【詩】沈降の歌

白銀や白金に傷をつけて
無疵の鋼や夜の青玉に
無数の擦り傷を

まろい深海の水に降り続く
無限の雪の殻は
ぼくの肌を撫ぜさえもせず通り過ぎるだけ
何も知らない無垢と
何か失った空虚とは違う
目を覚さないままでもしも
このまま海泥の褥に眠るなら
ぼくは何のために歌声を失ったのだろう

残酷も棘も横暴さえも
すべては合図に過ぎない
伝説も栄誉も希望さえも
すべては序奏に過ぎない
朝陽よ、誰も知らない言葉によって
闇の底へと刃を差し込んで

報われなくていい
救われなくていい
この物語は悲しいままでいい
だけれどせめて傷をつけて
無疵の鋼や夜の青玉に
無数の擦り傷を
それらの傷から赤い涙を流すことで
ぼくの骸が捧げ物になるように

すべては符号に過ぎない
二元の理、空と水、始まりと終わり
無限の落下と沈降
空高く届かない星々と海
クジラの飲み込んだ数々の嘘
ぼくの旅と破滅さえ
すべては序詞に過ぎない
白銀や白金に傷をつけて
きみよ、薄薔薇色の涙を流して
きみの美しい、そのすべての瞼から

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