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娘と一緒に見ているこの景色を、僕はずっと忘れたくない

子供が生まれて5年以上の時が経った。

娘は塗り絵が好きで、よく一緒に手伝わされる。「ここは水色、横はピンクね。」と言われるがまま筆を進めるうちに、結構綺麗に塗れるようになった。ゲームばかりして育った僕にとってはすごく新鮮なことで、今では2人で塗り絵をするのはとても幸せな時間になった。

娘は小児弱視で、幼いながら眼鏡をかけて治療している。ちょうど3歳の頃、眼科検診で再検査してくださいと言われた。まだ小さいから発達が遅いだけだろうと思った、というかそう思いたかった。半信半疑ながら、自宅でひらがなの大きく書かれたカードを離れてから見せると、ほとんど見えていないことがわかった。何度見せても違うカードにしても結果は変わらなかった。

ショックだった。それまで色んなところに連れて行って、色んなものを見せていたつもりだった。動物園、水族館、紅葉、おかあさんといっしょのコンサート。けれどそれは娘には見えていなかったのかもしれない。本当にショックだった。

小児弱視は眼鏡で治療すれば良くなる病気と論文で読んだ。早く行くことに越したことはないのに、その論文を読むまでは眼科に連れて行けなかった、受け入れられなかったのだと思う。幸い、娘も治療を始めて2年で眼鏡で矯正すれば1.0の視力が出るようになった。


娘の塗り絵は少し独特で、普通、リスなら茶色、豚ならピンク色とか、見たことがあるままの色で塗るところを、すごく多彩な色でカラフルに塗りわける。そんな色遣いができることに純粋に感心していたけれど、ふと、娘には本当にカラフルに見えているのかもしれないなと思った。

幼い頃、眼鏡をしていない時に見た景色は、色んな色が混ざった不思議な見え方をしていたのかもしれない。弱視に気づいてやれなかったことを当時は本当に悔やんだけれど、今では色んなところに連れて行ってあげれたことは娘にとっては良かったのかもしれないなと思えるようになった。

もしかしたら今も、僕が見せたい景色を、彼女は違った見え方で捉えているのかもしれない。そう思うと、またどこかに出かけたくなる。そして、2人で見た景色を、僕はずっと忘れたくない。


自分の経験したことを文章にしていくことで、誰かの役に立てたら嬉しいとか、ただ書くことが楽しいとか、そういう風に私はなりたい。