マガジンのカバー画像

雑誌「1番近いイタリア」

31
雑誌「1番近いイタリア」に関する記事。 マンマのイタリア家庭料理研究家Aoi Aurora、こと中小路葵が編集長を務める季刊誌です。 コンセプトは「日本の家庭で楽しむイタリア料…
運営しているクリエイター

記事一覧

「1番近いイタリア2024春号(Vol.17)」刊行!

「1番近いイタリア2024春号(Vol.17)」刊行!

「1番近いイタリア」2024年春号を刊行!

あっという間に第17号、温かい読者の皆様に支えられていることに感謝です。

イタリアで見つけた「土地と生きる食の豊かさ」を、皆様に生の魅力たっぷりでお伝えできれば幸いです。

さて、今号はいかに!

2024年春号巻頭エッセイは「カーブを曲がると」、トスカーナ州をバイクで旅した時の短編です。

マンマのレシピ集、今号のテーマ食材は「リコッタチーズ」。

もっとみる
編集後記「1番近いイタリアvo.17 2024春」

編集後記「1番近いイタリアvo.17 2024春」

雲に隠れまいと橙色の光を放つ太陽は、オリーブが所々見える平原の向こうの海に吸い込まれるように、あっという間に沈んでいく。5日前と同じ道を走る。今日は夕日を左側に見ながら。そして、今日は歳を1つ重ねた私が。島から本土に戻り、ボローニャに帰る道は、5日前と確かに同じ道で、でも不思議なことに、たった5日前が遠い過去に思えるくらいには景色が違って見えた。

30歳のお誕生日には、行き先シークレットの旅行が

もっとみる
カーブを曲がると

カーブを曲がると

体を傾け、カーブを曲がっていく。顔を切っていく空気の味が知りたくて、鼻で大きく息を吸ってみると、新しいヘルメットの匂いと新緑の木々の香りが混ざり、とてつもない初々しさに包まれる。通奏低音のエンジン音に、風の音、時たますれ違う車の音が反響する。寒さと緊張でキュッと体をこわばらせ、そんな私を置いてかないように優しい足取りで進み続ける。再びカーブに差し掛かり、体を傾けて曲がっていく。

4月、バイクでは

もっとみる
編集後記(「1番近いイタリア」Vol. 16 2024冬号)

編集後記(「1番近いイタリア」Vol. 16 2024冬号)

フェイスブックに「2年前の思い出」として、ボローニャに着いた日の写真が上がってきた。駅のホーム、赤い高速列車、食べたパニーニ。あれからちょうど2年。大学院を卒業して、ボローニャに残ることを決めて、ボローニャに家を買ったり、ボローニャ大学の博士課程に進学したり。広く17州の家庭を訪ねたり、深く農家料理を研究したり。失恋したり、新しい恋が愛に変わったり。自分にとっては激動の2年で、赤ちゃんが生きていく

もっとみる
「1番近いイタリア2024冬号(Vol.16)」刊行!

「1番近いイタリア2024冬号(Vol.16)」刊行!

「1番近いイタリア」2024年冬号を刊行!

あっという間に第16号、4年目に突入しました。
温かい読者の皆様に支えられていることに感謝です。

イタリアで見つけた「土地と生きる食の豊かさ」を、皆様に生の魅力たっぷりでお伝えできれば幸いです。

さて、今号はいかに!

2024年冬号巻頭エッセイは「カターニャの煙」、シチリア島かターニャでの短編です。

マンマのレシピ集、今号のテーマ食材は「海の魚

もっとみる
カターニャの煙

カターニャの煙

目の前の通りに出た大きな炭火焼きコンロからもうもうと上がる煙に、まだ高い太陽からの光が乱反射する。煙の向こうには大きな体をした肉屋の店主が忙しそうに手を動かす姿が霞んで見える。通りに並べられたプラスチックのテーブルには高校生くらいの若者が輪になり、たっぷり肉が詰まった大きなパニーニを頬張る。煙の中をテーブルを縫うようにウェイターさんたちが足早に料理を運ぶ。私たちのテーブルの横をまた一人、お皿を抱え

もっとみる
「1番近いイタリア2023秋号(Vol.15)」刊行!🇮🇹🎉

「1番近いイタリア2023秋号(Vol.15)」刊行!🇮🇹🎉

「1番近いイタリア」2023年秋号を刊行!

あっという間に第15号。
温かい読者の皆様に支えられていることに感謝です。

イタリアで見つけた「土地と生きる食の豊かさ」を、皆様に生の魅力たっぷりでお伝えできれば幸いです。

さて、今号はいかに!

2023年秋号巻頭エッセイは「ボローニャの秋晴れ」、甘くて苦い、ボローニャでの短編です。

マンマのレシピ集、今号のテーマ食材はカボチャ。
豪華に10品

もっとみる
ボローニャの秋晴れ

ボローニャの秋晴れ

※この記事は「1番近いイタリア2023年秋Autunno」の巻頭エッセイからの抜粋です。

数日前にボローニャに帰ってきた。つい先日までまだ真夏の暑さにうだる日本にいたのが嘘のようで、空高く乾いた涼しい風が木の葉の間を抜け、さわさわと知らぬ顔で音を立てるのが一層淋しい。眩しすぎる朝日に目を覚ます日はもうそこにはなく、目を開けば遠くから陽が差し込むだけだった。季節までもが私を置き去りにしてしまったよ

もっとみる
「1番近いイタリア2023冬号(Vol.13)」刊行!🇮🇹🎉

「1番近いイタリア2023冬号(Vol.13)」刊行!🇮🇹🎉

「1番近いイタリア」2023年冬号を刊行!

あっという間に4年目に突入!温かい読者の皆様に支えられていることに感謝です。

イタリアで見つけた「土地と生きる食の豊かさ」を、皆様に生の魅力たっぷりでお伝えできれば幸いです。

さて、今号はいかに!

2023年冬号巻頭エッセイは「村の言葉」、ヴェネト州を訪れた時のシーンを描いた一節です。

土地に根付いたレシピに書かれていない伝統料理。農家の家庭を

もっとみる
村の言葉

村の言葉

この記事は雑誌「1番近いイタリア」の巻頭エッセイからの抜粋です。

「1番近いイタリア」についてはこちら。

村の言葉「アーメン」永遠に続くかに思えた牧師の祈祷が、一同の唱和によってピタッとしまった。高い天井に声が吸い込まれ、人々も音を仕舞い込むようにして帰り支度をし、一人また一人と出口の扉から出ていく。私も周りにならって席を立つと、身長差のある老夫婦が私と訪ねていた友人セレナの元に近づいてきて「

もっとみる
「1番近いイタリア2022秋号(Vol.12)」刊行!🇮🇹🎉

「1番近いイタリア2022秋号(Vol.12)」刊行!🇮🇹🎉

「1番近いイタリア」2022年秋号を刊行!

あっという間に3周年!温かい読者の皆様に支えられていることに感謝です。

イタリアで見つけた「土地と生きる食の豊かさ」を、皆様に生の魅力たっぷりでお伝えできれば幸いです。

さて、今号はいかに!

2022年秋号 福岡県糸島×ピエモンテ州の食卓巻頭エッセイは「山の民」、ピエモンテ州山の家族を描いた一節です。

生産者取材では、福岡県糸島のフルタクこと古

もっとみる
感謝とリスペクト。人を繋ぐ農業を。(糸島のフィールドマスター:古川拓実さん)

感謝とリスペクト。人を繋ぐ農業を。(糸島のフィールドマスター:古川拓実さん)

※この記事は雑誌「1番近いイタリア2022秋号」からの抜粋です。

感謝とリスペクト。人を繋ぐ農業を。今回生産者インタビューでお話をお聞きしたのは、福岡県糸島市で「糸島のフィールドマスター」として多彩な活動を行っている古川拓実さん。人懐っこい笑顔にみんなが安心感を覚える、若き農家の古川さんの想いに迫ります。

なぜ農業の道へ

自分は、元々実家が農業をやっていたので、畑での農作業が身近にありました

もっとみる
「1番近いイタリア2022夏号(Vol.11)」刊行!🇮🇹🎉

「1番近いイタリア2022夏号(Vol.11)」刊行!🇮🇹🎉

「1番近いイタリア」2022年夏号を刊行!

温かい読者の皆様に支えられて今号も刊行することができました。

イタリアで見つけた「土地と生きる食の豊かさ」を、皆様に生の魅力たっぷりでお伝えできれば幸いです。

さて、今号はいかに!

2022年夏号 宮城県気仙沼の魚×プーリア州サレントの食卓

巻頭エッセイは「夏の音」、プーリア州で過ごした夏を描いた一節です。

生産者取材では、宮城県気仙沼の漁業

もっとみる
夏の音

夏の音

※この記事は「1番近いイタリア2022年夏号」の巻頭エッセイの抜粋です

「1番近いイタリア」についてはこちら。

7月24日、日曜日、快晴、気温36度。浜に寄せる波の音、お腹の底を揺らすような海の家の音楽、風に乗って届く人々の笑い声。夏だ。

燦々と輝く太陽の光を受けて、水面をこれみよがしに輝かせる海面に、子供も大人も思い思いに波を立てる。大きく息を吸うと、湿った潮の風が音を立てて肺に入る。隣に

もっとみる