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ささめごと

あなたの蒼い手帳には
十三月があるらしい
生まれたその日の境目は
切り取り線からひらひらと
かろうじて私に繋がる
謎のひとつき

十三月には雪がない
その頁には静謐な新月
震える指先に届くものは
柔らかくて雄弁な文字
人知れず握り溶かした
ちいさな手の中の
言葉を知らないあの頃の
雫が一粒残っている

読み取り月は優しくて
昼より明るい夜がある
素敵なものを素敵と言える
名もなき道がそこには続く
襟元を泳がせて風上を知り
手を差し出す
パンプスの先が濡れる
曇った季節の真ん中で

ねっとりと落ちてくる
七色のプリズム
階調がかって搔き消されゆく
遠慮がちな雑音
身動きが取れぬまま
その不自由に恍惚とする
魅惑的な呪いは
昇華されゆく子守唄
それでもあなたは
夜を愛でるという

光の乱射月はざわめいて
鼓動が右往左往する
太陽に揺さぶりをかけ
朝か白夜か南中の最中
笑い声を求めて
まだ見ぬ絵画を探し求めて
ただうっとりと
歯がゆさに林檎を齧る

私は知っているのだ
あなたの内ポケットにはボルドーの
まっさらな手帳があることを
印刷された文字などない
開けっぴろげな
頁を抱えていることを

深呼吸一回
あなたはきっと
私を好きです

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