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【詩】生爪

サンダルの隙間から太陽を跳ね返していた
金銀のジェルネイルは
急な冷え込みに慄いた
 
秋雨に縮む靴の中
爪先に残っていた夏は
ばらばらに壊れ、剥がれて落ちた
 
現れたのは、随分息を塞がれて
少し白っぽくなって筋張った
久しぶりの生爪
 
雨を洗い流した風呂の中で
眺める足先の生白さ
柔らかく頼りないわたしの魂は
この身の隅々から不意に現れる
 
いつもより丁寧に体を拭いて
生まれたてのような爪の上の
水滴を、優しく拭う
 
玄関の片隅では
剥落した夏がまだ
金銀にきらめいている
 
まだ柔い足先を
少し暖かい靴下で包んだら
裸の魂で歩こう
秋の深みまで

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夜が長くなっていくのを感じる季節ですね。
そろそろサンダルをしまおうと思いながら書きました。

イラストは、みんなのギャラリーより、yonakaさんのイラストの一部をお借りいたしました。ありがとうございました。


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