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匂い

世界の終わりには、
どんな匂いがするのだろう。

記憶は不確かで出鱈目で、
なのにふとよみがえる、
いつとは知らないあの日の帰り道と
あの匂い。

雨で光る地面と車の走らない道路、
その風景は映画的で現実味がない。

なのにあの匂いはリアリティを帯びていて、
(匂いは目に見えず脳で認識するものなのだから、脳が仮想的に認識すればそこにあるのとほぼ同じなのだ)
もう帰ってこない時間と絡まる感情が
私を染めた。

ああ、世界の終わりには、
こんな匂いがするのだろうか。

もう戻らないと分かっている頭と
寂しいと思ってしまう心が混ざった匂い。
妙な安堵感を内包した、匂い。