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文芸寄せ集め

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自分の記事の中から詩と掌編小説を寄せ集めました。
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#恋愛

掌編小説「隣りのお姉さん」

掌編小説「隣りのお姉さん」

読みかけの漫画雑誌が床に転がってる。ベットから落ちたらしい。

どうして漫画雑誌って転がるとああなるんだろう。
くたっとなって、背表紙だけオットセイのように浮き上がって、数ページがうねって折れる。

うんざりして床から拾い上げると、キラキラした男の子が目に入った。

ああ、この子。
既に読み終えていたので、その子の背景まで容易に頭に浮かべられる。

その子は中学生の主人公が憧れている、隣りに住んで

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よそゆきの自分を脱ぎ、一杯のコーヒーを飲む

よそゆきの自分を脱ぎ、一杯のコーヒーを飲む

コロナ禍である。
緊急事態宣言で様々なお店が閉まり、活動自粛を余儀なくされた私は、昼下がり、する事がないので近所を散歩していた。

世の中が大変なことになっているというからお化けが歩いているのかと思ったらすれ違うのは普通の人間で、半袖でも良いぐらいの陽気に空を見上げると、わさわさと揺れる緑色の街路樹の隙間から、青一色の空が広がっている。

世間と噛み合ってる、と思った。
生きている空、もわっとした

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詩)ふわりと夢を

詩)ふわりと夢を

ふわりと夢をみる
ふわりふわりと夢をみる

あなたは夢に出てこない
おかしいまだ寝てないのかしら
意識がそこに向かないの?

遠くに飛ばした風船を
取りに行くのとあなたが言った
細い手首のあなたなら
そのまま浮いて帰れると

くるりと宙を舞う
くるりくるりと立ち泳ぐ

黒くて長いあなたの髪が
ぐるんぐるんと渦をまく

目が覚めたら常に一緒
ゆらりゆらりと戯れる

詩)あなたの睫毛

詩)あなたの睫毛

あなたに要求したお願いが
何だか聞いた事がある内容で
何処かしら引っ張り出して探したら
椎名林檎の歌詞でした

そりゃーあーたしは綺麗とかああー美人なタイプではないけれどこっち向ーいーてー

腑に落ちて何回も聴いていたら
この曲を初めて聴いた時のはち切れんばかりの頬を
パチンと叩くような衝撃がありました

少女は大人になって
頬が削げ綺麗と呼ばれるようになったけれど
それがあなたの好みじゃなかった

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