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春夏秋冬のはなし

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‪(*´◒`*).。o○春夏秋冬をテーマにした小説
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#小説

秋ナスは嫁に食わすな

秋ナスは嫁に食わすな

 秋ナスは嫁に食わすな、なんて言葉があったか。あれは確か、姑からの嫁いびりの常套句みたいなものだったな。

 夜勤明けの疲れた脳でぼうとそんなことを思う。もっとも僕には妻はいない。最近付き合い始めた彼女はいるが、秋ナスがそんなに美味しいのなら僕は彼女にたらふく食べてほしいなと思う。僕より年上の彼女は、僕よりたくさんの美味しいものをとっくに知っているかもしれないけれど。

「自分の浮かれ具合がうかが

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浮かれたくなるから沈んでいくの

浮かれたくなるから沈んでいくの

 薄手のコートを出して、黒のダッフルコートはクリーニングに出した。四月になって、吹く風はまだ冷たいけれど町は確実に春だった。
 一昨日見た満開の桜は美しかったし、柔らかい日差しを浴びながら飲むカフェラテも美味しい。それなのに、僕ときたら今日死のうが興味もないような顔でコーヒーショップで一人座っているのだ。

 広げた本を読むでもなくぼうとしていた僕の耳に鈴の音が聞こえて、待ち人の来店を知らせた。

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一月の二人

一月の二人

「うーさむいー」

「暖房つけるから、効くまで布団にでも潜ってな」

 帰るなり文句を言う未来に、僕が言う。
 コートを二人分。かける場所がないから、カーテンレールにハンガーをかける。
 ストーブをつけると、ブブッと音がして中で小さな火がついた。
 上着がないことでの身体の軽さ、ゆっくりと部屋が暖まっていく時間、外の喧噪が遠のく空間。テレビをつけると、聞くでもなく音が心地よく静寂を埋めた。

「布

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たまに振り返って、歩いて

たまに振り返って、歩いて

 外に出ると雨はもう止んでいた。九月に入って夜はよく冷え込むようになった。カーディガンを羽織ってローソンに向かうと、肌寒い風が身体をさあとすり抜けていった。

 歩く道すがら、スマホを取り出して加奈子にメッセージを送る。

「風が涼しい。散歩が気持ちいいよ」

 
 加奈子と付き合ってから三ヶ月が経つ。散歩が好きな加奈子はよく、今時期ぐらいが好きだと話す。しばらく散歩を続けようとローソンを素通りし

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まったく嫌な六月だ

まったく嫌な六月だ

 梅雨が明けたとニュースが言った。雲の流れが速くなり、空の顔色はすこぶる良さそうで、反比例するように紫陽花はその鮮やかさを失いつつある。

「もう、一年の半分終わっちゃうよ」

 絵の具で塗りたくったような青空を見上げながら、瑠衣が言った。

「寂しいな」

 言葉とは裏腹に、少しだけ高揚したような声音で瑠衣は続ける。
 僕はあえて少しだけ呆れた顔を作って、ため息混じりに応える。

「寂しいかねえ

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綺麗な記憶は塗り替えて

綺麗な記憶は塗り替えて

「見て、もう黒くなってきた」

 七分袖をまくりながら君が言うから、僕は笑った。

「まだ六月なのに、日焼けするの早いね」

 太陽が手加減を忘れる夏には少し早い、六月の晴れた日。もう数年前のことなのに、俺は鮮明にあの日を思い出す。今年もその日が来た。

「先輩って、彼女つくらないんですかー?」

 後輩が叫ぶように尋ねてきた。社用車はエアコンの調子が悪く、窓を全開にして走らせている。

「つくれ

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五月の景色に君を見る

五月の景色に君を見る


 降り注ぐのは太陽の光で、真夏日のような暑さの中を僕と高部は歩いていた。

「どのバスだっけ」

 僕が問うと、高部は無言で自分のスマートフォンを差し出した。

「じゃあ、あっちの乗り場だね」

 僕が右手を指さす。示した方向に、高部が歩く。二十二歳。同い年の女友達と比べて、高部はやたらと無口だった。それでも、僕と高部が付き合うことになったのは、なんというか気まぐれだったのだろう。高部の。

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十二月に見つけたビー玉

十二月に見つけたビー玉

「今年もお世話になりました、コーちゃん」

 だらりと頭を下げて葵が言う。

「こちらこそお世話になりました、葵」

 僕もそれに倣う。ふわふわしたものが増えた部屋で、二人して立って頭を下げあう光景というものは、端から見たら滑稽な気がしてすぐに頭を上げた。
 葵は鼻声だ。僕の健康管理にうるさいわりに年に五回は風邪を引く葵は、今年も例に漏れず鼻をすすりながらの年末を迎えている。

「来年はどんな年に

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金木犀の記憶

金木犀の記憶

「日曜日か……」

 カレンダーの赤字を見てぼやいた。九月の第四週。あと数日でこのページもお役ごめんだ。
 あくび混じりにだらだらと着替える。そろそろ冬服を出さないと寒いかもしれない。薄手の上着に袖を通しながら、クローゼットに目をやる。

「めんどくさいな」

 今度はため息まで混じった。
 けだるい身体を引きずって、一人暮らしの家を出る。「いってきます」を言う相手もいない生活は、普段から静かな僕

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掌編小説「セツナハナビ」

掌編小説「セツナハナビ」

 花火なんて何年ぶりだろうか。
 僕の横に座った香織がくすっと笑った。小さい頃には長かった黒髪も今では短く揃えてふぁさっと軽やかに揺れる。横顔は花火の緑に照らされて。
 小さい頃よく遊びにきた砂浜。田舎だからなのか、夜になれば人気もほとんどいなくなるような、だだっぴろい世界。夜の砂浜も、怖くなくなったんだな香織。

「花火ってさ、やってると馬鹿みたいに楽しい気分になったり、かと思えばしんみりしたり

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夏の夢みる生活

夏の夢みる生活

 ベランダの窓を開けると、ムワッと重たい空気と一緒にくぐもった音が入ってきた。

「そういえば花火大会だね、今日」

 振り返って、ベッドで本を読む彼に言う。

「そうなんだ」

 ぺらっとページをめくる音。

「うん、なんか音、聞こえる」

「ほんとだ」

 会話の度に視線はこちらに向いて、そして数瞬の後で本に戻る。
 私はフローリングに座り込む。ヒンヤリしていて気持

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七月の海はまだ冷たいけど

七月の海はまだ冷たいけど

 夏の海といっても、七月の入りではまだ冷たい。晴天の昼間だというのに砂浜にいるのは僕と彼女の二人しかいなかった。
 僕は後ろから彼女の背中を見ていた。彼女は裸足で濡れた砂の上に立って、時折さらいにくる波の冷たさにきゃっとかひゃっとか声をあげていた。
「気持ちいいかい」
 声をかけると彼女は首だけで振り返って、にひひと笑った。
「冷たくて笑っちゃう」
 どういう感情なのかと、僕が考える間に彼女はパシ

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四月の淡い青

四月の淡い青

朝、目が覚めると四月だった。カレンダーをめくって三月を捨てる。

 カーテンを開けると外から小さくパパパッと音がした。窓に水滴が垂れて光を反射させている。

「雨……」

 二〇一七年の四月はしっとりと始まったようだ。

「雨だねー」

 突然、後ろから話しかけられて驚いた。むっとして振り向く。肩まで伸びた髪をぼさぼさっと手で梳いて、葵が立っていた。

「おはようコーちゃん」

 まだ眠気の残って

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小説『冬の記憶』

 一月のコーヒーショップは暖かったけれど、いつまでもいるわけにもいかない。
 多少寒くても、家に帰ればぐうたらな君を見れるし、ぐうたらな僕でいられる。そう思うと、すぐにでも帰ろうかと思う毎日だった。
 歩いて数分もしない家に、帰ろうかと提案したら帰ろうかと返事が来た。
 外気は冷えて、澄んでいた。不純なもののない空気。
「雪のにおいがする」
 コーヒーショップを出たところでそう言った僕に「ほんとだ

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