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[ 言葉を埋めた夢の跡地 ]

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詩や小説などの創作物たち。
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#散文

私はあなたを知りたいのに、何も知らない。

私はあなたを知りたいのに、何も知らない。

あなたのこと知らないのに、勝手に知った気になってしまう。

わかる。

話を聞けばそう思わざるを得ない。

好きだからなのか、似ているからなのか、少なくとも嫌な気にはならないから。

私は、人の気持ちを勝手に汲み取って消化してしまう。

本当のところは、あなた以外誰も知らないのに、それでもわかったふりをする。

下手なアドバイスをする。無難に応える。

響いただろうか。役に立っただろうか。

私は

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「何もしたくない」と、「何かしたい」は、同じかもしれない。

「何もしたくない」と、「何かしたい」は、同じかもしれない。

「何もしたくない」

そう呟いた言葉が、空を舞った。

「本当に何もしたくない」

別に言葉を吐いたって、誰かから返答が来ることもない。

この小さな部屋で、私は嘆いているだけだ。

何もしたくないと言いつつ、スマホを触り、どこか、何か、と探している。

何かをしていない自分に、落ち着かないのだ。

「ゲーム飽きてきたなぁ…」と呟いきながら切った電源ボタンを、翌日また押してみる。

そして何となく

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小さい頃の夢は、現在停滞期。

小さい頃の夢は、現在停滞期。

小さい頃。私の将来の夢は「可愛いお嫁さん」になることだった。

28歳になって3日目の昼下がり。

手作りの弁当をつつく私はため息をついて、雲ひとつない空を見上げた。清々しいまでの青い色。

「こんないい天気なのに仕事してんの?」って太陽にも笑われている気がしてならない。

上村もと子、28歳。独身な上に今現在付き合っている人もいない。

そして実家暮らし。

しかし、3つ年の離れた妹は、20歳の

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未来は、わからないから面白いらしい。

未来は、わからないから面白いらしい。

昔の人が描いていた未来は、車は空を飛ぶし、高い場所に作られた道は建物に沿ってくねくねと曲線を描いており、さらには不思議な建物が立ち並んで複雑…さらには、そこら中に全身タイツを着た案内人がいる感じだった。

現実は、車は空を飛ばないけど、環状線とかはちょっとそれっぽいかな。新しいショッピングモールとか国立競技場とか、ビルとか、近未来的な建物と言えばそうかもしれないけど、さすがに全身タイツの人はハロ

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私の「人生」は、どこへ行ったの?

私の「人生」は、どこへ行ったの?

「お金持ちなんて大嫌い」だと皮肉ってる私が、友達の中では1番稼いでいます。

周りが遠くなるのを感じながら、「今の私が嫌いだ」と、はっきり言った友人を切り捨ててまで遊んだ、夜の友人との思い出の方が色濃く残っているからこれまた不思議なことです。

きっと周りは、決して綺麗なお金じゃなかったから、私の使うお金を嫌ったんだと思いました。

でも、私は「生きるためだ」と言い聞かせ、そして言い訳のよう

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SNSの渦の中に閉じ込められて。

SNSの渦の中に閉じ込められて。

ふと目が覚めた、午前3時。
まだ起きるのには早い時間。

そういえば、終電で帰ってきて、そのまま寝ていたと気づいたのは、5分後のこと。

二度寝をしようと思ったのに、どうしてだか全然眠くならない。

メイク落として、お風呂でも入ろうかと思ったけど、明日はお休み。という事実が何もかもを吹き飛ばしてくれた。

28歳の私のお肌には大ダメージかもしれない。でも動けそうにもない。

「別に1日くらい怠惰し

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ずっと、空っぽだったんだ。

ずっと、空っぽだったんだ。

「じゃあ、別れる?」

この単語が彼から出るのは、もう何回目だろう。

なんだかここ半年くらい、ケンカをするたびにその言葉が自然と出てくるようになった。しかも、些細なことで。例えば、時間に遅れてきたりとか、行く予定だったお店が閉まっていたとか。決まって彼が不機嫌になって、私はそれが嫌で指摘してしまう。

遅れた時に「もー遅いよー!」「ごめんごめん」とか、お店が閉まってたら、「お休みだったね」「残念

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将来なんかより、今が大事。

将来なんかより、今が大事。

眠たい。眠たい。眠たい。

先生の声は子守り唄のようだし、ノートに書き込むみんなの筆記音は、それを促しているかのような心地よいビートを刻んでいる。

学校生活も最後の年か。

まだ4月だというのに、新入生を歓迎する準備で盛り上がるものかと思ったが、現実は受験モードで気が重い。

学校でもお家でも、1に勉強、2に勉強だ。

将来どうなりたいかなんて、まだわからないのに。なんだったら、私が大人になるま

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