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映画ラブ

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素人の映画感想文的な何かです。
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2023年1月の記事一覧

映画『娼年』

映画『娼年』

 子供の頃、寿司というと干瓢巻といくらしか食べられなかった。だから寿司屋ではずっとそのふたつをリピートしていた。試しにこれを食べてごらんと両親に言われても頑なに拒んだ。マグロだってウニだって、そんなものはみんな美味しいわけがないと思っていた。なぜ大人たちがそんなものを美味しそうに食べているのか理解出来なかった。 
 1学年上がるごとだったかどうか覚えていないが、いつの間にかマグロもウニも好物になっ

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映画『余命10年』

映画『余命10年』

 終幕がいつやって来るのか大半の人は知らずに生きている。それは終わりがない物語と一緒だ。つまり人々は永遠を生きていると思っている。目指すべきゴールなどどこにも見えないから、つまらない毎日をただ消化することや、カレンダーを埋めることに時間を費やしてしまう。いずれやってくる終わりの時が遠くにあるほど今の時間の希少性は下がることになるからだ。

 20歳の人の平均余命は男で60年、女で66年だという(※

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感情の一歩手前から

感情の一歩手前から

 喜怒哀楽と表される人の感情。
 そうした感情は、生理現象や身体的な感覚を起点とし情動を経て身体的な動作となることで表出される。
 何かを感じてから、それが例えば表情という顔の筋肉運動として表れるまでには複雑なプロセスと複数のステップを踏んでいるということだ。悲しいときに悲しそうな顔をするのは、考えてやろうとすると案外難しい。だからこそ俳優という職業が成り立つ。

 感情が湧き起こる発端となる部分

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ドラマ『ザ・グローリー ~輝かしき復讐~』NETFLIX

ドラマ『ザ・グローリー ~輝かしき復讐~』NETFLIX

 いくら道徳的に良くないと言ったところで、人間社会からいじめは無くならないだろう。
 いじめは、強者が弱者に対して行うゲームの一種であり暇潰しでありストレス解消の手段だ。人間が公平平等なんていうのは理想家の妄想で、実際には不公平で不平等なのは誰でも分かっているはずだ。
 そしてもっと興味深いのは、強者の中にも強者と弱者がいるし、弱者の中にも強者と弱者がいる。つまり、いじめの対象になる人はどこにでも

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映画『チャタレイ夫人の恋人』NETFLIX

映画『チャタレイ夫人の恋人』NETFLIX

 本当の恋愛が何なのかを語るのは案外難しい。
 愛し合っていたはずの人同士が憎み合ったり罵り合ったりすることは間々あることだし、永遠の愛を誓ったはずなのに離婚する羽目になることも良くある。ではそれらの愛は本物で無かったのかというと、当人の感覚ではそうでもない。あの時は本当だったというのが本音ではないだろうか。
 時が移ろうのと同じ位、人の心も恋愛感情も変化して行くものだ。もちろんそんなことは信じた

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映画『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(Avatar: The Way of Water)

映画『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(Avatar: The Way of Water)

 契りを交わして集団のボスと親子関係になる。同じグループの仲間とは兄弟関係になる。私が知る限りそんな風習を残しているのはヤクザだけだ。そのヤクザですら生存の危機にさらされている。

 家族という枠を超えた大きな集団に属することで生命の営みが行われる、それが定住社会の共同体のあり方だった。そこでは、家族同士は緩やかに混ざり合い、協同して共同体の利益の為に働き、子供たちは全員が共同体の兄弟として、次世

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ドラマ『今際の国のアリス』 NETFLIX

ドラマ『今際の国のアリス』 NETFLIX

 夜明け間近の浅い眠り、レム睡眠の短い時間で人は夢を見るという。いつ終わるかと思うような長い夢でも実際には瞬くほどの時間に過ぎないようだ。

 先が見えない人生に、つまらない説教。言われなくても分かっていることこそ言われれば腹が立つ。無駄に過ごしていることは自覚していても、どうしたら良いのか分からない。正解を探す程に正解は遠ざかっていくものだ。

 世の中の不条理は時に合理をもろともせず、理不尽な

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