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心のnote|エッセイ・創作

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「きっと、誰にも、聞こえない。」 そんな心をふと、垣間見る。
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2019年7月の記事一覧

なすのみそ汁

なすのみそ汁

朝、1日の始まり。

ぼんやりとした頭で
いつもの電車に乗る。

そこここが空いた、
休日の車内。

「お父さんと座るぅ。」
とはしゃぐ少女と家族。

数多に連なる
ビジネスバッグの列も

今日は影を潜めている。

きっとここは、
日常という名の非日常。

悠久の調べ。

「いつもと違う」が
織りなす朝に、

ほっと一息、心がみちる。

【本日の一軒】

喫茶みちる(京都五条)
https://w

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そっと手にとる

そっと手にとる

心は伝播する。

1秒が10倍くらいに感じられる。
本棚が好きだ。

その場にいるだけで、
駆け足の心臓が、走るのをやめる。
心の重荷がふっと、溶けてゆく。

これほどまでにおだやかな「初めまして」が
交わされる場所はあるのだろうか。

偶然の出会い。
心の重なり、そして高揚。

ここにいるときだけは、
世界中の誰もが優しい人で、
街中の喧騒も、オフィスに響く電話の音も
ほんのささいなフィクション

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星に願いを。

星に願いを。

3年ぶり。
たぶん、それくらい。

学生時分に関わった子どもたちも
3歳分の成長と、3年分の入れ替わり。

一生懸命に会を進める学生と
一瞬一瞬をただただ楽しむ子ども。

たった3年、されど3年。
どこか遠い景色になってしまった。

けれども思うことがある。

みんな、元気でよかった。

入学当初、幼児だった子が
今では5年生。

全くしゃべらなかったあの日が
まるで噓みたいに、

声も、背も、笑

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「手が届く」という幸せ

「手が届く」という幸せ

不思議。

手に取ればわかり、
手を伝えば助かり、
足りなければ貸したり。

手を振ればほほ笑み、
手を取ればやすらぎ。

「手の届く幸せ」を一人一人に。

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1.リバ邸十三の住人になりました。

本当に偶然の産物にほかならないですね。
社会人3年目になり、
2度目の転職。2か月の就活。
学校現場を離れ、
学習参考書系の編集プロダクションへ。

家庭と職場

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本当に満たされるのだろうか。

本当に満たされるのだろうか。

雨が降って、靴がぐしょぐしょで不満。

電車で1駅分乗り過ごして遅刻。
会社に行きたくなくなる。

時間がなくて焦っているのに
先行く人が横並びでだらだらと喋っている。

些細なマイナスは、
どこまでいっても僕の思いに過ぎなくて。

けれども同じくらい小さなことに
プラスを感じることもある。

今日は買い物に行った。

好きな音楽に出会えた。

懐かしい映画を思い出した。

なんでもない1個の点を

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ここではないどこかを、僕たちは探している。

ここではないどこかを、僕たちは探している。

満足する度、コンマ1秒前までの願いが
ただの日常と化す。

気がつけば、あれほど望んだ場所でさえ、
空を仰ぎたくなっている。

そのくせ、失うのが怖くて。
それでいて、手のひらには何もなくて。

永遠に続くトンネルが視界を奪う。

あてどない日々と
果てしない幻に揺り動かされ、
空気が抜けて僕らはしぼむ。

ふくらむにはあまりにも年老いてしまった。

だから僕は、

風船を飛ばすHeになる。

ただ、そこにいる。

ただ、そこにいる。

流される日々の、微かなほとり。
その腕に抱かれ、私は眠る。

さざなみ、こもれび、並木道。
せせらぎ、ともしび、風の音。

ゆらぎ、たゆたい、それでもそこに。

そうしたあいまいが、
かしこまった私の、輪郭を撫でる。

すうーっと溶け出した、
小さなわたしは、

鈍く、味気ない音を立てて、
シンクを濡らす。

また、知らない誰かの、
夢を見ていた。

例えるなら、法隆寺。

例えるなら、法隆寺。

柿食へば、鐘が鳴る。
あの、法隆寺。

幾多の地震に耐え、現存する
世界最古の木造建築。

五重の塔を貫く心柱はどっしり構え、
悠久の刻の趣を漂わせている。

まるで、一度の焼失もしなかったかのような
涼しげな面持ちで。

優しい水のあげかた

僕らは、
自分の6割を知らない。

1500ミリを飲み干して、
その3割は食べて摂る。

飲んだ分だけトイレに流れ、
汗に消えるのは食べた分。

行ったり来たり、するそれは
いともたやすく沁み渡る。

誰彼構わずふりまいた、
水は誰かを死へ運ぶ。

渇きを誘う一滴が、
生まれ変わったあなたへ続く。

過ぎたる水は生を薙ぎ、
満ちる彼らの心凪ぐ。

たった2文字に生かされて、
されど2文字に奪われる

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