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七月国の物語

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これらは星々の御座にまします七月国の王子様から聞かせていただいた物語。いくつもの寓話が、夜空に散乱している中の一つ。ここで誰かの何になるわけでもなく、ただ慰めに語られる、七月国の… もっと読む
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記事一覧

【詩】いねむりクジラと水の旅

十七光年星と星とのすきまには 乾いた氷のかけらばかり 退屈が引き伸ばしてしまった世界には …

eos Hoshiyo
1年前
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【物語/詩】砂糖の南極

 透明な薄紫色のゼリーのペンギンが甘くて冷たい琥珀糖の氷塊の上でスケートをしています。 …

eos Hoshiyo
1年前
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【詩】アセノスフェアの底の底

アセノスフェアの底の底 地の底巌底重力の底抜けた底の底 時間の淀みの泥の底 傲れる星の翼の…

eos Hoshiyo
1年前
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【詩】めぐれ天星

めぐれ天星 さだめととがめの轍に沿って めぐれ天星 渡れぬ川が天嶺から黒く流れて閾をえが…

eos Hoshiyo
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【詩】常夜のうた

昔星堕ちて沈んだ海底で ルミノールの燈をともし 囚われびとの常夜のうたげ ひとあし先に暗や…

eos Hoshiyo
1年前
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【創作童話】月の夜番の蟹の物語

 太陽がお休みしている夜の間に、天の海を明るくしているあの月がどのように運ばれているかを…

eos Hoshiyo
1年前
3

【詩】Aurora

星界で一番澄んだ水で溶かした オーロラの色を薄く塗る 筆は花弁の形 それを模して花が生まれた あなたを讃えるために 珪素の星に閉ざされた あなたは青ざめて見え 夕星は西の標となった そして青色は世に満ちた 再び昇る朝日のために その薔薇色を引き立てるため 空一面に溢れた あなたのために雨を降らせ あなたのために空を晴らす 水に沈んだ天の花 泥の中の星を掬うあなた やさしき指先よ 夜と昼の隙間の色の 海をいきましょう 放射形のすべてが その上に浮かんでいる 花、星、雪、

【創作童話】ノトスの冒険

 ある日小さなペンギンが氷の上でふと夢から目覚めて思いました。 (はて、どうしてぼくはこ…

eos Hoshiyo
1年前
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【詩】わすれ寝物語・二

続きはどうなりましたか やはり二人は二度と逢えぬまま 物語は終わるのですか? ◇ いく晩も…

eos Hoshiyo
1年前
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【詩】わすれ寝物語

いく尋の川の岸辺で姫君は 銀笛の音を水平線に遠く聴き 鳥の声では無いとある晩気づいた 風の…

eos Hoshiyo
1年前
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【詩】いさなの旅人

かなしくはない 重力に捕われどこまでも沈み この深海に何の光もなくても 透明になってすべて…

eos Hoshiyo
1年前
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【創作童話】流れ星とレモンドーナツ

 ある夜、満ちたまんまるお月様の前を大きな流れ星が通り過ぎました。  その流れ星があんま…

eos Hoshiyo
1年前
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【詩】双つでできている

物語の始まりに 重力井戸の底に落とした 宝物を探していた王子あるいはお姫様 手に触れる六等…

eos Hoshiyo
1年前
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【詩】七月国の贈り物

テーブルには二層のカクテル 青いケーキと銀の星 水色のbiosphere オーロラ色のリボンをかけて 七月国の贈り物 惑星はブーケの中で呼吸をしている 地軸の踊る夏色のパーティ 水の子午線の席に座したもう なんでも持ってる貴方様へ 差し上げられるものなど 想像もつかない 真ん中だけが空いたままの 夢を透かしたプレゼントボックスに 沢山のキャンディと御所望の品を ほんとの私は知っているのに まるで見えない透明のガラスの器 誰にでも見えるよう 丸い器を満たすため 涙や赤い血を捧