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エッセイ

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自身の記事の中から、エッセイをまとめています。
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#poem

絵画

絵画

突然ふと、太陽が隠れたら
ふと、この道を行く意味を失って
そうして、ぴたっと足を止めたくなる
でもこの世界で足を止めることは
心臓を止めることに似ているから
力が抜けそうな体を
重怠い足を
とりあえず交互に出している

そんな瞬間がふとやってくる
脳が何かを拒んでいる
心が脱力している

この道を行くために
路傍の店で欲を満たす
けれど十分に満たせる程の
対価を持ち合わせていない
明日が遠くなる

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赤い線

赤い線

国語の授業中。
授業の内容はおぼつかない。
ただ、私は「健康に生きるということはどういうことか」について3つの答えを持ち、先生に当てられるのを待っている。
ふと、板書を写したノートに一編の詩を書いた私は、先生に見つからないように前を向いたまま、後ろの男の子に渡す。
授業を聞きながらしばらく待つと、後ろから合図がくる。
私が後ろに手を伸ばすと、合図をしていた手にあたり、ふと彼の手に私の手が包まれる。

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喜劇

喜劇

私がここまで生きてこられたのは、
後ろ向きのなかで
絶望の合間合間で
希望を持ち続けてきたから。

前を向いて、とよく言われるけれど
どんなに後ろ向きでも、今生きていることが
私にとっての最大の「前向き」なのだ。

だから、
頑張ってきた って
思ってもいいですか

頑張ってきたのに って
愚痴ってもいいですか


もう期待したくない
希望も持ちたくない
それに躓いて転ぶのなら

ただ

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夢

リッチな潜水船に乗っている夢を見た。その目的こそ忘れたが、そこに至るまでのストーリーがあって、壮大なアドベンチャーだった。

なのにいざ出航すると、他にも知らない人が乗って来て、人に気を遣い、自分のハンデを気にする小さな部屋の話になった。
私は落ち着きなく、親指の逆剥けをいじっていた。

そこで目が覚め、
ぼやっとしたまま親指を触ると
逆剥けなんて無かった。

只の昼寝だった。
すべては頭の

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匂い

匂い

世界の終わりには、
どんな匂いがするのだろう。

記憶は不確かで出鱈目で、
なのにふとよみがえる、
いつとは知らないあの日の帰り道と
あの匂い。

雨で光る地面と車の走らない道路、
その風景は映画的で現実味がない。

なのにあの匂いはリアリティを帯びていて、
(匂いは目に見えず脳で認識するものなのだから、脳が仮想的に認識すればそこにあるのとほぼ同じなのだ)
もう帰ってこない時間と絡まる感情が

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時間について

時間について

良い出来事は忘れやすいのに
嫌な出来事はいつまでも覚えている。

薄々答えは分かりつつも
なぜなのか、と呟いた数日後
テレビで答え合わせがあった。

危険回避のため
人間の脳はそうできているらしい。
嫌な出来事や怖い出来事を鮮明に
脳に記録するのである。

ここで、なるほど、と手を打った。
事故や自転車で転んだ瞬間など
その一瞬、スローモーションになる。

それは脳がその瞬間の情報を
事細

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