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#恋愛

ちがうひと

あなたが好き
あなたのいない世界なんて
考えられなくて
あなたのそばに
いればいるほど
あなたとわたしの
境界が溶けて
わたしの中に
あなたが
見えなくなって
触れられなくなるから
あなたとわたしのあいだに
ちかすぎずとおすぎない
適切な距離をつくって
あなたの光を
その輪郭を
わたしに反射させてください
手を伸ばせば
触れられる距離に
あなたの形を

あなたはわたしとちがうひと
だからわたしは

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あなたを想う星

あなたを想う星
夜空を流れて
静かに涙した

どうして心は
あなたに伝わるの
どうしてぬくもりは
わたしをあたためるの
どうして夜空は広いのに
同じ星を見ているの

あなたが想う星
夜の隅で光って
優しく笑った

2017.12.20

中学生のころ
誰と話しても
面白くなくて
休み時間に
十円玉たくさん持って
公衆電話から
でたらめにかけてたって

社会人になって
旅先で出会った女の人と
日本に帰って食事をしたとき
宇宙の話を熱く語って
つまらないって
言われたって

ああ
わたし、そのとき
そこにいたら
あなたを好きになってた

窓から飛ぶことばかり
鏡に沈むことばかり
考えていたわたしは
大人になっても
なんにでもなれると

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名前

過去の風
吹いて
ひさしぶりに
あなたの名前
つぶやいた
その名に含まれた
波の色を
夜空の色を
思い出して
ああ、わたしはあなたを
あなたを、愛したわたしを
いつだったか
いつだったか手放した
何度くりかえし呼んだかわからないその名を
好きだった
その名が意味するものを
すべて

今だって
あなたに会いたい
会ってどうするでもないけれど
すこし照れて
名前を呼んで、笑い合って
いま好きなひとがい

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明日なにを着ようか
あなたと会う前の
わたしのささやかな
たのしみ
この前セールで買ったばかりの
キャミワンピースをおろそうか
でもそろそろ寒いから
お気に入りのニットワンピもいいかも
それともあなたにもらった
同じ趣味のパーカーも着たい
あなたに喜んでもらえる服を着ること
それがわたしのささやかな
よろこび
服を着ること
お化粧をすること
おめかしをすることは
あなたに会うための
聖なる儀式

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おなじ

おなじ

「ここ、いきたい」
パンを齧りながら送る
ことしの夏はふたりで走れなかったから
大阪のはずれの山のカフェ
お掃除とお買い物すましてスマホを見たら
起きたばかりのあなた
「いいよ」とひとつ返事
めずらしいなとおもって
なれないまとめ髪してたら
ちかづいてくる
おおきな地響きはいつもとおなじ
あなたにかりたヘルメットとサングラス
いつも似合わないって笑われる
まっくろな車体にピンクの座布団しいて
うし

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しりたい

すきということは
しりたいということと
おなじなのかな
すきなひとや
すきなもののことは
しりたいとおもうもの
けれどずっといっしょにいると
もうしったようなきがして
すきということは
ただそばにいることのような
そんなきがするけれど
おだやかに
しりたいとおもいつづけるきもち
それがたえないことが
あいというものなのではないかとおもう
だからあいは
えいえんにそんざいするのだとおもう

2023

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たったひとりの

目が覚めたら
昔の彼がいた
わたしは安堵ではなく
喪失感を覚え

彼はわたしを抱きしめ
「おかえり」とささやいた
わたしは、この抱擁で
感じられないあたたかさが
ついさっきまであったことを思い出した
けれどそのあたたかさが
誰によってもたらされたのか
どうしても
思い出すことができなかった

そのあたたかさは
わたしがつくりだした
まぼろしなのだと
ひとりごちて
目が覚め

わたしはひとりなのだと

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迷路

迷路

あなたのことば
あなたの思考の迷路から
やっと出てきた
それなのに
わたしはそのことば
わたしの思考の迷路に
当てはめて
迷宮入り
わたしの思考の
迷路の中で
出口が見つからずに
腐りかけてる
悲しみや怒りが
あなたのことばを攻撃する
あなたの迷路から
やっと生まれてきたばかりの
きれいで未完成なことばが
わたしの黒黒とした感情に
殺されてしまう
わたしの迷路は悲しい
わたしはわたしの迷路を彷徨う

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夏の終わり

夏の終わり

夜になると
あなたのことを思い出す
うそ、
朝でも昼でも
ふと、こころが
あなたを追いかけている

さみしいんだと思ってた
あなたに会いたくて
なのに会えなくて
こどくを感じるのだと

けれど、あなたからの電話で
あなたの声を聞いて
ほっとこころが
あたたかくなったとき
同時に、胸がくるしくなって

ただただあなたを好きな気持ちだけが
わたしをくるしくさせるのだと
気がついた

あなたと出逢ってず

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電話

電話

今日は寒いから
なんだか少し寂しくて
声を聞きたくなったけれど
迷惑かなって
コートのポケットにしまったばかりの
スマホが鳴った
あなたの名前が
ディスプレイに浮かんで
考えるより先に
指が動いた
もしもし?
弾んだ声で
あなたの返事をねだる
もしもし
いつもの落ち着いた声に
一瞬で心が温まる
わたしに話したいと思ってくれたの?
それともわたしの声を聞きたくなった?
わたしは相槌を打ちながら
あな

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7月7日

7月7日

涙の季節にあなたと出会い
以来7月7日は止んでいた
それまで必ず降っていた雨さえ

前日まで晴れていても
必ずその日は雨だった
会いたい人に会えない涙が
空から溢れていた

あなた
わたしの
何もかも変えた
わたしの涙声
悲しかったのに
いつもひとりだったのに
いまわたし、笑ってるみたい

今朝、起きたら
窓の外、雨が降りしきって
あなたとの約束を思った
一年で一日だけ
降らないでと願う日に

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飛行機

飛行機

走る雲
エンジンの唸り
ガソリンとカボティーヌと
遠くの海のにおい
あなたと眺める空はいつも
忘れられない予感がする

懐かしい木々と
太陽の光線と
ダイアモンドの海
二〇二一年六月
どこにも行けなくて
誰もいない空港へ行った

飛行機が見たいとあなたは言った
あなたの見たいものが見たいと思った

広い空港を彷徨ったけれど
お店はほとんど閉まっていて
飛行機は見当たらない
今日は月曜だからほとんど

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思い出話

思い出話

あなた、その話
楽しそうにするの
わたし、あなたの話
嬉しそうに聞くの

出会ってきた沢山の人たち
訪れた場所や触れたもの
あなた、好きなのね
わたし、彼らや彼女らには会えないけれど
そこへは行ったことないし
見たこともないけれど
繰り返し何度も聞くうちにほら
少しずつ見えてくる
若さの匂いとか
悲しみや絶望の手触りとか
迷いや苦しみの輪郭とか
喜びや希望の本質とか

きらきら光って
宝石みたいね

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