詩 / 安寧

経験から私が学んだのだとすると
私は私に経験が混ざり込んだ生き物になったとも言える

アップデートされた私には
鎖がついていて
以前にした失敗の近くには
近寄れないようになっている

同じ失敗を繰り返すのは
愚かだ

しかしそこに二度と近寄らない人生は
幸せなのだろうか

可能性はゼロですかと質問されれば
言い切るのが苦手な私は
ゼロではないと思う と応える

未来のことは
そこに行くまでわからない

鎖をどうすればいいのか
わからないまま 時は進んでいく

私はまたひとつ経験をして
鎖だらけの誰かが
私の場所にいる

この人を解き放ってあげたらいいのか
大樹のように根を張って貰えばいいのか

観測する元の私にも鎖

ある晴れた青い空の日に
ああ鎖なんてなかったのだ
と一斉に踊りだす

増殖する幻想は
本当の過酷さとははるかに離れたところで
ごっこ遊びに誘っている

暑い日に見た蜃気楼のメモ

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