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「子どもの顔をSNSにアップする人はみんな毒親」?

先日、とても好きなライターさんに子どもが生まれた。ほとんど交流はないけれど勝手にうれしい。

その報告は旧ツイッターで見かけた。生まれたての赤ちゃんとご本人の写真が添付してあり、新生児成分を摂取しようとよくよく見ると、そのちいさな顔にはほわほわとモザイクがかかっていた。

「おお」と思った。
その「おお」は友人の編集者も感じたようで、問われた。

「子どもいないからわからないんだけど、最近はこういう感じなの?」

すこし言葉に詰まって、うーん、そうではないかなと答えた。出産報告では顔出しする人が多いし、とくにインスタでは一般人からインフルエンサーまでフォロワー数に関係なく子どもの写真、あげてるし。

言いつつ、「でもなあ」と思う。

たしかに新生児〜乳児期なら顔写真をアップしてOK、みたいな風潮がある。あるけれども、肖像権は人間が生まれながらにして持っている権利のはず。人権なるもの。

だから「0歳児はアップOK、5歳児はNG」をつきつめると「0歳児に人権なし、5歳児には人権あり」とイコールになってしまう。しかもその権利は親が付与するという。そう考えると、どうもおかしい。

と頭ではわかっているから、「そういうわけではない」と伝えるとき言葉に詰まってしまったのだろう。だからこその、「おお」なのだし。

子どもの「個」は実感を持ちづらい。「子どもの写真とSNS」でまず思い浮かぶのもリスクのほうだ。「3歳になったら」「小学校に入るまで」と顔出しをやめていくのは、「顔がしっかりしてきたから」「ひとりで出歩くこともあるから」という理由が多い気がする(とくに女児は)。

そうそう、自分でもおどろいたのだけれど、インスタで2歳まで顔写真をアップしていた一般人の女児を数年後に街で見かけて「あの子だ!」と気づいたことがある。そしてその人のフォロー欄と投稿のちょっとした文言から、通っている私立小も特定した。

わたしの野次馬根性に邪悪さを振りかけたような人間はきっといる。いろいろな嗜好の人もいる。性別は関係ない。子どもの安全のためにプライバシーは守ったほうがいいよね。

——こんなふうにリスク文脈で語るほうがわかりやすい一方で、でもやっぱりベースは人権のほうにある問題かなとも思う。ある友人は「子どもの顔をSNSにアップする人はみんな毒親だ」と断言していた。親と子、人格をごっちゃにしすぎだと。

子が1歳になるまでインスタに顔出し投稿していたわたしの心臓はきゅっと縮まり、そんな強い言葉を使わなくても……と思ったけれどなんにも考えていなかったのはたしか。「親だからいい」という免罪感は、ありました。思いがけない言葉にうなだれつつ、「人権侵害している毒親」という認識が広まれば人の行動もずいぶん変わるんだろうなと思った。



そもそもの話、人にはプライバシー権がある。だから、子どもの顔だけでなく言動も一切アウトプットすべきではないはずだ。——原則としては。

けれど、作家さんの家族エッセイに心揺さぶられたり、SNSに流れる「息子のきゅん発言」にまんまときゅんとしたり、娘の言動にいてもたってもいられずnoteを書いたりと、共犯ときどき主犯の自分も正直いる。いてしまう。「一切NG」と言われるとうう、となってしまう。あいまいなところを漂っている自覚はある。

それに子育ての「かわいい」や「たいへん」を共有することで救われている人もいるだろう。ワンオペで行き詰まっている人、リアルのママ友がいない人……。古来人類は集団で子育てする動物なわけで、コミュニティからの反応は本能で求めるものなのかもしれない。

だけれども、それでも。いったん冷静になって、自分の諸欲求のために人の権利をないがしろにしていないか? の目を持つことはだいじじゃないかと思う。この世に生まれおちた瞬間から、人権はその人のもの。親、つまり他者に預けられる瞬間はないはずだから。

……とつれづれ殴り書いたけれど、この話、けっこう議論されているトピックのようで友だち同士でも認識はばらばらだ。権利意識がそこそこ高いはずの編集・ライター・クリエイターでもまちまちで、子の顔写真やエピソードを発信したり、ときに自身の記事などの仕事に使う人もいる。

ちなみに「本人に聞いたらいいと言ったから」派の人もいて、何歳からその判断を信頼するか問題もありそう。子どもの合意は合意になりえるのか、という(我が家も試しに、リスクを説明したうえで写真を載せていいか5歳娘に尋ねてみたことがあるけれど「いいよー!」と秒で返されずっこけた。……このエピソードもNG?)。

議論にはなるし、原理原則にのっとるなら「こうすべき」はありそうだけど、いまいち共通認識が醸成されない。ふしぎなテーマだなと思う。

みんなどう考えてるんだろう? いろんなスタンスの人の話を聞いてみたい。


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