見出し画像

詩| 待ち惚け

待ち合わせたランドマークに
ぬるい水たまりがあったら
それは私のつま先から
溢れた歓喜のオアシスです。

帰り着いた最寄駅のホームを
一陣の風が通り過ぎたら
それは私のご機嫌な
口笛が引き連れた鳥です。

鳴らないはずの目覚まし時計が
夢現の鼓膜を揺らしたなら
それは私が目を遣った花が
散る間際のお便りです。

残された私には
罪と涙があるだけです。
それらを拾い集めたあなたに
私は逢いたかったのです。
海風が止まない高台で
きっと待っています。
そこには決して落ちない林檎の生る木が立っているといいます。