【詩】月星はかように歌った

あなたがわたしに月星を与えるのなら
世界の水はどこまでも注ぎ落ち
時間と言葉の隙間を満たすだろう
日照りの太陽に向かい
理不尽な掟を語る者など
黒い水の中に沈めてしまうのだ
無機と有機が円環の巡りに踊らされ
過去が次々と組み上げられてはまた崩れ
人々がつかむ理の端切れを
濫流が奪い去り押し流す

一つ光もなく意味もない闇に
あなたが星の名を与えたから
わたしは荒波で海砂を掻き乱すように
小さなものたちを吹き散らす
あなたを脅し縛るもの
あなたを咎め貶めるもの
どんな名前の糸も鎖も
引きちぎって遠く果てへと洗い流し
清く満ちる水の真ん中であなたが
煌めき続ける唯一の光であることを
わたしは魚と星の名前で歌い続ける

解けゆく軌道で近づきながら
いつかは落ちて一つになるまで
わたしが月星を与えられ
あなたが太陽であることを思い出すまで
わたしが月星を与えられたから

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