田中裕子

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田中裕子

batonsのライター/編集者、インタビュアー。本をつくったり、雑誌やウェブで記事を書いたり、イベントの司会をしたり。鹿児島出身、東京在住。保護犬の柴犬テンコがかわいい。https://tnkyuko.themedia.jp/

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  • マカオ母娘ふたり旅記録

    2023年7月に母娘ふたりで行ったマカオの旅エッセイです。

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最近の記事

おしゃべりにタイムカプセルを埋める日々を

家の近くに足繁く通う蕎麦屋がある。蕎麦屋で飲むのはどうしてこんなにおいしいんだろう、締めの一曲(蕎麦)に向かってセトリを組むような感覚があるからかしらと思うのだけれど、このお店に来ている人のほとんどが「一曲目」に注文するのが刺し盛りだ。これが、「なぜ?」と首をかしげたくなるくらいおいしい。大将は「切ってるだけですよ」とかっこよく謙遜するけれど、この質の魚を町の蕎麦屋が仕入れていることが素敵だし、すこし謎でもある。 もちろん一緒に足繁く通っている娘は、4歳でこの町に引っ越して

    • 「子どもの顔をSNSにアップする人はみんな毒親」?

      先日、とても好きなライターさんに子どもが生まれた。ほとんど交流はないけれど勝手にうれしい。 その報告は旧ツイッターで見かけた。生まれたての赤ちゃんとご本人の写真が添付してあり、新生児成分を摂取しようとよくよく見ると、そのちいさな顔にはほわほわとモザイクがかかっていた。 「おお」と思った。 その「おお」は友人の編集者も感じたようで、問われた。 「子どもいないからわからないんだけど、最近はこういう感じなの?」 すこし言葉に詰まって、うーん、そうではないかなと答えた。出産報

      • 50年前三軒茶屋で新聞配達していた青年はドンキーコングと時代を作った

        羽田に着いたのが23時近かったことと、体力を無視して遊びまわり多少疲れを感じていたことから、「明日から節約しますので」と何かに言い訳しながらタクシー乗り場に並んだ。 わたしのターンでやってきたのは個人タクシーの、おじいちゃん運転手。道でつかまえるときなんとなく個人タクシーは避けるけれど、タクシー乗り場でパスできるほど神経は図太くない。「何事も起こりませんように」と小さく祈りながらトランクにキャリーケースを乗っけてもらい、住所を告げる。「もし寝てたらスーパーのある角を曲がるタ

        • 美容、それは「知らんがな」の集積

          8/25 髪の毛の手入れが好きだ。基本的にたっぷりとつやのある状態が理想だけれど、うねりっ毛で乾燥しやすいわたしの毛は、ほわ、ぱさ、となりやすい。でもひとつに結んだときのほどよいカール感も好きなのでストレートはかけたくない……というわがままと、自宅ケアを継続する意志が弱い、という圧倒的ずぼら性のもと「およそ1ヶ月に1回、美容院で髪質を整えるトリートメントをかける」というやり方に落ち着いている。だから正しくは「手入れしてもらうのが好き」なのかもしれない。 収入に対して過課金

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          大人はいい、年の離れた「友だち」ができるから

          8/18(金) あたらしく本を出す先輩とおしゃべりした。 ——いま便宜上「先輩」と書いたけれど、先輩後輩という関係なのかよくわからない。少なくとも年は離れているし、文筆家として大活躍しているから「先輩」で間違いではない。けれど親しさとか、一緒の会社にいたわけでも仕事をしたわけでもないことを考えると、「友人」と呼んでもそんなに間違いではない……という微妙な関係。いや、正直わたしは半分以上、友人だと思っている。 お互いの年齢差があるとき、「下」のほうから「友だち」と呼ぶのは

          大人はいい、年の離れた「友だち」ができるから

          台風直撃、だけどあなたは一生ラッキー【母娘マカオ旅行記録】

          台風直撃、終日缶詰 翌日、台風が接近しているということで警報レベルが3から8に上がっていた。マカオは警報レベルが(なぜか)1,3,8……と上がっていき、8になると公共交通機関などがストップする。店舗も休業。よって、強制的にホテル缶詰となることになった。 ちなみに「明日乗ろう」と言っていたホテル内の運河をゆくゴンドラも休止になっていて、娘はショックを受けていた。彼女にとってはなんといっても「船に乗れるホテル」だったのだ。しかし娘はわたしに叱られた5秒後に鼻歌を歌うくらい、引

          台風直撃、だけどあなたは一生ラッキー【母娘マカオ旅行記録】

          「育ち」という物語

          8/15 リアリティショーにうっすら抵抗感を持ちつつも、なんとなく流し見してしまうのが「バチェラー」シリーズだ。ひとりの男性をめぐって十数人の女性がバトルする(という建て付けの)恋愛リアリティ番組で、シリーズ5作目になる。今朝もメイクしつつ、舞台であるメキシコの風景を楽しんだ。 バチェラーシリーズは「運命の人=結婚相手を見つけること」がゴール。そのため、最終的にはお互いの家族と会うイベントが発生するし、バチェラーも参加者も自分も生まれ育ちや理想の家庭についてよく話をする。

          「育ち」という物語

          十三の魂は来世まで続くのだろうか

          8/9(水) 友人の男性と、近況報告がてらお酒を飲んだ。 1軒目でジントニックを3杯飲んだところでタトゥだらけのマスターにこちらが恐縮するくらい申し訳なさそうに閉店を告げられ、もう一軒行こうということに。集合時点からじゅうぶんに酔っぱらっていた彼は適当に「ここにしよう、来たことある」と入っていく。 そのカジュアルなバーには、じつはわたしも一度だけ来たことがあった。ふたりでボウモアのソーダ割りをお願いすると、バーテンダーはなつっこい笑顔でふたりの顔を交互に見て「お久しぶり

          十三の魂は来世まで続くのだろうか

          旅にその地に、惚れるとき【マカオ母娘2人旅記録】

          マカオを特別な場所にしてくれたエッグタルトのプレゼント 街歩き午後。 一瞬たりともお腹をすかせないままぶらぶらしていると、エッグタルトの有名店 Margaret’s Cafe e Nataを偶然見つけた。近づくとずらり長蛇の列、娘に(やめておこうよ)というニュアンスを含ませて「ちょっと時間かかりそうじゃない?」と言うと、即答で「ならぶ」。「疲れない?」「だいじょうぶ」。……おいおい、搭乗手続きの列ではあんなに「まだ?」連呼していたじゃないか! しかしこの列、並べど並べど

          旅にその地に、惚れるとき【マカオ母娘2人旅記録】

          大人と子ども、わかり合えたり合えなかったり【マカオ母娘2人旅記録③】

          モンテの砦で、子どもと大人の時間を考える 博物館で芯まで冷えきったからだが、日差しと湿気にからめ取られてあっという間に熱を持つ。でもまあ雷雨を思えばありがたいねえ、と話しつつ汗を吹き出しつつ、聖ポール天主堂と同じく1600年代に造られた「モンテの砦」の階段をえっちらおっちらのぼった(後にエスカレーターがあることを知る)。 モンテの砦は高台の上にある、大砲や兵器工場、貯蔵庫をそなえた防御施設だった。中国本土とつながる北側を除いた(「敵意はありませんよ」と示すため)東西南にお

          大人と子ども、わかり合えたり合えなかったり【マカオ母娘2人旅記録③】

          「なにも残せなかったけれど、文化は残した」ポルトガル、聖ポール天主堂、駆け出す子【母娘マカオ2人旅記録②】

          本日も晴天なり 朝7時に目が覚める。日本時間8時。寝たのは遅かったけれど、カーテンをすこし開けておいたため陽の光で自然に目が覚めた——光? そうだ、天気。息を止めてベッドから起き上がり、スリッパに足を入れる。娘を横目に、カーテンと窓の間にからだをすべり込ませた。 雲は浮かんでいるけれど……晴れている! またしても「ほら」とひとりごち、カーテンをおおきく開けた。 支度を済ませて8時ごろ、中国大陸と陸続きのマカオ半島に向け出発。娘はワンピースに首からカメラを下げ、胸元にサン

          「なにも残せなかったけれど、文化は残した」ポルトガル、聖ポール天主堂、駆け出す子【母娘マカオ2人旅記録②】

          娘の初海外旅行はマカオのヴェネツィアで【母娘マカオ2人旅記録①】

          荒天予報のマカオへ、いざ 大雨、雷雨、雷雨、雷雨——。 旅、となるとまず気になるのが天気だけれど、出発1週間前に見ても、3日前に見ても、前日に見ても、マカオは全日程迷いのない荒天予報だった。一緒に天気予報を見ていた娘ががっかりしてはいないかと「雨なりに楽しもうね、エッグタルトをたくさん食べるとか」と声をかけると、むしろそのほうがいいと言わんばかりに「はーい!」と高く手を挙げる。エッグタルトすなわち、ポルトガル発祥の「パステル・デ・ナタ」。娘いちばんの「旅の目的」だ。 一

          娘の初海外旅行はマカオのヴェネツィアで【母娘マカオ2人旅記録①】

          ポルトガル一人旅で子どもがうまれた話

          子どもが年長に進級した。このままいけば、来年ランドセルを背負うことになるだろう。いつの間にか赤ちゃんを卒業し、少女へと歩を進める子を見てふっと不思議な気持ちになる。 わたしは一族郎党のほぼ末っ子として育った。つまり身近に赤ちゃんがいたことがない。そのせいかずっと「子ども嫌い」というより「子ども苦手」——いや、いい人ぶらずに言えばやっぱり「子ども嫌い」だったかもしれない。赤ちゃんが無条件にかわいい、という感覚がよくわからない。子どもとどう接すればいいのかわからない。無駄に道化

          ポルトガル一人旅で子どもがうまれた話

          言葉は通じないけども、犬との暮らし。

          玄関横の土間で仕事をしていると、愛犬が文字どおり「くぅーん」と鳴きながら困った顔をしてやってきた。どうしたのと声をかけながら立ち上がると、再度「くぅーん」と鳴きながらリビングのほうにたったったっと駆けていく。だらりと垂れた尻尾を目で追いかけるわたしを振り返る。「くぅーん」。そうか、そっちに来てほしいのかい。リビングに向かうとワタワタ、はじめて見る動き。でも……その動きにピンと来る。愛犬と目が合う。「くぅーん、くぅーん」。——ああ、わかったよ。 室内ではトイレしない(できない

          言葉は通じないけども、犬との暮らし。

          すべては運、あなたもわたしも

          緊急事態宣言があけた。ああ、日常、戻ってきた。おかえり待ってた。 休園による自宅保育と在宅ワークには、だいぶ苦しんだ。下書きに残ったままのnoteがあって、そこには「なにもできないこと」のつらさがつらつらと描かれている。もちろん「子どもと過ごす」をしてはいるけれど、仕事に集中できないこと、そのことでじわじわ迷惑をかけていることに、毎日少しずつ毒を盛られているような感覚だった。 はじめは「娘が寝てから働こう」とそろばんをはじいていたけれど、昼寝なしひとり遊びタイムゼロのイヤ

          すべては運、あなたもわたしも

          自分に手を入れつづけること

          なぜかすっかりさっぱり忘れていて、なぜかスパンと思い出した。そういえば、妊娠後期4か月と出産後2か月、新潟から取り寄せた甘酒を毎日欠かさずたっぷり飲んでいた。 妊娠中にふらりと立ち寄った物産展で「絶対飲むべし」とはっぴを着たおじさんに押しに押され、甘酒は好物だし「飲む点滴」なんて名乗るくらい身体にいいなら損はしなかろうと数ダースがつんと取り寄せたのだった。そのおかげかどうかはわからない、けれどもファクトとして産前産後、わたしは元気だった。体調的には「淡々と」という言葉がぴっ

          自分に手を入れつづけること