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#一駅ぶんのおどろき

KADOKAWA文芸WEBマガジン「カドブン」とnoteがコラボして、ショートストーリーの投稿コンテスト「#一駅ぶんのおどろき」を開催します!

定番の記事一覧

+13

美瑛

日曜日、フードコートの片隅で

私は主婦です。平日は働いているから、日曜日は郊外のショッピングモールに買い出しに出かけます。ついでに子供達をゲームコーナーで遊ばせた後、フードコートでクレープを食べさせる。日曜日は混むから午前中に行っておやつを食べて帰ってくる。毎週、そんな感じです。 それで気づいちゃったのよ。いつもフードコートのはじっこで、クロスワードパズルをしているおじいさんがいるのです。何を食べるわけでもなく、混む前のフードコートのテーブルに座って、ずっとクロスワードパズルを解いている。一度気づいてか

【エッセイ】そっとレモンをおいてくる

 高校生の頃、現国の時間に梶井基次郎という小説家が書いた『檸檬』という作品を習った。この作品を初めて読んだ時、こんなに面白い物語を書ける人がいるのかと感動したものである。主人公である「私」の心は、「えたいの知れない不吉な塊」に終始圧えつけられていた。元気だった頃の「私」は丸善で色々な商品をみることが好きだったのだが、この頃はどうにも足が遠のいている。好きな事といえば、みすぼらしい裏通りを眺めたり、おはじきをなめることぐらいであった。そのように欝屈としている「私」は、偶然通りか

カドブン×note ショートストーリー投稿コンテスト「#一駅ぶんのおどろき」開催!

【結果発表】 審査結果を発表しました!以下の記事リンクからぜひご覧ください。 KADOKAWA文芸WEBマガジン「カドブン」とnoteで、ショートストーリーの投稿コンテストを開催します。 テーマは「#一駅ぶんのおどろき」。通勤や通学の合間にスマホで手軽に読めて、おどろきや発見があるショートストーリーを募集します。 ジャンルは、ミステリ、ホラー、恋愛、エッセイ……なんでも構いません。文字数は、電車で一駅の間に読むことのできる1,000文字程度を目安とします。応募の際にはハ

短編小説 『母の味噌汁のレシピ』

なぜこの味噌汁を飲むと、涙が止まらないのだろう。 母が死んだ。 連絡を受けた時にはすでに末期の大腸ガンとのことだった。 毎年健康診断は受けていたはずなのに、なぜ、という気持ちは拭えなかったが、誰かを責めている暇もなくその1ヶ月後、母は自宅で静かに息を引き取った。 涙は出なかった。 料理の上手な人で、それが僕の自慢だった。 友達が遊びに来ると、いつもとても褒められる。 そんなことないわ、褒められちゃっておばちゃん嬉しいわ、と顔を赤らめる母を見ながら胸を張るのが僕の仕事

【第1話】未来を制する者は現代も制す!

こんにちは、未来人 J です! 未来で、価値創造マーケティング を行っています! 価値創造マーケティングでは、 その名のとおり 価値を創造します。 でも、難しいんですよ、 価値を創造するのって!!! 新しい価値を提供するには、 潜在価値を見つけるか、価値を創造するか。 簡単にできたら、コンサルタントはいらねぇ。 でもね、僕、気付いたんです、 僕には価値を創造する能力はないけど、 「今、当たり前にあるものって、  過去においては潜在価値じゃないの!?

カドブン×note ショートストーリー投稿コンテスト「#一駅ぶんのおどろき」の審査結果を発表します!

11月8日から約1ヶ月間、通勤や通学の合間にスマホで手軽に読めて、おどろきや発見があるショートストーリーを募集した「#一駅ぶんのおどろき」投稿コンテスト。期間中(11/8/2-12/10)には、なんと2,014もの作品をご応募いただきました!たくさんの素晴らしい作品のご投稿、ありがとうございます。 noteでの応募作品一覧は、こちらをご覧ください。 「グランプリ1名様、準グランプリ5名様、優秀作品複数名様」とご案内しておりましたが、審査員4名とcakes編集部による選考の

80歳

たとえばの話だ。 私は今80歳で、夫に先立たれ、たった1人で暮らしている。1人で暮らす一軒家は、しーんと静まりかえって、途方もなく広い。娘は市内に家庭を持ち、息子は飛行機に乗らなければ会えないほど、遠く離れて暮らしている。 幸い、体はまだ元気だが、時々ひどく寂しい。この頃は、子ども達がまだ幼かった日を思い出す。ふわふわの頬、私を取り合う声、ぐちゃぐちゃに取り込まれた洗濯物、本読みの丸つけ。 川の字で眠る布団のずれ、寝相の悪い息子の回し蹴り。溜まっていく友人からの連絡。同

わたしの財布

サンタクロースにはじめて手紙を書いた理由は、どうしても欲しいものがあるから、だった。どうしても欲しかったのは、自分用の財布。 手紙に思いをしたためるために、真っ白い紙をパタパタと折って、本のかたちにした。 あて名はもちろん、【サンタクロースさんへ】。 住所は、サンタほどの有名人あての手紙には不要らしい。母からの教えだ。 「おこづかいをいれる、わたしのさいふがほしいです。かわいいくて、おみせにうっているようなのがほしいです。」 小学校に向かって家を出る時、手紙は母親に託した

Amazon『ほしい物リスト』が被災地支援に役立つお話

2019年11月9日 毎日新聞(筆者:原奈摘、坂根真理) Amazonには『ほしい物リスト』という機能があります。 どういう物かと言いますと、 ① 自分の欲しい物をリスト化し、ネットに公表する。 ② それを見た『お友達や支援者』が購入し、プレゼントする。 このような機能になります。ただ使い方を間違えて、 例えば「ファンが多い方」がネタでUPするとおかしな事になります💦 基本は『友人へのお祝いの品』贈呈サービスから始まっています。 誕生日、結婚祝いなどで、欲しい物を

父のスキヤキ

食べ物は捨てちゃいけない。 いつもそう思っている。だから、バイキング形式のビュッフェで、あれもこれもお皿に溢れるくらいに取ってきて、半分以上、平気で残しているのを見ると悲しくなる。 家で料理をする時も、メニューを考える時から冷蔵庫の残り物を最後までどうやって使いきれるかを考える。残った料理も、少しだけ姿を変えながら翌日の食卓に登場することも少なくない。残さずに美味しく食べる工夫をする。 いつからこうなったんだろうか……。 ふと、何故かスキヤキは父親が最初から最後まで面

休日のち晴れ

『とりあえず』とか『なんとなく』って すごくいい言葉だなあと思う。 自分の気持ちをいちばん大切にしている ような気がして私はとてもすきだ。

¥300

あかり

「ねえ、パパ怖いよ。」 映画が始まる前、客席の照明が落ちると、あかりは私の手を握ってきた。 ★ あかりの部屋は2階にあり、いつも、この部屋で遊んでいた。 電気のスイッチに背が届かなかったあかりは、夕方になると、2階からパパを呼びつけた。 「パパ、電気つけて。」 私が2階に上がると、電気のスイッチの下であかりが待っている。私は、あかりを抱きかかえ、まっすぐに伸ばされた人差し指で、スイッチを入れた。 「明るくなったね、パパ。」 あかりが、もう少し大きくなって、お風

よろこびのスパイラル

こんな人になりたいなあと 想う出会いが多くてうれしい秋。 たったそれだけのことで 目に写る世界がやさしく見えた気がした。

¥300

車窓

私の人生が、些細ではあるが、ある時を境に変わってしまって、二度と元に戻らなくなった、その出来事を書いて置こうと思う。 今はもう七年も昔になるがその日、私は大多数の人がそうするのと同じく、列車に乗って、会社から家に帰るところだった。ロングシートに座っている私の右斜め前に、三十前後の女が立っていた。私は二つ、訝しんだ。一つ、私はその日、体をずらすのも億劫で、左端から二番目の席に座り、両隣が空いていた。彼女はそのどちらにも座らず、私は四十過ぎた男の悲しさから、体臭やら、風貌

お父さんのマグカップ 【一駅ぶんのおどろき】

 いつの頃からか父のことが嫌いになった。高校生のときにはほとんど口もきかなかった。仕事で遅くなる日は、一緒に食卓を囲まなくてよくて、ホッとしたのを覚えている。中学生の頃はどうだったんだろう。まだ嫌いじゃなかった気はするんだけど、うーん……父の記憶があまり見つからない。それから21年の月日が流れた。  いまのわたしは、もう二児の母親。朝起きたと思ったら、今日が終わっている。育児に家事に、、忙しさに追いかけられてヘトヘトになって、また朝を迎える。そんな毎日の繰り返し。「わたしだ

古文書『くずし字』AIが瞬時に解読!もしや、我が家の古文書の解読も可能か!?

NHKニュースでも取り上げらていましたが、 古文書の『くずし字』。 AIで、ほぼ解読可能になったと取り上げられていました。 その名も、 くずし字 解読ソフト『KuroNet(クロネット)』開発の主担当者は、カラーヌワット・タリンさん。 なんと、タイ出身の方です。( ̄口 ̄*) タリンさんは、源氏物語に興味を持ったのが始まりだそうです。 早稲田大学に留学して、研究者の道をスタート。 専門家でも1ページ、10分かかるところを、 ほぼ1秒で解読できるそうです。 文字認識の常識

グランプリ受賞しました

お世話になっております。 カドブン×note ショートストーリー投稿コンテスト「#一駅ぶんのおどろき」に応募した作品「リボルバー」がグランプリを受賞いたしました。 「リボルバー」は以前からコツコツ書きためていた掌編小説の一つです。当時は300文字程度でした。 コンテストは1000文字程度ということでしたから、少し書き直して応募させていただきました。 短いお話を書くのは以前から好きだったのですが、せっかく書いても応募出来るようなコンテストをあまり見かけなかったので、今回

読むと幸せになるおまじない

この記事を開いてくれたあなたへ 読むと幸せになるおまじないを ここに用意しました 少しずつ、スクロールして 読み進んてくださいね はじめに、この匿名の中の人 実はちょっとした能力者なんです 地元で有名なんですよ さて、はじめていきましょうか まずは、あなたがもし、出かけ先で歩きながらこの記事を眺めているなら 読み始める前に、道端や木陰で 立ち止まってくださいね もし、駅のホームなら 電車に乗ってから読み進めてください バスや電車に乗っているなら このままスマ

かんなちゃん

ここは、大手ゼネコンの会長室。私は、会長の机の上にいる。会長がパソコンの電源を入れると、3面あるディスプレィが一斉に光りだし、この部屋の様子を映し出した。会長は、私を包んでいた風呂敷を広げ、桐の箱のふたを取って、仰向けにされた私に向かって、ささやいた。 「かんなくん、今日もよろしく頼む。」 私の名は、かんな。会長の懐刀として、極秘任務にあたっている。そもそも、会長と私との馴れ初めは、会長が高級なかつお節を食べたいと言って、かつお節削り器を買ったことに始まる。まあ、端的に言えば

言いたいことがあるんだけど。

このお話は、個人的に書き留めて置きたいので、ちょっと書かせて頂きますね。 今から約2週間前のこと。 こちらの統一試験の前日、息子の友達のお母さんからラインが来ました。 「明日の試験会場が、息子同士が同じなので、もし車で行かれるのであれば、一緒にうちの子も乗せて行ってもらえないかしら?」 ふんふん、そういえばこの子は、小学校3年の時からたまに同じクラスになって、去年は修学旅行時に車で送り迎えしてあげたから、まぁ、いいか?!と思っていたのですが、一応うちの息子にも聞いてみ

マッチ占いの女

街の片隅に、マッチ占いの女がおりました。女は、マッチの炎を見て占うので有名でした。 ある夜、悩みを抱えた女が、マッチ占いのところにやってきました。 「私の職場は女性ばかりで、出会いの機会がありません。いつになったら、素敵な男性と出会えるのでしょうか。」 マッチ占いは、マッチを擦って、炎をじっと見つめました。 「まもなく、素敵な出会いがあります。」 と、言うが早いか、パカラ、パカラとひづめの音がして、見上げると、一頭の白馬がこちらに向かってやってきます。あれよあれよという間に、

娘と一緒に見ているこの景色を、僕はずっと忘れたくない

子供が生まれて5年以上の時が経った。 娘は塗り絵が好きで、よく一緒に手伝わされる。「ここは水色、横はピンクね。」と言われるがまま筆を進めるうちに、結構綺麗に塗れるようになった。ゲームばかりして育った僕にとってはすごく新鮮なことで、今では2人で塗り絵をするのはとても幸せな時間になった。 娘は小児弱視で、幼いながら眼鏡をかけて治療している。ちょうど3歳の頃、眼科検診で再検査してくださいと言われた。まだ小さいから発達が遅いだけだろうと思った、というかそう思いたかった。半信半疑な

あべのハルカスにちくわカルパスのお店を出したいと思った昼下がり

ついにめちゃめちゃうまい世界初のおやつを開発してしまった。。 あまりにもおいしくてびっくりしたのでみんなにも紹介したい。 あの伝説のノリチー兄弟を超える可能性を秘めた、そのおやつの名は、、 ちくわカルパス さぁ、みんなで一緒にっ! ち く わ カ ル パ ス 我が町で毎年大々的に行われるお祭りでは、お神輿&ふれ太鼓のねり歩き途中で2回の休憩が入る。その休憩の時に子供たちに配られるおやつ以外に、大人にもおやつが配られる。大人用のおやつはスルメイカに代表されるつまみ系のお

膨大な経済的な豊かさと成功、繁栄がぼくと、あなたにやってくるみたいです。信じるか信じないかは、あなた次第です。

 いちょうの木が葉を落とし、やけに寒そうに見えた朝。あいにく空も曇りもよう。先を急ぐ足を止めて、手ぶくろとって触れてみる。あんがい幹はあたたかく。なんだかちょっとひと安心。 88888  表参道のお気に入りの喫茶店に移動して、ひと通りブログやSNSをチェックしました。おっと、あと3人で note のフォロワーが8888人になるではないですか。で、よく見ると、フォローしている人の人数もなんと8人。うまくいけば8が5つ並ぶことになるということです。  うぉぉぉとテンション

063. 体調が悪くて、でも頑張って、なのに文句はつらいから

 風邪をひいたり、疲れがたまっていたり、体調が悪いけどしかたなく出勤という経験は誰しもあるでしょう。  だけどパプアニューギニア海産のパート従業員はフリースケジュールだから体調が悪ければ休めばいいだけ。  と、言いたいところですが、現実はそんなことにはなりません。だってパートさんは時給ですから、働きに行かなければお給料はもらえません。生活費のために、体調が悪くても出勤することもあるでしょう。  で、私は思ったのです。体調が悪いながらも頑張って出勤、だけどやはり動きは悪く

8両限界

幼いころ、私は、この駅から電車に乗るのが好きだった。日曜日に、隣町にある百貨店やレストランに連れて行ってもらうのが楽しみで、時刻表よりだいぶ早く駅に来ては、わくわくしながら電車を待っていた。ずいぶんと早く駅に着いたものだから、手持ちぶさたで仕方なく、プラットホームの上の人や物をキョロキョロ見回しては時間を潰していた。 ホームの終わりの方を眺めると、端から2両目くらいのところに、50cmほどの黄色い杭が立っていた。杭には「8両限界」と書かれている。なんの杭なのか、今でもわから

満員電車で起こった悲劇

昭和生まれの20代はもう存在しないという記事をある時にみた。昭和64年1月7日生まれの人でも30歳だ。そう考えるとなんとなく感慨深い。 これから中心となっていくのは平成生まれだろう。そんな平成生まれは全体的に顔も小さく足も長い。まあともかく背が小さく足も当然短い私からみたらうらやましい限りだ。私の息子もそんな私の遺伝子を持っているはずなのにイマドキの体型をしている。なんとなく納得いかないが生活習慣が私の成長期とは違うのだろう。 そんなことはどうでもいい。 混雑している電

『通勤中に読む本が尽きると死ぬ男 vs 京浜東北線』

ま・ず・い!今日は仏滅か!? まさか2冊目の文庫本を忘れるとは! 完全に油断した。京浜東北線がまさかの車両トラブル。 「大井町駅でのお客様同士の乱闘を鎮圧するため駅長が参戦したためしばらく運行を見合わせます」 なんだよそれ!手元の文庫本の残りは30ページ弱。あと10分もかからずに品川へ到着するはずだった。 事件解決。読了。余韻を残して下車。 素晴らしい朝の始まりになるはずだったのに……。 状況を整理しよう。 俺は通勤中に読む本がなくなると窒息して死ぬ男だ。移動時間の

意味がわかるとキュンとする話

パンティ

「これ、落ちましたよ。」 振り返ると、ロングヘアの八頭身美人が私のパンツを持っていた。正確にはアモスタイルのパンティだ。 まずい。駅は通勤ラッシュだ。 私の趣味が女装であると主張しても今はスーツに身を包んだオジサン、説得力が全然無い。 ここは逃げの一手しかない。 「え、パンティ?私が?」 「私、見ていましたよ。貴方がSuicaを取り出す時にこれ落としたの。」 サラリーマンの視線がこちらに集まってくる。 どうする? ここで走って逃げ出すと痴漢と間違われるリスクがある。

ロールプレイングゲーム

「じゃあ、これで」―――これが、専務の佐久間が私に投げ掛けた最後の台詞だった。秘書として数年間、毎日一緒に過ごしたというのに、結局最後まで、私は彼の心の奥底に触れることはなかった。エレベーターの扉が閉まるまで、私は深々と頭を下げて佐久間を見送った。 佐久間という男は、部下への思いやりもなく、ビジネスのセンスもなく、ただほんの少しばかり人より気が利くだけで、のし上がってきたような男だった。社長に同行する海外出張では、現地駐在員に先回りしてチェックインをさせ、喉の弱い社長の為に

大丈夫

この記事を読んでいる貴方は今電車の中だろうか。 私は電車が怖い。 一駅乗るのも想像するだけで恐ろしく怯んでしまう。 電車の中でスマホを見るなんて余裕もなくなる。 昔はこんな私ではなかった。 だけどある日突然電車の中でパニック発作を起こしてからというもの それまで地球の裏側まで普通に楽しく旅をしていた私が 近所のコンビニへ行く事すら怖くて躊躇うようになった。 例えばエレベーター、美容院、歯科、乗り物 閉鎖空間、逃げ出せない、拘束される感じのする場所は一切NGと

セレモニー

 小さいころから車が好きだった。20代はよくレンタカーを借りて海や山へドライブに行った。いまの妻、当時の彼女から「あなたといる時間の8割は車に乗ってる気がするわ」と、よくからかわれていたのがいい思い出だ。  結婚と昇進を機に、思い切ってマイカーを買うことにした。妻を説得するのにひと苦労するかと思いきや、「もちろんよ!」とむしろ力強く後押しされた。高額の部類に入る車種で、もちろんローン。なんて出来た妻だろうと感謝した。  念願の家庭とマイカーを手に入れた僕は、これまでにも増

しあわせの黄色いコーンマヨ軍艦

今日も、えびアボカドが食べたくて、新幹線と在来線が交差する駅の回転すし屋にやってきた。みんな幸せそうにお寿司を食べている中、私は、ファミリー席に一番近いカウンター席に案内された。おもむろに、粉茶に湯を注ぎ、目を閉じて、ゆっくりと喉をうるおした。この瞬間が最高に幸せだ。目を開くと、せっかくのえびアボカドが、はるか左手に消えて行ってしまった。 どうせなら、運試しをしてみよう。目をつむり、ゆっくりとお茶を飲む。そして、目を開いた時、えびアボカドだったら取る。違えば、流して、また、

忘年会の思い出。

今年も早いもので、そろそろ忘年会の計画が始まる頃。 今から25年前。社会人一年目の忘年会のこと。私はその年に札幌から上京。仕事にも土地にも慣れてきた12月。当時住んでいたアパートの最寄り駅は京浜東北線のわらび駅。会社の忘年会が新宿で開催されるという。わらび駅から乗車して、赤羽で埼京線に乗り換えて新宿へ向かった。 無事、迷うことなく開催場所の居酒屋に到着し、仲間たちと合流。楽しく会は進んでいった。「では、ビンゴ大会を始めまーす!」という声が聞こえた。私と同様、上京したてで一

10円コーヒー。

この国に、留学したての頃の話。 新学期が3月から始まるこの国では、入学時まだ寒い。 当時の記憶の中心は、学食の食堂から出ていた白い湯気と、慣れない味噌チゲのにおいだった。ある時「なんで、こんなところまで来ちゃったんだろう・・・」と後悔する時も、あったっけ。 そんな中、大学の一角に、古い自動販売機あった。 こちらの学生たちが休み時間にふと来て、そこから紙コップに入った温かい飲み物を、いとも簡単に持っていく。 なんだろうと思って近寄ると、「コーヒー」という文字のボタンが

女の子がいきなり5の機械になった話

ある女の子がいきなり5の機械になった。 いきなり5の機械になるというのはとんでもないことだ。どれだけとんでもないことかは知識か経験のある人しか分からないかもしれないので、前置きとして簡単に説明する。 すべてのものには状態を表す数字が存在する。例えば生きている人間や動物は1、死体や骨は0だ。この1と0の間に小数点以下は基本的にない。一方、人間が眼鏡やコンタクトレンズ、補聴器、人工臓器や義足義手などをつけると1に小数点以下がつき、だんだん2に近づいていく。とはいっても眼鏡をか

ケーキ屋さんの開店を待つ間に

どうしても行きたいケーキ屋さんがあった。 そのお店は白いテントが目印の、小さなビルの2階にある。 開店の15分前にはお店に着いた。 するとビルの階段から店主の女性がタンタンと降りてくる。そばに停まっていた車から出した箱を両手で抱え、振り返ったところで目が合った。ぺこりと会釈する。 「すみません。まだ準備が出来ていなくて」 「いえいえ、むしろ早く着きすぎてしまいました」 お店まで上がる階段は人がすれちがえないほどの幅だ。準備の邪魔にならないよう外で待とうと思い、鞄から

やっと檸檬堂を5種類飲んだので、個人的に一番好きなタイプを発表する

2019/10/28よりついに全国発売された日本コカ・コーラ初のアルコール飲料檸檬堂。 九州限定の時塩レモンを飲みましたが、非常に美味しく期待して待っておりました。 そして期待して待っていたわりに、全国展開後一カ月近くたつ先日ようやっと全種類制覇いたしました。※追記これまでの4種類に新しく加わったカミソリ檸檬も飲みました! 檸檬堂はアルコール度数と味わいで5種類あります。 アルコール度数3%のはちみつレモン、5%の定番レモン、7%の塩レモン、9%の鬼レモン、同じく9%

ノベルジャム新作日野怪談できました!

昨日までの二日間、三鷹某所にて今年のノベルジャムが開催されました。 やっぱり去年の三日間よりも二日間は時間がなくて疲れた……。 宿が遠かったので、八王子のような泊まり込みや食事つきじゃないという点でも時間ロスが多かった。 そんで、仕事が終わってなかったから、気ぜわしかった。 で、でも、やりとげたぞー! おーーー!! お題は「変!」お、これなら、怪談すべてにあてはまる。 よすよす。 というわけで、誕生したのがこちら! 「笑い狼は笑わない」笑い狼という伝説にまつわ

なんで大学のときあんなに勉強できなかったんだろう?

ラマダン中に学生時代のことを思い出したドグ子。もしも今、 大学で講義を頼まれるとしたら。 『なぜ私たちはこんなに勉強ができないのか』 というテーマでたくさん時間をかけて授業がしたいんだドグ。ドグ子、本当に勉強がわからない学生だったんだドグけどそれって何故かというと、 興味がなかったからなんだドグよね。(*´Д`)だから大体は寝て過ごすか、他のこと考えて過ごすか、「教授の言ってること意味わかんねえええ!」と思って過ごすドグよね。 だから、時折は興味の持てるような先生の時

お酒の適量はどのくらい?~既視感と網の目の一点~

ドグドグ~。 最近ではドグ子、外で飲むことってめったにないんだドグ。でも非常事態には、 「飲まざるをえまい!」という気持ちで出動するドグ。 非常事態……友人が「失恋した」とか、「会社辞めた」とか、これは飲みが必要と思える事態発生時。「飲まぬ訳には、行きませぬな!」という気持ちで飲みに行くドグ。(*´Д`)ところで、お酒の適量って知ってるドグ?SUNTORYのHPによると、生活習慣病になる純アルコール摂取量は、男性で毎日40グラム以上、女性で20グラム以上なんだドグって。

来たる分身時代

「ごめんね。私、付き合ってる人がいるの。分身の術でもあったら、あなたとも付き合えたのにね。」 A子のその言葉が全ての始まりだった。 恋は盲目。A子の言葉を本気にした俺は、ネットで分身の術の情報を必死に集め、様々な組み合わせで試してみた結果、なんと本当に分身できてしまったのである。 分身に成功した俺と俺は、もちろん真っ先に喜び勇んでA子の元へ走った。 アゴが落ちそうなくらい唖然とした表情で俺と俺を出迎えた彼女に、早速分身の術を伝授する。目の前に成功サンプルがあるおかげで

時間をください!!!!

いつも好き、コメントを多く寄せていただいて感謝しています。 これから書く内容は、先日の続きですが、私自身まだ迷っているので、興味のない方は、読み飛ばしてください。貴重なお時間の消費につながります。 山陽本線で岡山駅を出発して、2人が降り立った駅(差し障りがあるので、実名はふせます)。 母からは、おいしいケーキ屋さんに行こうと言われて付いてきたので、私が知っているケーキ屋さんに行こうとしたら、母が急に駅前でタクシーに乗り込んだものだから、「?」になってしまいました。 なん

怪獣くんへ

あなたが生まれてから、もう20年ですね。 私はあなたがまだ赤ちゃんだった時からずっと、あなたのことを漫画にしてきました。 だけど、あなたに手紙を書くのは初めてだね。 あなたはお腹の中にいる時からやんちゃな男の子で、事あるごとに私のお腹を蹴飛ばしていたんだよ。 だから私は、あなたを我が家の「怪獣くん」って呼ぶことにして、『今日の怪獣くん』っていうコミックエッセイをネットに上げることにしたの。 あなたの言動には、いつも驚かされてばかりだった。 例えば雨上がりの日、「土

リボルバー

 一年ぶりに出した石油ストーブの光は、あの日、私達の影を浮かばせた夕陽とよく似ている。  二人きりで下校するのが初めてだった私達は、緊張で何も話すことが出来なかった。足元から伸びた影に引きずられるように、私達は並んで歩いていた。何も話せないならせめてと、あなたの左手の影に、私の右手の影を重ねて、影だけは恋人同士にさせていたっけ。  あれから二十年。  私が石油ストーブの光に目を細めている間、あなたは手にしたスマートフォンの光に目を細めている。  そんなあなたの隣で、私は切りす

061. 継続を疑う

 今月はじめ、成澤俊輔さん(TEDでのスピーチ動画)と2人きりで2時間語り合いました。彼は就労困難者支援の専門家で、それに特化したNPO法人の理事長をしています。  まだ知り合って2年ですが、思考回路が似ているらしく、会うたびにお互いの考えていることや行動がリンクして話が尽きません。  今回話している中で、私がモヤモヤと言語化できなかったことを、成澤さんがパッと言葉にしてくれました。それを紹介したいと思います。 一歩を踏み出すために

彼女のことを、上から見るか、下から見るか

わたしの実家は下町でラブホテルを家族経営していた。 社長であった祖父が亡くなると、叔母のひとりがすぐさま遺産を分けろと憤り、後継者であった父は泣く泣くホテルを売り渡して遺族に遺産分与をしたらしい。 そのあと父と叔母は仲違いをして連絡も取っていない。 この話を聞いた時、なんて強欲な叔母だろうと幻滅した。 時が経ち、風の噂で叔母が飲食店を開くと聞いた。父はお祝いの品など送らなくていいし、わざわざ出向かなくていいと言った。 ある日母がいつもよりしっかり化粧をしているので、どこ

エキストラ

あんなに雨が降ることを祈ったのに、やっぱりその日はケチのつけようのない秋晴れで、それはそのままあの二人の屈託のなさを表しているようで、私はどうも気に入らない。それどころか、夏を乗り越え、幾分優しくなった湘南の海は完璧で、その深いブルーの海に面した教会で向き合う二人はケチのつけようがなくて、あの子のマーメイドラインのウェディングドレスのフォルムとか、時折彼を見つめる睫毛の角度とか、とにかく全てがケチのつけようがなかった。早く、早く、ケチをつけなくちゃ……私はぎゅっと手を握りしめ