【詩】金星を呼ぶ歌

あなたは夜空の炎だ
姿を見せれば明明と煌めく金星よ
西空を見つめる旅人の目を
奪わずにはいられない
それなのに、冬の冷たい千切雲次々と
目隠しをしてヴェールを被せ
あなたを冥くしようとする

夕暮れ時にこそ明く燃えることを
諸人に望まれ祈りを受ける星よ
木星が大粒の涙を落とす
月は細く無力な憂歌を歌うばかり
氷の黒雲は吹けば飛ぶようなものなのに
遠いあなたの栄光の火を隠す
まるであなたが居ないかのように
旅人は落胆し、残された孤独を思う
あなたという炎が居なければ
明日への星々の階段は完成しないのだ

冬空の翳の隙間から
あなたは煌々と燃える姿を見せて
西への帰途を恐れ急ぐ旅人を
希望に奮い立たせたまえ
瞳の中に唯一つだけ眩く閃き
あらゆる賛美を受けて
あなたは堂々とその崇き御座につき
音無しの金色の歌を
今宵も彼らへ降らせたまえ!

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