【掌編】レモンの樹【散文詩】
レモンから、酸っぱいのがなくなればいいのに。口をとがらせて言うと、崖の上のレモンの樹の横に立つ、年の離れた姉は笑った。姉とレモンの樹は背の高さはほとんど同じで、わたしは時々、どちらがどちらかわからなくなる。どちらからも柑橘の良い香りがしていたし、どちらもいつだって瑞々しかった。
レモンの樹は、育ち切ると手入れが要らなくなるんだって。秋の初め、祖母から収穫を頼まれた姉は、樹の高いところからぷつん、ぷつんと、まだ青い実を枝から離す。ほら、とナイフで切り分けてくれる。姉はためらわ