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詩| 河口にて
ウミネコが二羽隣り合って、乾いた空を見上げて鳴いた。
じれったい別れ話の行方を、彼らは知る由もなかった。
あっけらかんの空が吸い上げた寂寞は、人工衛星が回収するさ。
忘れなくたって幾星霜。そうだね、空は明るかった。
終の住処はどこだろう。前奏曲を湛えた水平線を望む坂。
二人が見向きもしなかった、跨線橋の端に伸びた階段。
下ると決まって陽だまりがあって、自販機にはラムネだけ並ぶ。
ほんの数十秒夢見ただけ。あ、ああ。世界が止まる。
この世で一番悲しい人は、匂いの変わった風を胸元で温める。
この世で一番愛しい人に、伏し目で愛を伝えたように。
勘違いで咲いた花の袂で、分かち合えない話をしよう。
新品のタバコを開ける度、君に申し訳なく思うのです。
こうして今日も終わるのだろうし、彼らそうして飛び立つだろう。
空の明度を少し上げて。