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花畑お悩み相談所 プロローグ 

花畑お悩み相談所 プロローグ 

プロローグ

 寝る前にスマホを見ないのは、良い眠りのためのお約束だそうだ。
 そう言われましても。若い頃からずっと夜型で、寝室へ向かう前に最後のメールチェックをしてしまう。退職した今でも、その習慣は変わらない。富原律子は老眼鏡をかけると、スマホの画面をタップする。
 深夜のリビングに、かすかな金属音が届く。家の前の空き地に、マンション建設が始まっていて、今夜は突貫で電気工事をすると知らされていた

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【#創作大賞2024】骨皮筋衛門「第一章:我が名は骨皮筋衛門」(2252字)

【#創作大賞2024】骨皮筋衛門「第一章:我が名は骨皮筋衛門」(2252字)

第一章「我が名は骨皮筋衛門」

帳面町の犯罪発生率約0%。

この驚異的数字はある男の活躍により達成した数字である。その男の名前は骨皮筋衛門、令和のヒーローと呼ばれる潜入捜査官だ。首都東京から遠く離れた帳面町は元々のどかな地方都市であったが、骨皮家がこの地を支配するようになってから犯罪が極端に減った。

骨皮家は悪を憎み平和をこよなく愛する一族である。平民という立場でありながら時の権力者の懐刀とし

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【小説】パン屋 まよなかあひる(1)蘇るメロンパン

【小説】パン屋 まよなかあひる(1)蘇るメロンパン

第1話 蘇るメロンパン

 あーもう死んじゃお、って闇みたいな海に飛び込んでやるつもりだったのに、気がつくと猫のあとを追っていた。
 猫は、私がボストンバッグの中身を逆さまにしてざらざらと海に流していたら、いつの間にやら隣に座っていた。何かを待ち構えるように煌々と黄色い目を光らせて、残りは全て夜闇に紛れてしまいそうな黒猫。
「君も死にたいの?」
 話しかけてみるけれど、もちろん答えはない。まあ、死

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夢と鰻とオムライス 第1話

夢と鰻とオムライス 第1話



 飛んできたのは五百円玉だった。
 よりによって一番攻撃力の高そうな硬貨の側面が、俺の眉間に命中したのだ。
 鋭い痛みが目頭から眼球の裏へと伝わり、泣きたくもないのにじわりと涙が滲んだ。
「いってぇ……」
 俺は両手で目を覆い隠した。痛みのせいで勝手に湧いてきた涙をそれとなく拭って、顔を上げる。

「なにすんだよ!」
 渾身の力を込めて睨みつけると、ほんの一瞬だけ、兄はうろたえた表情を見せた

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【第一話】探偵は甘すぎる~固めプリンにJKクッキーを添えて~

【第一話】探偵は甘すぎる~固めプリンにJKクッキーを添えて~

【あらすじ】
「お父さんの浮気の証拠をつかんでほしいんです!」
朝日野探偵事務所は昭和の匂いのする雑居ビルの二階にひっそりと存在している。
そんな探偵事務所にやって来た訳アリ依頼人は、可憐な女子高生の吉津玲香だった。彼女の健気さに絆された探偵は、手作りクッキーで依頼を引き受けることに。
すでに二度目の成人式を終えた探偵朝日野譲治とその助手、月影静佳。
秀麗な見た目の探偵は拳で、筋肉マッチョな大男の

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小説★アンバーアクセプタンス│序章

小説★アンバーアクセプタンス│序章

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序章

少年アンバーと夜空ストロー

 地球の西暦は二〇四六年。
 宇宙暦? そんなSF映画みたいな年号は使わない時代のお話。

 ★

 戦前も戦後も地球の人たちの対立構造はそう変わらないようだ。だけど宇宙船・飛車八号の船内コロニーでは、基本的にみんな仲良くなれる環境が保たれていた。特にぼくの通う学習センターと付近の地区は治安が良い。本船が鹿児島から打ち上げられた二〇四二年以降

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「一泊二日」 第一話

「一泊二日」 第一話

  ◇

 頭にきた。もうあんな男とは別れてやる。
 電話を切ってから、一時間近く経つのに、この腹立たしさが収まる気配はない。気がつけば、ベッドに座ったまま、膝の上で、ずっとこぶしを握りしめていた。開いてみると、手のひらにはじっとりと汗がにじんでいる。私はティッシュペーパーを一枚引き抜き、手を拭く。それをグシャグシャに丸め、ゴミ箱めがけて投げ入れようとしたが、角に当たってポロリと落ちてしまった。何

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花畑お悩み相談所 第一話 

花畑お悩み相談所 第一話 

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悠人からのメール(1) 赤いスカーフの女

 紅子はカゴを抱えて歩きます。小さな頃は重かったものが、もうすぐ十三になろうという今は、片手で持ってスキップでもできそうでした。
 けれどもそんなことはしません。中には、おばあさんに届けるケーキとワインが入っているから、揺らさないよう、石につまづいたりしないように気を配りながら山道を行きます。
 真っ赤なスカーフで顔を巻き、真

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【連載小説】「北風のリュート」第1話(#創作大賞2024/#ファンタジー小説部門)

【連載小説】「北風のリュート」第1話(#創作大賞2024/#ファンタジー小説部門)


第1話:遠いうねり
 
 そこは世界の蝶番のような場所だった。
 東と西の大地の深くえぐれた裂け目は、太古の昔に一頭の巨大な龍がつけた爪痕だと伝えられている。底なしの谷から唸り声をあげて天へと疾風が舞い上がるのを風の龍と呼んでいた。竜巻と呼ぶものもいる。
 七の新月の夜になると羽毛のような雪が降り始める。
 北風がその大いなる翼で大地と地に棲む人々を翻弄するころ、北風に乗ってやってくるものがいた

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言の葉ノ架け橋【第1話】

言の葉ノ架け橋【第1話】

第1話 かけはし
まだ夏は遠いけど、紫外線の強くなる季節。
首元に日焼け止めクリームを丹念に塗り込んでいると、「希生先生、希生先生」と庭から優しい声で呼ばれて慌てて振り返った。

「ヨウちゃん、そんなところにいたの。びっくりさせないで」
「希生先生、いそがんと学校に遅れるよぉー」

私はふぅと息を吐き、手の甲にもクリームをたっぷり塗り込んだ。
「サチ祖母ちゃんの声マネするのいい加減やめて欲しいわ。

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残夢【第一章】①手錠

残夢【第一章】①手錠


女は髪を振り乱して俺から逃れようともがく。手首は白くて折れそうに細い。
俺はそのコートから伸びでた手首を素早く掴んで捻りあげ、女がそれ以上抵抗できないようにブロック塀に体を押し付ける。

「イヤッ……」

小さく息を漏らした女のおくれ毛は汗ばんだ頬に張り付き、思うように身動きの取れなくなった上半身を必死に動かし振り向こうと再び藻掻く。

抵抗しても無駄だ。
俺は必要最小限の力を込め女にそれ

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白雪美香は彼氏ができない!_第1話

白雪美香は彼氏ができない!_第1話



プロローグ

「はぁ、はぁ、はぁっ」

白雪美香は、ぽっちゃりとした白く柔らかな肉体を揺らしながら、福岡市のセントラルパークと言われる大濠公園を走っている。

5月中旬の福岡は夏日になることもあり、今日の気温は25度を超えていた。気温が上がることは白雪美香もわかっていたが、ここまで暑くなるとは予想だにしていなかった。もう夏じゃないか、と白雪美香の荒い呼吸の中にため息が混じる。今更ながら厚手の服

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エロを小さじ1 《最終話》

エロを小さじ1 《最終話》

《最終話》そしてハッピーエンド?

「和牛のたたき」
「おこぜの唐揚げ」
 池上貴明が予約してくれた小料理屋の、木の温もりのある個室に座ると、貴明と春香はメニューを覗き込み、次々と料理を選んだ。
「おくらの天ぷら」
「おっ、それ、僕も食べたかったんだ。あとは季節の野菜の炊き合わせ」
 食の好みが似ている。そんな男と料理を選んでいるだけで、春香の心は踊った。
 食べ物の趣味が合う人と向かい合って座る

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