記事一覧
【詩】冬の箱いっぱい
かがやく星夜ふる星夜
六芒の光の生まれまことの名
夜はあかるく夜はあかるい
雪よりも月よりも夜よりも
冬の星夜はダイヤモンドと白の箱
あかるいあかるい
出会いと思い出の箱いっぱい
積み上げるほど箱いっぱい
クリスマスカードを買ったので、装飾してたら興が乗ってきて、書きたくなってカードに書いた詩です。
良いクリスマスを!
【詩】まだもっと水になれ
まだもっと水に近づいて
まだ足りない
まだもっと水になっていく
まだ足りない
水に浮かぶ花弁の張力も浮力も失って
沈んだなら溶けて
遊色さえ飲み込んで
プラジオクレースとアノーサイトの間
渇いた水から溢れ出す
暗湿の透明を注ぎ
終いに水になる 水になる
水だけが長大で簡潔な掟を保存して
それを秘密に仕舞い込み
あらゆるものに行き渡る
水になれ、水になれれば
誓いも定めも呑み込んで
どこまでもす
【詩】極楽鳥の淡い影
君の落とした七色の影を見て
人は言う、風喰い鳥は眠らないと
絢爛を引き装い羽ばたく羽根の
微風にさえ乱れ戦ぐ細やかさを隠し
空の頂はまだ遠い
けれど君は、儚さを己で引き破る必要はない
淡色の羽影を恥じることはない
ましてや風に向かう翼を
罪に思うことはない、誰に理解されずとも
理解されずとも
その影さえも、誰かのグレアになるのだから
【詩】バイオレット・ダンス
月光よりも、
なんて美しいシロップ
君が嫌いなバイオレットの香り
悲劇の宝石を溶かしたような
甘苦い重いカクテルのなか
僕とダンスを
沈みゆくシルバーシュガーゆっくりと
飛んでいく微かな炭酸の空世界
暮れない夕紫のユートピア
藍色のドレスを揺らして
切り抜かれたハート
抒情的なピアノを鳴らし
透明な哀しみの青色の
僕とダンスを
額装されないカンバスに
毒のように甘い百花蜜
二人で描いた絵
渇き
【詩】さびしきものよ面影よ
祝ぎの宴の花影透かしみた
障子の歌う口笛を
塞いでおくれ
童の手拍子、椛の葉
冬の来たればしんしんと
雪落つ音に枕して
さびしきものも眠れるか
春の来たればぽつぽつと
雪解け雫に目を覚まし
明るき瀬へと流れ込み
空に上がりて雲となり
散っていつかは忘れるか
さびしきものよ 面影よ
【詩】金砂のストームグラス
こんなにたくさんのものを失くした
砕けないはずの構造を破ってまで
金砂のストームグラスに
埋没させた朝夕の万色
落とし物を受け取ろうともしない君は
何も無くしていないと信じているから
砂遊びをくりかえす昼夜
重ねゆく薄紙の日記帳
目覚めない金砂の嵐
静まる日を待ち続ける
フラスコの中にうずくまり
星の見えない眠りのスクロール
四つの錠が溶けるのはいつ?
約束しよう、
彗星線は幾筋も降り注ぎ
金砂
【詩】眠るセイレーンのための歌
空想の絵の具を集める
星座でできた君の金の箱
今はもう自由に虹を描けるだけの
探し続けた黄色もあるけど
うつ伏せに絵筆を持ったまま
君は眠ってしまった
透明弦のアルペジオ
凝った碧を粉にして
君は想像の水に入り
金剛石の涙をばら撒いて
息を全部溶かしてしまう
目を覚まして
息などしなくていいから
現実の潮の中で
君の絵の具は分子を結んだ
もう怯えなくていい
雨が降ることも
ただ君は感情の喉を開き