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【詩】とどけもの【掌編】

しずかな日曜日の午後
夕方に差し掛かるころ
インターフォンが鳴る

届けられたのは
化粧箱に入った
ひとつかみの 心

とどけもの、受け取りました。早速、風にさらして水に活けて、日の当たる窓辺に、飾りました。獣を飼うのも植物を育てるのも全く得意ではないのですが、せっかくとどけて下さったから、このまましばしお預かりします。
―――――――季節の変わり目どうぞご自愛を

受領の報せは書いたものの
宛先はやはり書けないまま
生えつつある 根

今は、美しくてきれいでも
きちんと世話をしなければ
あっという間 に

いつだったか、せっかくあなたから送ってもらった心を大事に、日の当たる窓辺に飾りました。けれど病ませてしまったのです。短い手が生え、やがて足が生え、獣の如き雄叫びを上げるのです。知らせずに黙って処分しました。どうかわたしを忘れてください。もう、とどけものはいりません。
―――――――不在通知もいれないでください

しずかな日曜日の午後
夕方に差し掛かるころ
窓辺を見つめ耳を塞ぐ

許可なくやってくるものは
いつも、恐れを孕んでいる
ひとつかみの、わたし、
―――――――――――――とど け、も、の


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
詩としても、掌編としても成立するような創作を目指して書きました。

この詩は、詩人の松下育男さんのfacebook「最近読んだ詩」でご紹介を頂きました。

「最近読んだ好きな詩」39 「とどけもの」   雪柳あうこ しずかな日曜日の午後 夕方に差し掛かるころ インターフォンが鳴る 届けられたのは 化粧箱に入った ひとつかみの 心 とどけもの、受け取りました。早速、風にさらして水に活けて...

Posted by 松下育男 on Saturday, August 6, 2022

縦書きバージョンも載せておきます。


素敵なイラストをお借りしました。ありがとうございました。

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