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雑誌「1番近いイタリア」

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雑誌「1番近いイタリア」に関する記事。 マンマのイタリア家庭料理研究家Aoi Aurora、こと中小路葵が編集長を務める季刊誌です。 コンセプトは「日本の家庭で楽しむイタリア料…
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#イタリア

「1番近いイタリア2024春号(Vol.17)」刊行!

「1番近いイタリア2024春号(Vol.17)」刊行!

「1番近いイタリア」2024年春号を刊行!

あっという間に第17号、温かい読者の皆様に支えられていることに感謝です。

イタリアで見つけた「土地と生きる食の豊かさ」を、皆様に生の魅力たっぷりでお伝えできれば幸いです。

さて、今号はいかに!

2024年春号巻頭エッセイは「カーブを曲がると」、トスカーナ州をバイクで旅した時の短編です。

マンマのレシピ集、今号のテーマ食材は「リコッタチーズ」。

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編集後記「1番近いイタリアvo.17 2024春」

編集後記「1番近いイタリアvo.17 2024春」

雲に隠れまいと橙色の光を放つ太陽は、オリーブが所々見える平原の向こうの海に吸い込まれるように、あっという間に沈んでいく。5日前と同じ道を走る。今日は夕日を左側に見ながら。そして、今日は歳を1つ重ねた私が。島から本土に戻り、ボローニャに帰る道は、5日前と確かに同じ道で、でも不思議なことに、たった5日前が遠い過去に思えるくらいには景色が違って見えた。

30歳のお誕生日には、行き先シークレットの旅行が

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カーブを曲がると

カーブを曲がると

体を傾け、カーブを曲がっていく。顔を切っていく空気の味が知りたくて、鼻で大きく息を吸ってみると、新しいヘルメットの匂いと新緑の木々の香りが混ざり、とてつもない初々しさに包まれる。通奏低音のエンジン音に、風の音、時たますれ違う車の音が反響する。寒さと緊張でキュッと体をこわばらせ、そんな私を置いてかないように優しい足取りで進み続ける。再びカーブに差し掛かり、体を傾けて曲がっていく。

4月、バイクでは

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編集後記(「1番近いイタリア」Vol. 16 2024冬号)

編集後記(「1番近いイタリア」Vol. 16 2024冬号)

フェイスブックに「2年前の思い出」として、ボローニャに着いた日の写真が上がってきた。駅のホーム、赤い高速列車、食べたパニーニ。あれからちょうど2年。大学院を卒業して、ボローニャに残ることを決めて、ボローニャに家を買ったり、ボローニャ大学の博士課程に進学したり。広く17州の家庭を訪ねたり、深く農家料理を研究したり。失恋したり、新しい恋が愛に変わったり。自分にとっては激動の2年で、赤ちゃんが生きていく

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「1番近いイタリア2024冬号(Vol.16)」刊行!

「1番近いイタリア2024冬号(Vol.16)」刊行!

「1番近いイタリア」2024年冬号を刊行!

あっという間に第16号、4年目に突入しました。
温かい読者の皆様に支えられていることに感謝です。

イタリアで見つけた「土地と生きる食の豊かさ」を、皆様に生の魅力たっぷりでお伝えできれば幸いです。

さて、今号はいかに!

2024年冬号巻頭エッセイは「カターニャの煙」、シチリア島かターニャでの短編です。

マンマのレシピ集、今号のテーマ食材は「海の魚

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「1番近いイタリア2023秋号(Vol.15)」刊行!🇮🇹🎉

「1番近いイタリア2023秋号(Vol.15)」刊行!🇮🇹🎉

「1番近いイタリア」2023年秋号を刊行!

あっという間に第15号。
温かい読者の皆様に支えられていることに感謝です。

イタリアで見つけた「土地と生きる食の豊かさ」を、皆様に生の魅力たっぷりでお伝えできれば幸いです。

さて、今号はいかに!

2023年秋号巻頭エッセイは「ボローニャの秋晴れ」、甘くて苦い、ボローニャでの短編です。

マンマのレシピ集、今号のテーマ食材はカボチャ。
豪華に10品

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ボローニャの秋晴れ

ボローニャの秋晴れ

※この記事は「1番近いイタリア2023年秋Autunno」の巻頭エッセイからの抜粋です。

数日前にボローニャに帰ってきた。つい先日までまだ真夏の暑さにうだる日本にいたのが嘘のようで、空高く乾いた涼しい風が木の葉の間を抜け、さわさわと知らぬ顔で音を立てるのが一層淋しい。眩しすぎる朝日に目を覚ます日はもうそこにはなく、目を開けば遠くから陽が差し込むだけだった。季節までもが私を置き去りにしてしまったよ

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マリーナピエトラサンタの豚

マリーナピエトラサンタの豚

※本投稿は雑誌「1番近いイタリア」2020年秋号の巻頭エッセイの抜粋です。

「1番近いイタリア」についてはこちら。

カラフルな花の市場が催され、暖かな春の日のお昼時、海沿いの屋台は混みあっていた。屋台の前の小さなスペースには、所狭しと小さなテーブルとイスが広げられ、席取り合戦に走る人、注文した食事をそろそろと持って歩く人、食べ終わって外に出ていく人、合間を縫うように人が行き来している。

イタ

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「1番近いイタリア2022冬号(Vol.9)」刊行!🇮🇹🎉

「1番近いイタリア2022冬号(Vol.9)」刊行!🇮🇹🎉

「1番近いイタリア」2022年冬号を刊行!

なんと、早くも第9号、3年目に入りました。
全て温かい読者の皆様に支えられてのこと、感謝の気持ちで一杯です。

イタリアで見つけた「土地と生きる食の豊かさ」を皆様にお伝えしよう、
その創刊当初の想いは、今も何一つ変わっておりません。

土地の物語、生産者インタビューとテーマ食材のレシピと共に、
丁寧に今日の料理を作る豊かさを感じて頂ければ幸いです。

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編集後記「バッターボックスに立ち続けて」

編集後記「バッターボックスに立ち続けて」

※この記事は雑誌「1番近いイタリア2021秋号」の編集後記からの抜粋です

編集後記「バッターボックスに立ち続けて」シートベルト着用サインが点灯し、まもなく着陸態勢に入るとアナウンスが流れた。近づいてくる成田の夜景を見ながら、着陸の瞬間が好きだと思った。旅の終わりを予告され残念な気持ちがおこるともに、何とも言い難い安堵感に包まれる。シートに頭を付けて目を閉じると、イタリアでの日々がありありと浮かぶ

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ランゲの丘

ランゲの丘

2年前の今日、私はピエモンテ州のアルバにいた。世界最高級のキノコ、白トリュフの産地として有名な街だ。年に一度の「白トリュフ祭り」の時期には、小さな街全体がトリュフの香りに包まれ、世界中から人々が集まる。狭い石畳の中心通りは歩くのも一苦労なほど混みあい、両脇では張り切った売り子がイタリア語なまりの英語で声を上げる。私は、そんな白トリュフ祭りの横で行われる「バルバレスコ・マラソン」に参加するために、こ

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