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飛行機
走る雲
エンジンの唸り
ガソリンとカボティーヌと
遠くの海のにおい
あなたと眺める空はいつも
忘れられない予感がする
懐かしい木々と
太陽の光線と
ダイアモンドの海
二〇二一年六月
どこにも行けなくて
誰もいない空港へ行った
飛行機が見たいとあなたは言った
あなたの見たいものが見たいと思った
広い空港を彷徨ったけれど
お店はほとんど閉まっていて
飛行機は見当たらない
今日は月曜だからほとんど飛ばないよ
あっちは日曜だから
警備員のおじさんはゆったりと言った
諦めて帰ることにした二人
心残りの滑走路を眺め
自分たちが悪いような気がした
駐車場の脇に紫陽花が植わっていて
紫陽花が好きな人は
誰かのために何かをする人
そんな気がして
走り出して
流れる海を眺めていたら
突然、動く大きな影に捕まった
あなた、空見上げ
わたしも見上げたら
大きな
大きな飛行機
笑った
はっは
その嬉しそうな声が
二人の小さなしあわせに溶けて
その笑い声をいつまでも覚えていようと
わたし、あなたに後ろから
ぎゅっとしがみついた
走る雲
エンジンの唸り
ガソリンとカボティーヌと
あなたの背中と
海のにおい
懐かしい木々と
太陽の光線と
ダイアモンドの海と
大きな大きな飛行機
絶対に忘れない
わたしたちの小さなしあわせが
こんな不安に満ちた世界でも
あの紫陽花みたいに
優しく咲けるように
2021.06.09
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