田口まこ

フリーのコピーライター ふと口から出た言葉、耳にした、目にした言葉へのちょっとした思い…

田口まこ

フリーのコピーライター ふと口から出た言葉、耳にした、目にした言葉へのちょっとした思いを書いていきたいです。 でも、時々はそうじゃないことも書くと思います。 著書:「短いは正義」(ダイヤモンド社)、「伝わるのは1行」(かんき出版)

記事一覧

上から脱ぐか、下から脱ぐか、あなたはどっち

脱衣所で思う、上か下か。 うちの近くにちょうどいい規模の健康ランドがあり、1週間に1度は行って、炭酸風呂やサウナを満喫している。行った日は、朝までぐっすり眠れる…

田口まこ
2週間前
8

昭和の小学生、半ドンのお昼ごはん

土曜日の午後、喜びも悲しみもお昼ごはん次第 私が小学生のとき、土曜日は休みではなく4時間目まで授業があった。そんな、昼までの授業や仕事のある日を半ドンと言ったの…

田口まこ
1か月前
14

入学式と、父の眉間の深いシワ

私の父はやっかいな人だった 20年ほど前に亡くなった私の父は、とてもやっかいな人だった。傲慢で自分勝手でワガママで、でもどこか可愛げがあるので憎みきれないというか…

田口まこ
1か月前
11

その「貫禄」、「落ち着き」は、疲れ?

いくつになっても「貫禄」というものが身につかない。何十年もコピーライターとして働いているが、ベテランという言葉が本当に似合わない。存在に重みがなく、フワッと軽い…

田口まこ
2か月前
15

東京マラソン沿道で出会ったモンクレママ友グループに、熾烈という言葉が浮かぶ

ママ友4人全員モンクレールのダウンコート きのうの午後、用があって銀座に行ったら、ちょうど東京マラソン真っ最中であった。スター選手はゴールした後で、市民ランナー…

田口まこ
2か月前
17

”荒れた唇は恋を失う”aikoの歌が聞こえる花粉の季節

失う恋は無いが、唇は荒れる 抜けるような青空の下、ビュービューと吹き荒ぶ北風に吹かれ花粉に塗れていると、aikoの歌が聞こえてきた。ような気がした。 特に失う恋はな…

田口まこ
2か月前
11

「明日やろうはバカやろう」を思い知る、確定申告

イヤなことが今日できない 事務仕事が嫌い。とことんやる気になれない。ずっとほったらかし。なので必然的に確定申告のこの時期になると、シクシクと泣きながら1年分の領…

田口まこ
3か月前
10

「らしく」と「くせに」はこの世から無くなるか

令和の学校は、ジェンダーバイアスを無くしつつあるらしい ジェンダーバイアスを無くすために、学校で「女らしく」や「男らしく」という言葉を使わないなどの取り組みが進…

田口まこ
3か月前
11

我こそは!と前向きに

マーメイドラインのウエディングドレスに武士道精神を見た 少し前、結婚式場の仕事をさせていただいた。そのときに、ウェディングドレスを見せてもらう機会があった。どれ…

田口まこ
3か月前
15

「生きてる」と「死んでない」の違いって

中国のおばあさんの言葉にうなずく 去年のことだが、テレビで”月曜から夜更かし”を見ていたら中国ロケをしており、どこかの公園にいた痩せたおばあさんが「長生き?もう…

田口まこ
3か月前
14

オムツをはきこなす

フェスでオムツは便利らしい ありがたいことに、30年以上コピーライターの仕事をさせていただいている。ずーっと化粧品が仕事の中心で、これはこれで大好きな分野なのでう…

田口まこ
3か月前
20

「バーキン買うなら豊胸しろ」というコピーを見たが

ごめんなさい。私ならバーキンを買います。 高速を走っていてふと窓の外を見たら、ビルの谷間に「バーキン買うなら豊胸しろ」と書かれた美容整形を呼びかける大きな看板が…

田口まこ
3か月前
44

主人、旦那、夫どれもしっくりこないのだが

結婚して何十年も経つが、いまだに人と話しているときにこの相方のことをなんと称していいのかわからない。これについては非常に困っている。 まず、「主人」は絶対にない…

田口まこ
3か月前
25

「くだらない」は悪くない

「くだらない」の後ろには肯定文がつけられる 先週、小泉今日子さんがバラエティを「くだらない」と言ったことが話題になっていた。賛否両論さまざまな意見があったが、わ…

田口まこ
4か月前
13

アウトオブ眼中と言ってしまった

そのとき、わたしは死語の世界に沈んだ。 それは、オンラインで仕事の打ち合わせをしているときだった。 わたしは、「そのアイテムはアウトオブ眼中だったよー」と、なん…

田口まこ
4か月前
8

余計なお世話なのよ、老人向けのバナー広告

施設に入っている89歳の京都の母と電話する。 「元気?」と聞くと「元気やで」と必ず言う。 「毎日黙ってても、ごはんは3食食べさせてもらえるし、 掃除も洗濯もせんでえ…

田口まこ
2年前
14
上から脱ぐか、下から脱ぐか、あなたはどっち

上から脱ぐか、下から脱ぐか、あなたはどっち

脱衣所で思う、上か下か。

うちの近くにちょうどいい規模の健康ランドがあり、1週間に1度は行って、炭酸風呂やサウナを満喫している。行った日は、朝までぐっすり眠れる。睡眠の質を高めるためには、炭酸風呂が一番ではないかと思う。
そんなことで、このゴールデンウィークも何回かお風呂でダラダラしてきたのだが、そこで、前から気になっていたことがやっぱり気になった。
それは、実にどうでもいいことなのだが、着衣を

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昭和の小学生、半ドンのお昼ごはん

昭和の小学生、半ドンのお昼ごはん

土曜日の午後、喜びも悲しみもお昼ごはん次第

私が小学生のとき、土曜日は休みではなく4時間目まで授業があった。そんな、昼までの授業や仕事のある日を半ドンと言ったのだが、週休2日制のいま、その言葉はもう絶滅したのだろうか。ところで、半ドンのドンって何だろう?
それはさておき、土曜は給食がなくみんな家に帰ってお昼ご飯を食べた。私は小さな頃から寝起きが悪く、いつまでも布団の中でぐずぐずしているので、いつ

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入学式と、父の眉間の深いシワ

入学式と、父の眉間の深いシワ

私の父はやっかいな人だった

20年ほど前に亡くなった私の父は、とてもやっかいな人だった。傲慢で自分勝手でワガママで、でもどこか可愛げがあるので憎みきれないというか。例えていうなら、故・石原慎太郎さんに近い・・・かもしれない。テレビでお見かけすると、傍若無人な物言いに少し父を思いだしたりした。

父との思い出は、いいことも悪いこともたくさんあるのだが、この時季になると小学校の入学式を思い出す。

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その「貫禄」、「落ち着き」は、疲れ?

その「貫禄」、「落ち着き」は、疲れ?

いくつになっても「貫禄」というものが身につかない。何十年もコピーライターとして働いているが、ベテランという言葉が本当に似合わない。存在に重みがなく、フワッと軽い。

存在が重々しい人は、口も重い。打ち合わせなどで、重々しい人がたまに発する一言は周りをハッとさせ、なるほどーと唸らせる。
しかし、私のようなお調子者は口を閉じていられない。ペラペラとしゃべると言うが、まさに発する言葉が紙のごとし。あー軽

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東京マラソン沿道で出会ったモンクレママ友グループに、熾烈という言葉が浮かぶ

東京マラソン沿道で出会ったモンクレママ友グループに、熾烈という言葉が浮かぶ

ママ友4人全員モンクレールのダウンコート

きのうの午後、用があって銀座に行ったら、ちょうど東京マラソン真っ最中であった。スター選手はゴールした後で、市民ランナーの皆さんが楽しそうに走っていた。沿道は応援の人で賑わっていた。
その中に、小学1年生くらいの子どもを連れたママ友4人組の姿があった。この中の誰かの夫が走っているのだろうか。それはまあどうでもいいのだが、そんなことより、4人とも着ているのが

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”荒れた唇は恋を失う”aikoの歌が聞こえる花粉の季節

”荒れた唇は恋を失う”aikoの歌が聞こえる花粉の季節

失う恋は無いが、唇は荒れる

抜けるような青空の下、ビュービューと吹き荒ぶ北風に吹かれ花粉に塗れていると、aikoの歌が聞こえてきた。ような気がした。

特に失う恋はないが、唇が荒れる季節がやってきたのだ。

そう、花粉症のせいで鼻の下から唇にかけて荒れまくる季節が。鼻をかみすぎて荒れるということもあるが、花粉の時季になると唇が赤く腫れて皮が剥ける。これはつらい。

唇にハチミツ

しかし、思えば

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「明日やろうはバカやろう」を思い知る、確定申告

「明日やろうはバカやろう」を思い知る、確定申告

イヤなことが今日できない

事務仕事が嫌い。とことんやる気になれない。ずっとほったらかし。なので必然的に確定申告のこの時期になると、シクシクと泣きながら1年分の領収書をパソコンに打ち込まなければいけないのだ。毎年思う、せめて1ヶ月分ずつやっておけばと。
他のことは、割とマジメにきちんとやっている。小心者なので、仕事の締め切りは破ったことがない。人との待ち合わせにも遅れない。でも、苦手な事務仕事はつ

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「らしく」と「くせに」はこの世から無くなるか

「らしく」と「くせに」はこの世から無くなるか

令和の学校は、ジェンダーバイアスを無くしつつあるらしい

ジェンダーバイアスを無くすために、学校で「女らしく」や「男らしく」という言葉を使わないなどの取り組みが進められているそうだ。良いことだと思う。

私は両親から「女らしくしなさい」とか「女のくせにみっともない」などと言われた記憶が無い。これには感謝している。
小学生の頃から格闘技を見るのが好きで、当時は毎週テレビで放送されていたプロレスやボク

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我こそは!と前向きに

我こそは!と前向きに

マーメイドラインのウエディングドレスに武士道精神を見た

少し前、結婚式場の仕事をさせていただいた。そのときに、ウェディングドレスを見せてもらう機会があった。どれも白く輝き、晴れの日を飾るにふさわしい美しいドレスばかり。
中でも一際目を引いたのが、マーメイドドレスと呼ばれる、体にピタリと張り付いてボディラインを見せつけるドレスである。背中が大きく開き、胸元もグンと強調、キラキラとまばゆいばかりの、

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「生きてる」と「死んでない」の違いって

「生きてる」と「死んでない」の違いって

中国のおばあさんの言葉にうなずく

去年のことだが、テレビで”月曜から夜更かし”を見ていたら中国ロケをしており、どこかの公園にいた痩せたおばあさんが「長生き?もう、生きてるっていうより、死んでないだけだよ」と言って大笑いしていた。

さすが人生の達人は上手いこと言うなあ。「生きてる」も「死んでない」もどちらも生存しているという意味では同じなのだが、ふたつの言葉の間には深い深い溝がある。「生きてる」

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オムツをはきこなす

オムツをはきこなす

フェスでオムツは便利らしい

ありがたいことに、30年以上コピーライターの仕事をさせていただいている。ずーっと化粧品が仕事の中心で、これはこれで大好きな分野なのでうれしいことなのだが、もう少し新しい商品にも手を広げたい。これからを考え、できれば同年代やもっと上のシニアの皆さんに向けての商品、そう例えばオムツとか。

そんな話を、年下の同業者の友達にしていたら、「私はオムツをはいたことがあるよ。すご

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「バーキン買うなら豊胸しろ」というコピーを見たが

「バーキン買うなら豊胸しろ」というコピーを見たが

ごめんなさい。私ならバーキンを買います。

高速を走っていてふと窓の外を見たら、ビルの谷間に「バーキン買うなら豊胸しろ」と書かれた美容整形を呼びかける大きな看板があった。なるほど、バーキン1個分の値段で豊胸手術が受けられるのだなと納得し、キャッチーなコピーだなと感心した。わかりやすいし、何より記憶に残る。

だが、長い人生経験を経た今、もし、豊胸かバーキンかと迷っているお若い方に助言を求められたな

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主人、旦那、夫どれもしっくりこないのだが

主人、旦那、夫どれもしっくりこないのだが

結婚して何十年も経つが、いまだに人と話しているときにこの相方のことをなんと称していいのかわからない。これについては非常に困っている。

まず、「主人」は絶対にない。なんだろうこの上下関係が歴然とした嫌な言葉は。「主人」の対義語は、「主婦」「奥様」「家内」などらしい。どれも女の人は家にいることが前提の言葉である。それに、「主人」の対義語って、やっぱりどう考えても「使用人」だろうと思う。昔の言葉なので

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「くだらない」は悪くない

「くだらない」は悪くない

「くだらない」の後ろには肯定文がつけられる

先週、小泉今日子さんがバラエティを「くだらない」と言ったことが話題になっていた。賛否両論さまざまな意見があったが、わたしがまず感じたのは「くだらない」ものって悪くないよねということだ。

関西出身なので、小さい頃からテレビで大量のお笑い番組を見てきた。何しろ私の子どもの頃は、土曜日曜の午後は吉本新喜劇や漫才をはじめお笑い番組しかやっていなかったのだ。そ

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アウトオブ眼中と言ってしまった

アウトオブ眼中と言ってしまった

そのとき、わたしは死語の世界に沈んだ。

それは、オンラインで仕事の打ち合わせをしているときだった。
わたしは、「そのアイテムはアウトオブ眼中だったよー」と、なんの衒いもなく口にしてしまったのだ、とてつもない昭和死語を。
40代後半以降の人は、「わー、久しぶりに聞いた」と軽くウケたフリをしてくれたが、他の人々は無言であった。
知らないから。そんな言葉。
ここ10年くらいでいちばん恥ずかしかったー!

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余計なお世話なのよ、老人向けのバナー広告

施設に入っている89歳の京都の母と電話する。
「元気?」と聞くと「元気やで」と必ず言う。
「毎日黙ってても、ごはんは3食食べさせてもらえるし、
掃除も洗濯もせんでええし、結構な暮らしや。
楽しいことは何にもないけどな」と、これも必ず言う。
まあそうだろう。
6畳ほどの部屋で、テレビを見ているだけの毎日だ。
変化のない毎日は、さぞ退屈だろう。
コロナ感染が広がってからは、
私もなかなか会いに行けない

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