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#詩

詩 / 安寧

経験から私が学んだのだとすると
私は私に経験が混ざり込んだ生き物になったとも言える

アップデートされた私には
鎖がついていて
以前にした失敗の近くには
近寄れないようになっている

同じ失敗を繰り返すのは
愚かだ

しかしそこに二度と近寄らない人生は
幸せなのだろうか

可能性はゼロですかと質問されれば
言い切るのが苦手な私は
ゼロではないと思う と応える

未来のことは
そこに行くまでわからな

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l'obscurité et les mots

l'obscurité et les mots

中途半端だ
わたしは
何もかも

病めない心が恨めしい
痛まない胸がもどかしい

いっそ硝子で出来ていたなら
今よりわたしは
楽で居られたのに

少しだけ抱えている闇を
あたかも
特別なことかのように綴り
言葉に込めることは
得手

半端なんだ
なまじ強いばかりに

幾ばくかの言葉を操れるからこそ
誇張して
すかすかの闇が
膨らんだように見えるんだ

雨が降ると責めたくなる
自分を

狡いわたし

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Une belle émotion

Une belle émotion

走って
走って

息が続かないまま

我武者羅に
求めてばかりの
わたしだから

偶には歩いてみようと思う

ゆっくり
幸せを捜してみる

歪んで捻れた
わたしの頭も
少し 冷静に成れるときがある 

あのひと

お陰

だろう

でも
この気分は長く続かないだろう

だからこそ
大事にするんだ

喪くしてしまわない様に

抱きしめるみたいに
護る

自分の中の
昏いもの

たぶん
もうすぐ

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déception

déception

わたしは
わたしの淋しさを紛らわす為に

ぽっかりと抜けるように空いた穴

紛い物で埋める

何でもいい訳じゃないけど
何でもいいときもある

その刹那は
忘れていられる

だけど
又独りになった時
ふと
我に返った時

叫びたくなる位
辛くなる

繰り返すことが
愚かだとは思う
わかってるのに

そうやって
わたしは

自分に失望してしまうのだ

L'eau devient solide quand elle gèle.

L'eau devient solide quand elle gèle.

どれくらい経ったのだろう

この感覚
を知ってから

時々
酷く冷静になる
自分の思考

嫌いではない

凍える程に
冴えてゆく感覚

平気なわけではない

また強がる

何処に行っても
素直にはなれない

いろいろと思い出してばかり

なぞる記憶は
虚しさを促す


仰ぐ
天井を

誰も居ない

期待は捨てろ
欺瞞は持つな
悲観は育つ
助けは来ない

詩 / 多細胞生物

髪は勝手に伸びて
爪も勝手に伸びて
おなかは勝手に痛くなって

手足は勝手に元気で
脳細胞は
余計な思い出ばかり
勝手に送りつけてくる

わたくしの
細胞それぞれは
別の生き物なので
いうことをきいてくれないのです

多細胞生物を代表して
記しておきます
わたくしたちは
命の集合体なので

全部合議制で
やると決まればやりますが
やらないことになったら
やりませんので

細胞数十兆からなる国ですの

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déchirer l'eau

déchirer l'eau

自慢の髪を伸ばし
魔女の塔のてっぺんから
王子を引き上げた
ラプンツェル

閉じ込められたお姫さまは
逢いたくても逢えない辛さを
どんな涙に流したのだろう


ってやつは
我が儘の雫

恋煩い
の証
なんかじゃない

普通は
凡そ考えつかないような
汚い感情だらけ

傷つけたい
とか

痛みが欲しい
とか

干からびた湖

満たされるまで
厭み続けるんだ

降りもしない

を待って

Cœur honnête

Cœur honnête

着飾ったわたしばかり

見てくれるひと

多く 

わたしは
わたしが
わからなくなるばかり

本当のわたし


弱くて
小さな
狂気の塊

爪を尖らせ
牙を濡らし
白い吐息を夜空に吐き出す

こんなわたし

許してくれるひと
なんて

棘ばかりで
抱きしめたら
相手も傷付けてしまう

身を護る刃

鞘におさめる術すら
忘れていた

其れなのに
血塗れのわたし

やせ我慢のあなた

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s'échapper

s'échapper

逃げよう

なんて
思ったこともある

何度となく
この苦しい毎日から
何もかも捨ててしまい
独り
誰も知らない場所に

逃げることが出来たら
捨ててしまえたなら
いいかもな

なんて
無駄な策謀を巡らせてみたり

手放せるものなら
とうの昔に
わたしは楽になれている筈で
諦めがつくならいいものを
そうもいかない

見えもしない
その手を離せない
握り締めたまま
何も抱きしめられない

何も 掴

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tactique

tactique

駆け引き
なんてものは
厄介なもので
少しの差違で
180度見方が変わる

追いかけて欲しくて
引いても
お互いが引いてしまって

さよなら  

なんて

触れないでいて
相手を狼狽させたい

なんて

歪んだ思いを浮べてみたり

そんなふうに
脇道に逸れてゆくのに

どこまで間違えても


を失えない

其の
思い  
の正体

わからないから
今日も違える

逸れすぎて
元来た路も

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詩 / 暗示

私はことばにすると私だけど
ほんとうの私ではない

わたしそのものと
ことばでいう わたし には
かいりがある

私ということばのかわりに
あなたをつかうと
乖離が大きくなるから
そうならないように
私を使う

発された言葉は揺るがない
揺れ動く私と違って

ことばと現実に乖離があれば
揺れる私が隙間をうめる

わたしはげんきといえば
げんきということばがゆるぎないので
わたしのほうがげんきという

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【詩】ひとつのことば

【詩】ひとつのことば

私はいつもただひとつのことばが欲しい

それはあなたの口から出たものでなければならない

あなたの手で書いたものでなければならない

それはそこら中に溢れていることばで

あなたに使われるのを待っていて

私はそのことばで生きて

そのことばで死んだようになって

あなたから出たひとつのことばは

やすやすと私を動かして

過去を紡ぎ

未来を集め

今を創る

あなたの小さなことばひとつで

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恋をして蝶になった主人公

恋をして蝶になった主人公

 きっと貴方は忘れているのでしょうね。

 とうの昔から私の胸にある、この温かい想いを。
 どのような言葉で表したら良いのか、自分では分かりかねます。
 ですが確かな事は、酷なこと、不愉快に思ったこと、怯えたこと。
 そのような時間は存在しておりません。

 間違い無く貴方は私にとって、大切な気持ちを『香り』と共に心へ運んで下さいました。

 どれだけの刻が経とうと、忘れる事など無いでしょう。
 

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詩 / 連-絡

闇の中で
寝息を聞いた

あなたにあわせて息をする
夜が一次元に落ちていく

息が聴けて幸せ
息を吐けて幸せ

部屋は離陸する
柔らかな空気を吹いて

朝までの旅
焼き付けた思い出が車窓を滑る

記憶は螺旋になって
糸車がぜんぶ巻き取っていく