【詩】双つでできている

物語の始まりに
重力井戸の底に落とした
宝物を探していた王子あるいはお姫様
手に触れる六等星の砂粒ばかり
極夜より暗い水素雲さえない空で
ずっと下まで落ちてしまった
名前のない小さな真珠
呼びかけることもできない
だから身を投げて探しに行こうか

真っ暗なトンネルの壁に
プラズマのイルミネーションが
空想の動物たちを描く
花火のように明滅して通り過ぎ
沈んでいく重力の水の中へ
青い魚たち、歌う鯨たち
背ばかり高いエメラルドの木々の中へ
一等星の石ころにも用はない

一つのものを壊した時に
盛大な虹の火花が散った
だから世界に真の孤独はない
宇宙は双つでできている
水の鏡面に映るように
同じものを探す君がいるなら
僕らは孤独ではない
星屑の砂浜に宝探しをして
見上げたら青い空に白い雲がかかり
美しいものだけのメルヘンが
誰にも退屈と罵られずに
ここにあるということを
手紙でやりとりをしよう

世界が双つでできているとおり
失くしたものも二つあるから
海辺で今日はドーナツを半分こ
プレゼントはそれが良い
全てのものが双つでできている
プレゼントはそれが良い

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