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どこかで見聞きした何かや言葉を、気の向くまま、考えてみるマガジン。 記事や書籍などの推薦もあり。ニュースソース、真偽のほどは、ご自身で確認を。
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記事一覧

蜘蛛の糸の経済学

蜘蛛の糸の経済学

誰かを優先することと、自分を大事にすること。

この二つが同時に叶えばいいと思う。

「遠慮するな、自分を出せ」

「自分に自信をもって、意見を通せ」

 そんな言葉ばかり聞いていると、ふと世の中には「自分を優先するか」「他人を優先するか」の、二種類の人間しかいないような気がしてくる。

 さらには、他人を優先する人間は損をする一方で、自分を優先させる人たちは限られたパイを取り合い、勝者がたった一

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自分を雇う

自分を雇う

「ずっと働きたいなぁ」

「いや、無理でしょ。自営業とかじゃない限り」

そういうやりとりを友人として、死ぬまで働くことの難しさに初めて気付いた日。病院のベッドで、自宅で、ひとり息を引き取るよりも、さいごまで人と関わりながら、生きていたい。

長すぎる定年後の人生を、保険と年金だけで乗り切るのは辛いだろう。身体の自由が今より利かなくなるだろうし、体力も限られてくる。その段になって、自分が本当にした

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福祉の視点

流行りのものには疎く、おおむね話題になっているときは知らないことが多い。

北川恵海(きたがわえみ)著『ちょっと今から仕事やめてくる』KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 、2015年。

原作は同名小説だが、自分が観たのは映画の方だ。

成島出監督、福士蒼汰・工藤阿須加出演(配給:東宝)2017年。

はじめは、胃が痛くなるような場面が続き、見続けるのをやめようと何度か思ったが、結局最後

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「見られたい自分」で好かれたい

「イメージしてた人と違った」

少女漫画の一コマではなく、現実に言われる言葉である。

「イメージって?」

と、訊いてしまいたいのだが、そこはぐっと抑えて笑ってごまかす。

どうやら人は他人を認識する際、その人の直接的な言動の積み重ねというより、もっと曖昧な何かを根拠にしているらしい。

湧いた疑問符は大きすぎて、子どものときの自分は、世の中一般そういうものだと、考えを保留することにした。普通に

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読みやすい文章

万城目学(まきめまなぶ)さんのエッセーを読んでいると、

読みやすい文章が書けるようになってきたら、文章が上達した証だという意見があった。

そうなのかぁと思うと同時に、確かに今は、どの書店で立ち読みをしても、ものすごく読みやすい本ばかりが並んでいると、納得する。

単に子ども時代の記憶と比べて、「そりゃぁ大人の頭で読めば違うだろう」というのでもなく、出版年で遡るほど、その違いが歴然としている。

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誰かのために怒ること

電車の中で時折、見知らぬ人同士の、諍い(いさかい)を目にする。

荷物や肩がぶつかり、「謝れ」と言う人。

ぶつかったほうは、小さな声で「すみません」と言うが、その態度が気に入らない、馬鹿にするなと、追い打ちをかけられる。

「謝ったからいいじゃないか」と場を離れようとすると、それでも場が収まらない。遠巻きに眺めて思う。何が正解なのだろうと。

「怒り」を感じることは、自分の尊厳や、大事だと思って

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匿名社会の深度

匿名社会の深度

「書く・読む」行為は、いまや「話す・聞く」と同じ速さか、それ以上の速さで実現可能だ。

紙やペン、字を書くスキルといったものから、パソコンもしくは携帯一つで事足りる。その唯一の道具の使用方法も、ますます容易になっている。

通信技術の発展が、書き手と読み手との間のタイムラグを取り去った。
匿名性を盾に、「話す・聞く」が自由になれない現実の力関係から、「書く・読む」を解き放った。

ネットワーク社会

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SNS

SNS

誰かに話を聞いてほしいだけなら、聞いてほしいまさにその瞬間に、時と場所を選ばず、言いたいことを言える場所があればいい。

人を呼んで言うほどのことでもないけれど、ちょっと言いたい。聞ける余裕のある人が常にそこにいる、そういう安心感で、発信するメッセージ。

自分以外の人が日ごろ何を感じ、何をしているのか。

自分という籠の中だけでは退屈してしまっているから、拘束されない自由な環境なら、顔の知らない

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耳を傾ける自由

耳を傾ける自由

自分はどちらかというと、ぼんやり人の話を聞いていたい人間だと思う。
話したい、という欲求に勝るのが、聞く面白みとでもいうのか。

休日の昼どき、珍しい場所で外食などをすると、さっそく周囲の話し声が耳に入ってくる。

もちろん一人で食べに入っている。注文さえ済めば、ほかに優先することがない。

周りのお客の中で特に目立つのが、大きな声が途切れない女性二人組。
彼女たちの会話を聞く中で、気付いたことが

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楽しい学校

 何のために学校へ行くのか。

1. 集団生活を学ぶため、

2. 世の中に色んな人がいること知るため、

3. 勉強するため。

 小学校入学から、高等学校卒業に至るまで、自分の学校へ行く理由は、ほぼ3番に終始していた。1番、2番の理由はおおむね、「閉じた社会の中でとにかく我慢の仕方をおぼえること」なのだと解釈していた。

 それでも自分は思い返す度、良い先生にも出逢えたし、奨学金を得て、望める

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計算されない未来

 20代の新人さんを教える担当になり、早3か月目。10歳と離れていないのだけれども、それでも生きてきた時代が違うのだな・・・と思うことが度々ある。

 一つには「情報」に対する認識である。

 自分の幼い頃には、すでに簡単な電子辞書はあったが、それでも紙の辞書の方が親しみがあった。10代、携帯、パソコン、インターネットと、キーボードを打つ授業なども現れたが、まだネット上の情報も豊富ではなかった。情

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器用な孤独

『ことばを紡ぐための哲学:東大駒場・現代思想講義』

中島隆博・石井剛編著

白水社さんのwebマガジンを読んでいると、中島隆博さんと星野太さんが、「孤独」について話しているのに出会った。初出は上記の書籍である。

本のテーマに沿った文脈もあるのだが、お二人の意見は「孤独は確保すべきもの」という点で、足並みが揃っているようだ。

ここでいう「孤独とは何ぞや」と思われた方は、是非読んでほしい。

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農業

「若くて頭が柔軟なうちに農業を学び、経営者として六次産業の成功者を目指す」

「早期退職をして、田舎へ暮らしを移し、食べていける程度の農業にいそしむ」

就職活動で、一度は真剣に農業をしようかと悩んでいた。しかし、会社向きではない気がしていた自分は、かといって、縁もゆかりもない土地へ身を投げ打てるほど勇気もなかった。

結局は都心部で会社員となった今も、「農業」というワードには興味を惹かれる。特に

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固定電話で

自分が生まれたころには、まだダイヤル式の固定電話があった。

自由に使いこなせるようになる前に、プッシュ式のそれに代わり、

いつの間にか、固定電話が携帯電話になっていた。

「便利な世の中になった」と喜ぶより先に、どこへ行こうと、持ち運ばなくてはいけないものが増えたことが面倒だった。

ハンカチ、ティッシュ、携帯電話? 時計機能が付いていても、腕時計よりは重い。

位置情報から、視聴動画の種類、

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