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詩| 送電塔を見に行く
産毛だけ濡らすような雨
正午過ぎから降り続き
季節を塗り替える薄い風が
夜を讃えて吹き渡った
送電塔を見に行く
骨組みのシンメトリー
過ぎた夏も短すぎる秋も
二十歩先の生垣からドロン
と落ちた白い毛むくじゃら
夜道の猫とだけ分かち合える
人の哀しさいじらしさ
送電塔を見に行く
よい子はたちいりきんしの
半端な大人と猫のランデヴー
キンモクセイに関する記述に
むず痒くなる鼻をつまんだ
一月前の十年前の
前腕に煙る嫋やかな香り
送電塔を見に行く
不可侵な金網の向こう
手を振る腕がたまに愛しい
送電塔に細断された菱形の青空
めくった穴はワームホールで
めくったそれを封筒に貼って
黄昏を駆ける少年少女へ
送電塔を見に行く
変わらないものがあるとすれば
ここで見つかるだろうから