の抵抗で
最小限の夕焼けがずっと縁取っているせいで
通学カバンの内ポケットに入れっぱなしにしてきた青春
ダウンジャケットのフードの裏でまだ春を探す徒な温度

僕たちはいつも待っていた
夢で見た約束の既視感
一世紀前の海原を知っている気がする
君を愛している、それが嘘になるまで
君を愛

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詩| 惑星交信

詩| 惑星交信

もしもし
幸せを捨てちゃって、悲しみを拾ってきたような人。
あなたが捨てた幸せを拾った、幸運な人もいるようです。
感謝も同情もされないあなたが、ラブソングを口遊む時、
太陽系第九惑星の、核で蠢くものがあります。

もしもし
四畳半の窪みに嵌って、5ミリの雨を聞いていた人。
部屋の隅にはホコリと一緒に、アジアの戦塵が煌めきます。
ゴミ捨ても支払いもこなすあなたが、白い目で見られるのであれば、
私は紫

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漢検準一級受けてきました。自己採点は合格圏内!やぴ✌️

詩| 空け

詩| 空け

   浮雲ひとつ
 さびしい片足が      空中に蹲る   
破れた靴下みたく     今にも千切れそう
死ぬ間際だけお前を   もう忘れるから
 お前は死ぬ間際だけぼくを思い出してくれ
浮雲ひとつ漂っている
やがて一碧
二匹

あおぞら探訪記

あおぞら探訪記

色々が膨らんでメンタルが危うくおわりを告げかけた。こりゃアカンということで、タイムカードをンニャー!と押した勢いのまま夜行バスに飛び乗った。
行き先は幼少期を過ごした町、愛知県は北設楽郡東栄町だ。

字面や駅の体裁から伺えるように、なかなかの田舎町である。ちなみに駅は鬼の顔を模している。赤鬼が舞う花まつりの里。0歳からの約6年間をオレはここで過ごした。当時同級生はオレを含めて3人だけだった。

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詩| 待ち惚け

詩| 待ち惚け

待ち合わせたランドマークに
ぬるい水たまりがあったら
それは私のつま先から
溢れた歓喜のオアシスです。

帰り着いた最寄駅のホームを
一陣の風が通り過ぎたら
それは私のご機嫌な
口笛が引き連れた鳥です。

鳴らないはずの目覚まし時計が
夢現の鼓膜を揺らしたなら
それは私が目を遣った花が
散る間際のお便りです。

残された私には
罪と涙があるだけです。
それらを拾い集めたあなたに
私は逢いたかったの

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詩| 羽

詩| 羽

待ちくたびれたような青
明日こそ私も空を飛べたら
ありふれた悩みに薬はないから
ありふれた夜に物語はないから
夜が明るければ
もっと強く
翼があったならば
もっと清く
生き抜ける類の猛禽類
加害者であること
咎められず
被害者であること
同情されず
生に責任はなく
死に責任もなく
空を飛ぶ海を渡るビルに遊ぶ山に眠る

昨日も明日もなかったら
飛べたんだろう