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本の部屋

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本棚へ大切にしまっておいて、何回も読みたい素敵な文章や言葉を集めています。
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記事一覧

おしゃべりにタイムカプセルを埋める日々を

おしゃべりにタイムカプセルを埋める日々を

家の近くに足繁く通う蕎麦屋がある。蕎麦屋で飲むのはどうしてこんなにおいしいんだろう、締めの一曲(蕎麦)に向かってセトリを組むような感覚があるからかしらと思うのだけれど、このお店に来ている人のほとんどが「一曲目」に注文するのが刺し盛りだ。これが、「なぜ?」と首をかしげたくなるくらいおいしい。大将は「切ってるだけですよ」とかっこよく謙遜するけれど、この質の魚を町の蕎麦屋が仕入れていることが素敵だし、す

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そろそろ、ひとりぼっちの旅をしよう |オランダへの旅を決めた日

そろそろ、ひとりぼっちの旅をしよう |オランダへの旅を決めた日

昨日、飛行機と空港が嫌いだったという記事をあげた。

今では、当たり前のように飛行機に乗って日本を巡っていて、お仕事ではタイに行った。
そろそろ、自分の意思で行きたい国へ行く時期なような気がしていた。

数年前から今年の夏頃までは、オーストラリアにワーホリに行こうかななんてぼんやりと考えていたし、秋くらいからは、憧れていた北欧に行きたいななんて思い始めていた。

周りの友人たちや家族に、「そろそろ

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人生、どうにもうまくいかない時には、腰を低くして、ゆっくり進む

人生、どうにもうまくいかない時には、腰を低くして、ゆっくり進む

先日、長野県と岐阜県にまたがる乗鞍岳に行ってきた。日本百名山のひとつで、2千数百メートルのところまでバスで行けて、登山初心者でも3千メートル級の山歩きを味わえる。前々から登山ツアーを予約して、楽しみにしていた。

荒天のなかを登る

秋のはじめ、下界はいいお天気だったのに、山の上はあいにくの荒天だった。霧であたりは真っ白で、強風が吹き、断続的に雨が降っていた。山は天気によって全然違う顔になる。私た

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書く仕事がしたい、と思っていたけれど

書く仕事がしたい、と思っていたけれど

書く仕事がしたい、と思っていた。ライターとか、作家とか、エッセイストとか。
どうやら自分は文章を書くことが好きで、苦にならないらしい、と気づいたころから、漠然と憧れていた。

けれども最近気づいたことには、私はいつの間にかとっくに「書く仕事」に就いていたようだ。

***

人事の仕事をはじめて丸10年が経つ(ということを認識すると、いつも眩暈がする)。
特に強い気持ちで希望した仕事ではない。営業

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もう会えないから、忘れられない。旅で得た「心の財産」

もう会えないから、忘れられない。旅で得た「心の財産」

以前どこかで、海外ひとり旅の魅力を紹介する記事の中に、こんな一項を見たことがあった。

「世界中に友達ができる」

それを見たとき、そんな魅力が海外ひとり旅にはあったのか、とびっくりした。

というのも、自慢ではないけれど、今まで30ヶ国ほど旅してきたはずの僕は、旅先で友達ができたことなんて、ただの一度もないからだ。

少なくとも、帰ってきてから再会したり、たびたび連絡を取り合ったりするような人は

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ウズベキスタン、年若い車掌からのプレゼント

ウズベキスタン、年若い車掌からのプレゼント

いま、この記事を書いている僕の手元に、200スムの硬貨が4枚ある。

……といっても、「スム」がどこの国のお金なのか、わからない人の方が多いかもしれない。

スムは、中央アジアの国・ウズベキスタンの通貨なのだ。

この9月、ずっと気になっていたその国へ、1週間の旅に出た。

タシュケントやヒヴァ、サマルカンドを回り、日本へと帰ってきて、かばんの中を片付けていると、不意に4枚のコインが落ちてきた。

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もう一度あの日には戻らない。

もう一度あの日には戻らない。

人生なんてものは、生きてみなけりゃわからない。

ブレイディみかこさんの『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』にさらっと差し挟まれていた一節だ。

先日、うちの犬をわが家に迎えてから7年目となる「ウチノコ記念日」を迎えた。犬にも当然誕生日はあるのだけど、保護犬のようにその日を追えない犬も多いし、誕生日のわかっている犬にしてもその日は母犬のもとで過ごしたのだから、人間家族としてはやはりわが家

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あなたの、ふるさとは?

あなたの、ふるさとは?

この前みんなで夜ご飯を食べていたら、長男がふとつぶやいた。

まず、4歳児の口から突然でてきた「ふるさと」という言葉にびっくり。

そして「ふるさと」という渋い言葉と「めっちゃ」という言葉の組み合わせが、なんだかジワる。

さらに「ふるさと」が「めっちゃある」という考え方も、なんだかとても面白い。

驚きとニヤニヤで顔がぐにゃっとしながら、もう少し話を聞いてみよう。

4歳児が突然語り始めた「ふる

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自由を求めてひとりを選んだ私が今日、結婚をする理由

自由を求めてひとりを選んだ私が今日、結婚をする理由

「結婚しました。」

この言葉を聞いたら、2年前までのわたしを知る人はきっと「え、ななみんが結婚?!嘘でしょ?!」と驚くだろうなあと思う。

この事実に驚いているのは、わたしも同じ。

婚姻届を提出した今だって、「結婚」という言葉はなんだかくすぐったくて、遠い世界のできごとみたいだ。

そもそも、2年前までのわたしにとって「結婚」とは、自ら先延ばしにしていた未来だった。

いつかはするのだろうな、

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世界を見つけるということ

世界を見つけるということ

「木洩れ陽」が好きでよく撮ります。美しいですよね。木々の隙間から光が射して映し出されたそれ。風に揺れるとまるで小さな子供たちがダンスしているようにも見えます。この言葉を生み出した豊かな感性に憧れます。ところで英語では「木洩れ陽」を一言で表せられないそうです。

英語では ”sunlight filters through the trees” のようなセンテンスで表現されるそうです。同じように日本

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