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雪柳 あうこ
2024年10月5日 17:34
夕焼けはこの世のすべての赤を吸うんだって(飢えているのだと 誰かのささやき)だからあんなに赤いんだって傾く陽に照らされて あの子が笑う赤い彼岸花の川べりを あの子と手をつないで帰れば小さな灯のように揺れる花の 白夕焼けにもともと赤いはずの花が身の色を手渡したのなら秋色とは想いと覚悟で生まれる円い白さを指すのだと知る夕方赤い彼岸花の川べりであの子とお別れ ばいばい
2024年1月21日 20:58
雪化粧をした枝に積もる冷たい白粉を 集めたら蕾に 籠めておきましょうあたたかい朝白い光のような雪が咲くでしょうから・・・・・・春先に咲くユキヤナギの花が、もう咲きかけていたのに触発されました。今年もぼちぼち、不定期更新で始動いたします。よろしくお願いします。小牧幸助さんの #シロクマ文芸部 からお題をお借りしました。いつもありがとうございます。
2023年11月26日 11:27
詩と暮らすことにしたのは、数年前の春からです。その春、わたしは陽気に当てられぐったりとしていました。そんな時、窓からふと、ひとひらの詩が飛び込んできたのでした。ひらひら、ひら、り。窓の内側に吹き込んできた詩を、手のひらに収めました。薄桃色の詩は、見た目の美しさとは裏腹に、少し乾いていました。わたしは硝子の容器に水を張り、詩を浮かべてみたのでした。すると、詩は楽しそうにくるくると硝子の中で回りま
2023年9月25日 14:13
首元まで詰まっていた 夏がつるん と抜けて行ってしまったのでわたしのからだは空っぽになってやたら 風を通すようになった行きつ戻りつしていても行ってしまったら 戻ってこない夏は 脱いでしまったのだわたしという 皮をうつろう季節はいつもすぐ 肌の下にある*******************今年の残暑は厳しかったなぁと思いながら書きました。ようやくの秋ですね。素敵
2023年3月19日 08:48
野原に電灯をつけるそこだけあかるい光になる遠くからもよくわかる春の合図に心の中で手を振る電車の中遥かな土手の菜の花・・・・・・いよいよあたたかくなってきました。あちこち花ざかりですね。素敵なお写真をお借りしました。ありがとうございます。
2023年2月6日 06:30
長患いに瘦せ細った祖父は、死ぬ前風呂に入れれば、その湯が服を着せれば、その衣がおもたい、――おもたい、と呻くように呟いていた五体満足に生きていたら気にすることもないものたちの、重みを亡くなった後故人の服を捨てようと集めてまとめて袋に入れれば一枚二枚では感じなかった衣の重みがずっしりと袋を持ち上げる指に引きちぎれんばかりに、食い込むいつだって身軽でいたいけれど人生は
2022年12月4日 16:05
大きければ良いいうものではないけれどクリスマスツリーはやっぱり大きいものが、いい大きければ大きいほど心を奪われるからその木の下で鮮やかに輝く世界に満ちるたくさんの不思議が本当のものなのだと思わせてくれるから子どもたちと共に箱の中で眠る幹を取り出してモール、スター、オーナメント、リボンに鈴、虹色のライト飾り付けよう抱えきれない期待と共に大きければ良いというもの
2022年11月14日 13:20
秋は心中を決意した 後悔はないのただ私はもう、手遅れそんな言葉を残して紅葉は真っ赤に燃え落ちた 遺言が伝わると夜でも色がわかるほど黄色く盛る炎となって公孫樹は無言で後を追った 見事なまでに 秋は全焼 間に合わなかったわたしもなりたかった手遅れなくらいの激しさに闇を貫けるほどの明るさに すっかり命をなくした梢では十月を留守にしていた神様が知らぬ間の皆の心変わ
2022年10月3日 07:00
サンダルの隙間から太陽を跳ね返していた金銀のジェルネイルは急な冷え込みに慄いた 秋雨に縮む靴の中爪先に残っていた夏はばらばらに壊れ、剥がれて落ちた 現れたのは、随分息を塞がれて少し白っぽくなって筋張った久しぶりの生爪 雨を洗い流した風呂の中で眺める足先の生白さ柔らかく頼りないわたしの魂はこの身の隅々から不意に現れる いつもより丁寧に体を拭いて生まれたてのような爪
2022年8月15日 09:04
花の名前はどのように決まりどう受け継がれてきたのだろう曽祖母も祖母もなぜあんなにたくさん花の名前を知っていたのだろうあれはなにおしろいばなのうぜんかずらさるすべりきれいかねぇ手を引かれ歩いた細い道夕方の太陽の色をした実をあるいは道端にこっそりと色づく赤紫の丸い点々を指さしては首を傾げたあれはなにからすうりへびいちごたべれると?たべれんとよあれはわたし
2022年8月8日 08:15
しずかな日曜日の午後夕方に差し掛かるころインターフォンが鳴る届けられたのは化粧箱に入ったひとつかみの 心とどけもの、受け取りました。早速、風にさらして水に活けて、日の当たる窓辺に、飾りました。獣を飼うのも植物を育てるのも全く得意ではないのですが、せっかくとどけて下さったから、このまましばしお預かりします。―――――――季節の変わり目どうぞご自愛を受領の報せは書いたものの宛先
2022年7月9日 10:09
夜中に手紙を書くときは、いつだって最後に追伸、と書きつけてしまう言い残したことがあるのです忘れていたことがあるのです書きたくても書けなかった真実を最後に、少しばかり追伸、あの仕事は片づけておきましたあの件はなかなか終わりませんあの子は相変わらず元気ですよあの日のことは忘れてください追伸、あいしていましたあいのようなものでしたあいしていますあいのようなものだと
2022年6月23日 12:18
そう、あの子は戦いに赴き連絡が途絶えて久しいの過去と未来は繋がらない羅針盤は今を指さないそびえ立つ現実連日積み重なる哀しみから顔を上げてラジオに耳を澄ますソーダ水にレモンの月を添えて飾る窓辺に 訪れる夜明け来年、戦争は終わるでしょうか………………「それから」をテーマに作ってみた小さな詩です。各行が「そ」「れ」「か」「ら」で始まっています。素敵なイラストをお借り
2022年5月8日 14:30
あれはヤツデ? ──いいや、あれは無花果。しばらくすると、美味しい実がなるよ。その日からわたしは、来る日も来る日も無花果の葉の下で、もたらされる実りを待った。青空はくらくらする。陽炎のような誰かと遊んでさみしいよりも、空を切り取る緑の手と戯れる方が愉しい。葉をすり抜ける陽射しが肌を焼いて、体育座りの腿の内にまで汗を浮かべさせる。登校日は忘れたことにした。青空はまだくらくらする。よく何年も、そ