マガジンのカバー画像

高校野球コラム(2021)

18
2021年度の高校野球コラムです。第103回全国高校野球選手権、そして滋賀大会の中で高校野球ハイライトなど番組で伝えきれなかったエピソードを紹介します。この年からnoteでのコラ… もっと読む
運営しているクリエイター

#主将

犠牲の先のストーリー~高校野球ハイライト延長戦13日目・近江

犠牲の先のストーリー~高校野球ハイライト延長戦13日目・近江

3回戦を終えノーヒット。打撃で苦しむ近江の主将・春山陽生は、帽子の裏に大きく『犠牲』と書いた。「結果を出したい気持ちを捨ててチームに尽くす」。準々決勝では安打こそ出なかったが、言葉通りチャンスを広げる死球でガッツポーズを見せた。

「自分たちの代で負けて…1年のほとんどが大変な時期だった」。去年の秋は決勝で敗れ、県内連勝は34で止まった。今年の春は3回戦で敗退し、シード権も失った。全ての優勝旗が学

もっとみる
散る花は咲くからこそに美しい~高校野球ハイライト延長戦12日目・水口東

散る花は咲くからこそに美しい~高校野球ハイライト延長戦12日目・水口東

夏の大会前、水口東の3年生はS、A、Cの3班に分かれた。主力から控えのランク付け…ではない。Cはコア。打線の中心として結果を求められる。Aはアシスト。つなぎ役として小技も練習する。Sはスペシャリティ。代打や守備固めなど、ここぞの場面で出番が来る。一人一人の役割を明確にし、効率良い練習につなげた。

「表現が適切かわからんけど…散り方って大事やと思う。ひたむきに頑張った選手に少しでも活躍の場があれば

もっとみる
元虎投手、甲子園を目指す~高校野球ハイライト延長戦7日目・光泉カトリック

元虎投手、甲子園を目指す~高校野球ハイライト延長戦7日目・光泉カトリック

光泉カトリックの伊藤文隆監督は阪神タイガースの投手だった。通算54勝を上げ、1985年の日本一にも貢献。指導者としては2009年にクラブチームを全国優勝に導き、県内では元巨人の西村高司さん(長浜)以来となる元NPB選手の監督就任を果たした。

出身は愛知の大同工業。最後の夏はエースとして孤軍奮闘するも、準決勝で現在の中京大中京に敗れた。「甲子園のマウンドはプロでこそ立ったが、どうしても高校で…」。

もっとみる
ミラクルの重圧に向き合う~高校野球ハイライト延長戦5日目・甲西

ミラクルの重圧に向き合う~高校野球ハイライト延長戦5日目・甲西

甲西高校のセカンド、内林君―。こんなアナウンスが流れれば、どうしても期待は大きくなる。「自分から弱音を吐いたことは一度もないが、重圧は間違いなくあったと思う」。東兼也監督は内林叶多主将の心情をおもんぱかった。

父の和彦さんは「ミラクル甲西」の二塁手。滋賀大会では11安打を放ち、ラッキーボーイとしても知られた。兄の瑞貴さんも近江の投手として甲子園に出場。進学先を迷っていた内林だが、父から「一緒の環

もっとみる
崩れた自信、重ねた不安~高校野球ハイライト延長戦4日目・瀬田工業

崩れた自信、重ねた不安~高校野球ハイライト延長戦4日目・瀬田工業

「プレッシャー」「不安が大きい」「まだまだ弱い」…古賀陽大主将の取材メモからは、甲子園を狙うチームと思えない言葉ばかり出てくる。小辻鷹仁投手を擁した去年の瀬田工業は、小椋和也監督が「大会が本当に楽しみだった」と振り返る充実布陣。だが独自大会の変則日程が影響し、近江に敗れた時には8月の中旬を迎えていた。

ベンチ入り2年生は1人だけの状況で、チーム作りも出遅れる。秋の県大会は初戦敗退。積み上げた自信

もっとみる
自分に厳しく、相手に厳しく~高校野球ハイライト延長戦2日目・彦根総合

自分に厳しく、相手に厳しく~高校野球ハイライト延長戦2日目・彦根総合

スタメンは全員が1年生。新生・彦根総合が新たな船出を迎えた。率いるのは北大津で6度の甲子園経験を誇る宮崎裕也監督。「時代が新しくなりすぎている」という理由から旧制中学風のユニフォームに身を包み、栗東との初戦に臨む。

結果的に夏の壁は高かった。大会注目の左腕、栗東の小林純大投手を揺さぶっても内野安打や四死球は取れず、逆に守備の乱れから失点を重ねる。「やりたかった野球をやられた。気持ちを見せてほしか

もっとみる
「いつも通り」を探して~高校野球ハイライト延長戦1日目・八幡商業

「いつも通り」を探して~高校野球ハイライト延長戦1日目・八幡商業

2021年、滋賀の夏開幕。
きのうまで降り続いた雨の影響で、開会式の規模は縮小された。会場はグラウンドではなくバックネット裏。通路での入場行進は各校2人に制限されている。いつも通りの式典が行われているはずなのに、いつもとは違う光景が広がっていた。

感染対策で観客数に上限が設けられ、声を出しての応援もできない今大会。ただ去年の3年生は、甲子園を目指すことさえ許されなかった。無念や失意をプレーにぶつ

もっとみる