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短歌・詩・俳句

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短歌・詩・猫を中心とした川柳などを掲載しています。
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#詩

自己嫌悪

自己嫌悪

どうでもいいことを
ふと思いついたりするもので、
この間
通勤の帰り道、
ほとんど信号にかからずに
スイスイと帰れたことがあった。

それで、ふと
通勤の道には
幾つ信号があるだろうと
考えてみたのだった。

片道25キロの自動車通勤。
混んでいなければ40分くらいだろうか。
混んでいれば1時間ちょっとかかる時もある。
途中、信号のないバイパス道路を走るので
そんなに信号が多いわけでもない。

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キャベツの千切り

キャベツの千切り

好きな食べ物ですか?

梨ですかねえ。
そう、そう、他にも
タケノコ
蒟蒻
もやし
レンコン
そら豆
鰯のつみれ
アサリの味噌汁
ネギぬたで食べる白いご飯。
里芋をふかしたの。
つるっと皮をむいて
塩味で。
キュウリを味噌で
まるかじり、
とか。

千円以上する食事に
限りなくビビッてしまう、
我ながら情けない
貧乏性・・。

そうそう、
お金のなかった学生時分の
350円の薄いトンカツの定食。

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雨

雨の降る日は
さびしくて
あなたに会ひに
ゆけません

雨は嫌ひでないけれど
あなたに会ひに
ゆけません

雨がやんだら
大好きな
あなたに会ひに
ゆきませう

いくつもいくつも
水たまり
とびこえとびこえ
ゆきませう

わたしはあなが
好きですが
うまくあなたに
言へません

とってもとっても
好きですが
うまくあなたに
言へません

雨はまだまだ

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直角ばあさん

直角ばあさん

学生のとき
合宿で泊まった民宿に
おばあさんがいた。
人のいい
世話好きな、
いつもにこにこしている
おばあさんだった。

腰が90度に曲がっていたので
仲間のひとりが
直角ばあさん
と、おばあさんを綽名した。
・・親しみを込めて。

直角ばあさん

昔は今と比べて
栄養状態も悪かったから
そう言われて
思い返してみると
身近にたくさん
いたようにも思う。

僕のおばあちゃんも
直角ばあさん
だっ

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焚き火

焚き火

もう20年も前の話である。

ある時、新しいメールアドレスを作った。脳に余裕のない僕は、たいてい自分のあだ名である「土竜」をアドレスに使うのだが、同じように脳に余裕のない人はたくさんいるようで、土竜も、土竜くんも、土竜さんも、土竜ちゃんも、土竜はんも、みんな既に使われてしまっていて、使えない。数字と組み合わせればいいのだが、それも味気ないので、半分いい加減に「土竜が海を見ている」と打ち込んだら、さ

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第32話:命の摂理

第32話:命の摂理

退職者を祝う宴のたけなわ。

退職者の一人である老教師が
「皆さん、聞いて下さい」
と、突然席を立って大きな声で言った。

一同、静まりそちらに注目すると、

皆さん、私は長年かかって人間が癌に冒される仕組みを解明しました。
それをご披露したいと思います。

そう、老教師は言った。

物理を専門とする教師だった。
どちらかと言えば目立つところのない、
風変わりなところのある人で、
それゆえ一部の若

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石

家を出ると
首のない男が歩いていた

思わず
あとをつけてみる

くたびれた犬のような足取りだから
あとをつけるのは造作もない

四つ角を右に曲がり
煙草屋の前を通り過ぎ
街はずれの川原まで来ると
男は
腕の時計を見ながら
ポケットからペンを出し

それを大事そうに
ベンチの上に置いた

そして男は川の方を見やると
ほっと息をつき

そこにそのまま石になった

渋谷寸感

渋谷寸感

なにとなき倦怠もある街にして道玄坂はさらさら白し 

不思議なもので
それだけで「詩」になることばがある

夕暮れとか
半月・三日月とか。
俳句の季語などは
そういう詩情を背負ったことばなのだろう。

トトロの「さんぽ」には
いっぽんばし
でこぼこじゃりみち
まがりみち
・・とかあるが、
「道」なら
そうした魅惑的な色を持つことばに
多くの人は一本道を上げるかもしれない。

・・・まっすぐな道でさ

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秋空を飛ぶ机

秋空を飛ぶ机

白く鳴る風鈴鈴虫せせらぎのすがしさに似て孤独といふは

眠りゐる時のみわれは宥されて秋満つる野に輝く蜻蛉

テスト監督に教室に行くと
どのクラスの黒板にも
「机は空に」
と、当たり前のように書かれていて
もちろんそれは
不正行為防止の注意なのだが、

いつも僕は一瞬、
机が空を飛んでいる光景を
ふと思い描いてしまう

秋の青空を机が飛んでいる光景・・

秋は寂しいと言われる
それは、煩雑な夏を越え

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彼岸花と猫と

彼岸花と猫と

ウィキペディア(Wikipedia)によれば
彼岸花は
曼珠沙華
死人花
地獄花
幽霊花
蛇花
剃刀花
狐花
捨子花
はっかけばばあ
など様々な名を持つらしい

名前が多いのは恐らく
その不思議さにあるのだろうが
彼岸花の不思議さは
あの紅さと
あの茎に花がにょきっと立った姿と
一瞬の生命の燃焼のように
姿を消すことにある

ひとは地上に現れることを
「萌ゆ」と言い
地上から消えることを
「枯る」

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アラモ

アラモ

アラモという映画があり
アラモという砦を守る
男たちの話だった
勝てるはずのない大軍を相手に
堂々と戦い
死ぬべき死を
確かに死んでいった
男たちの話だった

人の死に様ということに
その時僕はひどく胸打たれ
子供心に眠れなかったことを
今でもよく覚えている

それで
- 死から始めなければならない
なんて、ちょっと気取って
君の方を見ると
隣で聞いているはずの君は
もう すやすやと寝息を立てて

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愛ということ

愛ということ

君を不幸せにするために僕は
君といるわけではないのに
僕のために君が不幸せになることを
思う僕の思いが余計に君を悲しませることで
寂しさを募らせる
悪循環から逃れられない僕の
寂しさをどうすればいいのか
わからずにいる僕の
寂しさがまた君を寂しくさせる

君を求めようにも
どこか遠いところにいる君の
寂しさに僕はたどり着けないことの
寂しさをひとりかかえることでしか
その寂しさに
耐えるすべが見当

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れんげみち

れんげみち

その日 僕の道を
陽があたたかく照らしていた

春が春らしく輝き始めた
田んぼのあぜ道

れんげが一面に咲いていた

おばあちゃんが乳母車を押し
おじいちゃんが鍬をかつぎ
おやじの引くリヤカーを
おふくろが押し
そうして時が
静かに流れていた

決して楽とは言えず
決して豊かでもなかったが
ただ静かに時は流れ
人のために生きることが当たり前だった
限りない
そして無自覚な善良が
そこにはあった

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カミさんとトカゲ

カミさんとトカゲ

カミさんの報告によると
うちの縁の下に
トカゲが棲みついて
カミさんが
草取りとか洗濯をしていると
ひょっこり顔を出すのだという

この間、子どもが生まれたそうなのだが
ふと覗いてみると
その子どもが蜘蛛の巣に絡まって
ぐるぐる巻きになっていた

カミさんはそこで
糸からはずしてやり
体に絡みついた糸を小枝で取ってやったのだが
しっぽに糸がぐちゃぐちゃに絡まって
はずそうと試みたが
取れないままそ

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