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【エッセイ】敵のいない生活に慣れよ
今年大学を卒業してから、どうも日々の生活にハリがなくなったように思われた。
そこで少々うーんと考えてみたところ、これは僕の周りから敵がいなくなってしまったからではないか?という結論に至った。
思えば僕は、思春期以降なにかと他者に敏感で、表には出さないが常に義憤に駆られ反発心に燃えていた。
そのため敵を作るのを厭わないところがあり、そうした敵の存在は僕の生活にそれなりの(時には耐え難い)ストレスを与
【小説】正しさは要らない。優しい嘘を
僕が中学に入学した頃、とにかく野球部にだけは入りたくないと思っていて、卓球部に体験入部したけどグラウンド5周がキツくてやめた。僕の隣で、友人の大町が僕と同じく肩で息をしていたが、後日そいつは吹奏楽部に入るからお前もどう?と言ってきた。まんまとその誘いに乗った僕は、そのせいで就活もせずに音楽家を目指すことになり、対する大町は2019年夏に死ぬことになる。彼の葬式の日、高校の同級生と思しき人は誰もいな
もっとみる【小説】神になりたい
Zeusへ
僕は、昔から色々なことを考えながら育ってきた。幼稚園児の頃、朝のクラスで同級生の黒人に虐められない方法を考えた。小学生の頃、日当たりの良い廊下で人間の生きる意味を考えた。中学生の頃、冬のアスファルトで自分がどんなに愚かだったかを考えた。高校生になり、このつまらない世界で自分がどう抵抗できるかを考えた。大学生になり、だだっ広いキャンパスで自分が何者なのかを考えた。
高校生の頃から薄々