マガジンのカバー画像

フランス語(等の)方へ

37
主にフランス語・フランス語学に関連する記事を放り込んでいます。
運営しているクリエイター

#コミュニケーション

deuxièmeとsecond【フランス語の方へ:1】

小手先の記事もちょっと書いてみよう、という試みです。


フランス語には、「2つ目の」と訳しうる形容詞がふたつあります。deuxièmeとsecondです。前者は基数詞deuxに序数詞化標識-ièmeをつけたものです。後者はラテン語secundusに由来します(なおsecundus自体は、sequi「付き従う(suivre)」という意のラテン語の動詞と、根のところでは繋がっているようです。Oxf

もっとみる
【551】これくらい読めなきゃアウト? Finleyのイヤミを読みとろう

【551】これくらい読めなきゃアウト? Finleyのイヤミを読みとろう

ほんの一節の英文から(ごく禁欲的にやっても)これくらいは読むことになる、ということの実演であり、日本語においても、とりわけ然るべき著者によって力を入れて書かれているものについては似たような態度をとることになる、ということです。

■【母語なら読めるというわけではない】解釈をいちいち書き出すということは稀ですが、極めて大げさな言い方をするなら、一瞬で以下に示すくらいにわかることで、やっと文章を読むた

もっとみる
【544】Bugenとはどこ?/訳では見えないエトセトラ/経営から職人の論理へ

【544】Bugenとはどこ?/訳では見えないエトセトラ/経営から職人の論理へ

さて、以下は18世紀中頃にフランスで書かれたディドロ&ダランベール『百科全書』第1版の項目のひとつです。何について書いているかわかりますか。

Bugen(地理)、Ximoの島に位置する、アジアの都市・王国であり、日本帝国に服している(BUGEN, (Géog.) ville & royaume d’Asie, dans l’île de Ximo, dépendant de l’empire d

もっとみる
【536】デカルトはそんなこと言ってません/あなたは全然読めていません

【536】デカルトはそんなこと言ってません/あなたは全然読めていません

世界的なデカルト学者であるドゥニ・カンブシュネルの『デカルトはそんなこと言ってない(Descartes n’a pas dit)』の邦訳が、今月末(2021年9月末)に出るようです。

デカルトに関するよくある誤解をとりあげ、それがどのような意味で間違っているか、ということが取沙汰されます。

タイトル(の訳)からも分かる通り、決して固い本ではなく、フランス語で読んでみた限りでは非専門家でもわかる

もっとみる
【509】朝顔とあずま屋と蝶:語学学習のわずかな一部

【509】朝顔とあずま屋と蝶:語学学習のわずかな一部

語学学習は結局のところ一定の規模の文章を念入りに読みつづけることが重要になってきますし、それが全てなので、母語だろうが外国語だろうが変わらなくなってきます。世の大半の語学の参考書が必然的に入門レヴェルのものに留まる理由です。

とはいえ語学の勉強であるからこそ、つまり意識的な、突き放された対象に関する学びであるからこそ、積極的に行われる作業もないわけではありません(し、それはある意味で、母語以上の

もっとみる
【351】leaderなる語を取り巻くイメージから出発する

【351】leaderなる語を取り巻くイメージから出発する

いわゆる「リーダーシップ」は特に経営や組織論などの分野において極めて重要になるのでしょう。私はそうした分野に関してほとんどレレヴァントな知見を持ちませんが、自らが接近できる範囲で、つまり(些か衒学的に、しかし論証を緩やかにとどめつつ)とりわけ西洋語をとっかかりにして、この言葉が持つ実態に接近することはできるでしょう。

言葉で遊ぶのは実証性を欠く、という言明が、私たちが言葉によらずして「実証的」な

もっとみる
【261】イタい鼻うがいから「勘所」を押さえることの難しさへ

【261】イタい鼻うがいから「勘所」を押さえることの難しさへ

ちょっと必要があって鼻うがいをしたのですが、激痛が走りました。

その体験から。

※この記事は、フランス在住、西洋思想史専攻の大学院生が毎日書く、地味で堅実な、それゆえ波及効果の高い、あらゆる知的分野の実践に活かせる内容をまとめたもののうちのひとつです。流読されるも熟読されるも、お好きにご利用ください。

※記事の【まとめ】は一番下にありますので、サクっと知りたい方は、スクロールしてみてください

もっとみる

【95】【2万字】横顔は、英語で言えばprofile

プロフィールを書きます。ショートver.(≒プロフィール)とロングver.(≒来歴)があり、後者が前者を大幅に補完します(が、後者については長いと感じられる方もいらっしゃるはずので、興味のある人のみどうぞ)。当然のことですが、どちらにも(致命的でない範囲で)嘘が含まれます。隠す部分や大げさにする部分が含まれます。皆様のプロフィールや自己紹介と全く同じように。

★ショートver.(約1000字)★

もっとみる
【257】chanceの語源:サイコロ、ぼた餅、主体性

【257】chanceの語源:サイコロ、ぼた餅、主体性

大学受験の水準で言えば、chanceという語を見たら、単なる「好機」「幸運」ととらえるのではなく、中立的な意味での「偶然」や中立的な意味での「可能性」といった意味も持つよね、ということまで抑えておけば十分かもしれませんし、恐らく。

とはいえ、常々私が思っているのは、勉強であれいわゆる実学であれ芸事であれ何であれ、意味の広がりをできる限り広く把握して自分なりの理屈をつけておくことが物事を覚え・身に

もっとみる
【239】「火の取り分」を決めることで、燃やしてはならぬものが見えてくる

【239】「火の取り分」を決めることで、燃やしてはならぬものが見えてくる

簡単には消し止められない火事があると、私たちは消防車が水を撒くことに期待するものだ、と言えるかもしれません。

とはいえそれは、もちろん歴史上ごく最近にできた期待であって、かつては必ずしもそうではありませんでした。

そんなことをとっかかりにして。

※この記事は、フランス在住、西洋思想史専攻の大学院生が毎日書く、地味で堅実な、それゆえ波及効果の高い、あらゆる知的分野の実践に活かせる内容をまとめた

もっとみる