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インターン記者の記事

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月に吠えるのインターン記者たちが企画~取材・執筆まで手掛けた記事です。
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記事一覧

太宰治は入水自殺の3ヶ月前に絶景を見て何を思ったか?文豪たちが愛した熱海とエピソード

太宰治は入水自殺の3ヶ月前に絶景を見て何を思ったか?文豪たちが愛した熱海とエピソード

 東京から新幹線で約1時間、海と山と食とが楽しめる絶好の観光地・静岡県。熱海、伊豆、浜松、富士と有名な観光地がたくさんあります。

 そんな静岡県は、文豪たちと馴染みが深いのです。今回は、品川駅から新幹線で約30分と東京からほど近い「熱海」をピックアップし、熱海でひと時を過ごした文豪たちをご紹介したいと思います。

太宰治 太宰が書いた『走れメロス』の元ネタをご存じでしょうか。

 作家・檀一雄は

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料理は人生そのもの!?レシピを超えたレシピ本「亡命ロシア料理」

料理は人生そのもの!?レシピを超えたレシピ本「亡命ロシア料理」

 例えば、とあるきっかけで素敵な人に出会い、話してみるとその内面にも惹かれ、いつの間にかその人のことしか考えられなくなる。一目惚れとは大体そんな感じであり、それは書店で本を買うときなんかにも起こり得る。少なくとも私はそういう体験をした。

 「亡命ロシア料理」。シンプルながらもインパクトがあるタイトルで、何が書かれているのか興味をそそる。表紙には、美味しそうというよりは何をどう調理したのか全く分か

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全てが規格外…陸上界伝説の男に迫った『一投に賭ける 溝口和洋、最後の無頼派アスリート』

全てが規格外…陸上界伝説の男に迫った『一投に賭ける 溝口和洋、最後の無頼派アスリート』

 陸上界伝説の男「溝口和洋」をご存じだろうか? 槍投げの日本記録保持者でありながら、何とも型破りな男であり、彼を語るエピソードには事欠かない。例えば……

 実績や人気、パンチのある人間性や逸話など、全てが規格外の男であり、陸上界全体に与えた影響も計り知れない。そんな彼の伝説をつづったのが、ノンフィクション作品『一投に賭ける 溝口和洋、最後の無頼派アスリート』だ。

 この本は、『日本の路地を旅す

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作家兼登山家、深田久弥と『日本百名山』の魅力

作家兼登山家、深田久弥と『日本百名山』の魅力

 深田久弥(1903~1971年)という作家をご存じだろうか。1903年生まれ、小林秀雄や堀辰雄と同世代である。山岳随筆の大家として知られ、作家だけでなく登山家としても活動した。

 代表作は『日本百名山』。この本は日本の登山界に百名山ブームを巻き起こし、現在でも中高年の登山者を中心に大きな影響を保っている。登山をする人で百名山を知らない人はいない、と言っても過言ではない。

 だが山に興味がない

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あなたの短歌が皇室で披露される?新年に開催される「歌会始」とは

あなたの短歌が皇室で披露される?新年に開催される「歌会始」とは

 見覚えのある方も多いのではないでしょうか。歌人の岡本真帆さんがSNSで発信すると、人々の関心を集め、瞬く間に「いいね!」が集まりました。SNSが普及した今、自分の思いを31字で気軽に発信できる表現方法として、改めて短歌に注目が集まっています。

 短歌を披露する場として歌会が開催されることがありますが、その中でも伝統的なイベント「歌会始(うたかいはじめ)」が毎年1月、新年に行われています。歌会始

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芥川龍之介『煙草と悪魔』から考える、耳への種の収納方法

芥川龍之介『煙草と悪魔』から考える、耳への種の収納方法

 朝の通勤電車、運よく座席に腰を下ろすことができた。昨日の睡眠不足を解消しようかと思ったが、次の駅でおばあさんが乗ってきたので、勇気を出して席を譲る。物珍しそうに筆者を観察しながら、「ありがとうねえ。優しい子だねえ」と目を細め、「お礼にこれをどうぞ」と筆者の手のひらに「何かの植物の種」を乗せた。

 突如として見知らぬおばあさんから「何かの植物の種」をもらった筆者。その場で振り払うわけにもいかず、

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よくわからないものが登場する小説3選

よくわからないものが登場する小説3選

 突然ですが、みなさんは最後に「?(はてな)」が残る小説はお好きでしょうか?

 例えば、ルイス・キャロル作「不思議の国のアリス」のチェシャ猫は物語の中で最高クラスにわけがわからないキャラクターですし、夢野久作の代表作「ドグラ・マグラ」は物語自体の正体がわからない作品です。

 筆者はこのような、明らかにならない存在が登場する物語に、妙な趣を感じてなりません。あれはなんだったのだろうと考えているう

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現代の絶滅危惧種?ある文芸評論家の”書生”をしていた青年の数奇な半生

現代の絶滅危惧種?ある文芸評論家の”書生”をしていた青年の数奇な半生

 「書生」をしていたという人に会った。この平成の世においてである。

 浪漫派の作家・泉鏡花は尾崎紅葉の書生をやっていた。私小説作家・藤澤淸造も斎藤隆夫という弁護士の書生であった。しかしそれらは明治の話である。

 そんな21世紀において絶滅危惧種である職業の経験者は、世希哲(せきさとる・筆名)さん、47歳。彼は某文芸評論家の書生を10年間やっていた。

君の住むところを確保しといたから 世希さん

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白塗りメイク、学生帽でライブ…アングラ文化を継承したバンド「フーテン族」の実態

白塗りメイク、学生帽でライブ…アングラ文化を継承したバンド「フーテン族」の実態

 アングラ演劇で知られる寺山修司の作品を彷彿とさせる、白塗りの妖艶なボーカル、それを取り巻く奇抜なメンバー。彼らは強烈なビジュアルと渋くて重厚なサウンドを兼ね備えているバンド、「フーテン族」だ。2024年2月には、「はっぴいえんど」や「裸のラリーズ」など伝説のロックバンドを輩出してきた渋谷B.Y.Gで初のワンマンを決行。

 数多のバンドが乱立する中、明らかに異彩を放っているフーテン族。彼らの独特

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本を買うとき文庫本派?単行本派?アンケートを取ったら共感と発見ばかりだった

本を買うとき文庫本派?単行本派?アンケートを取ったら共感と発見ばかりだった

 筆者は断然、文庫本派だった。本屋へ行くと真っ先に文庫本コーナーに向かう。書店員の書いたポップを眺めつつ、惹かれた一冊を手に取る。背表紙のあらすじを読んで、「うん。やっぱり面白そう」。小さくて持ち運びしやすいし、価格も単行本に比べれば求めやすい。

 しかし、筆者は今、単行本派に傾こうとしている。きっかけは半年前に始めたバイトだ。今までのバイトより時給が高くて、筆者は貧乏大学生からプチリッチ大学生

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ポアロ、ホームズ、金田一耕助……推理小説のような名探偵は本当にいるのか?現役の探偵に聞いてみた。

ポアロ、ホームズ、金田一耕助……推理小説のような名探偵は本当にいるのか?現役の探偵に聞いてみた。

 シャーロック・ホームズやエルキュール・ポアロ、金田一耕助など、物語の世界には数多くの名探偵が存在する。誰もが見落とすようなことに気づく着眼点で疑問を抱き、その推理力で瞬時に謎を解き、犯人を追いつめていく……そんな名探偵は実在するのだろうか? 疑問を解決すべく、取材を敢行した。

 協力いただいたのは、今まで数十社の探偵社の立ち上げを手掛け、自身も探偵事務所を運営するSさんだ。

ホームズのような

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世界チャンピオンから作家へ転身したボクサー、ホセ・トーレス プエルトリコの英雄と呼ばれた男の半生

世界チャンピオンから作家へ転身したボクサー、ホセ・トーレス プエルトリコの英雄と呼ばれた男の半生

 プロボクサーの”モンスター”こと井上尚弥による2階級・主要4団体での王座統一や、”神童”と呼ばれたキックボクサー・那須川天心の転向など、ボクシング界に注目が集まっている。

 ボクシングに関する本と言えば、沢木耕太郎が悲運のボクサー・カシアス内藤の半生を描いた名著『一瞬の夏』や、百田尚樹がファイティング原田とライバルたちの激闘を描いた『黄金のバンタムを破った男』、マイク・タイソンによる自伝『真相

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手づかみで食事、全身タイツでバク転…”日芸”こと日本大学芸術学部の日常もなかなかカオスなんです

手づかみで食事、全身タイツでバク転…”日芸”こと日本大学芸術学部の日常もなかなかカオスなんです

 東京藝術大学は日本最高峰の芸術家の卵が集うことで有名な学び舎。『最後の秘境 東京藝大 天才たちのカオスな日常』は、藝大卒の奥様を持つ作家の二宮敦人先生が、5年間に渡り東京藝大を取材してできた探訪記です。

 藝大生として過ごすのに一体どれだけのお金がかかるのか、その先にある進路はどうなのか。彫刻と工芸は実用性の有無で芸術か、そうでないかが決まるのか、など。面白いトピックに溢れていて、とても読み応

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芥川龍之介も悩まされた「視野をふさぐ半透明の歯車」の正体は片頭痛の前兆だった

芥川龍之介も悩まされた「視野をふさぐ半透明の歯車」の正体は片頭痛の前兆だった

 雨の日は決まって頭痛におそわれる……そんなことありませんか? それ、もしかして片頭痛じゃないでしょうか?

 日本人のおよそ8%が片頭痛持ちで、更にその内の20~30%に「閃輝暗点(せんきあんてん)」と呼ばれる前兆症状があらわれると言われています。「閃輝暗点っていったいなに?どんなもの?」と思った方、以下の文章を読んでみてください。

 これは、芥川龍之介が晩年に執筆した私小説的作品『歯車』から

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