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#記憶

微風 《詩》

微風 《詩》

「微風」

手放せないものを抱きかかえたまま

戻れない時の記憶を
胸の奥に閉じ込めた

描いていたのは 未来 君の姿

輪郭を鮮明に指先でなどれば 

不明瞭だった僕の約束が

想い出の場所で泣いているのが見えた

いつしか
許せない事ばかりが増えてゆき

それでも これで良かったんだと 
昇る朝日に言い訳をする

弱音は歪な線を描き 

今日に溶けて消えてゆく

伸ばされた君の手すら掴めずに

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反社会的文士 《詩》

反社会的文士 《詩》

「反社会的文士」

特に希望も無く絶望も無く

目の前にある景色を見ていた

僕が世界を無視するのと同じ様に
世界もまた 

僕を無視し続けている

何も無いところから
架空の物語は生まれる

内的な衝動が形像を
立ち上げて行く

反俗的な理想像

破綻と混沌の中で文学を生み出す

反社会的文士

僕等は意識の足元の深い底にある
寡黙な闇に降りて行く

誰もが其処に混沌を持つ

脈略を欠いた記憶の

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FOREVER 《詩》

FOREVER 《詩》

「FOREVER」

終わらない接吻 

夜に踊る可憐なドレス 

憂いを潜めた甘い香りと其の仕草

記憶の瞳に映る星たち

真実へ伸ばす腕が夢の先に導く

魂の歌詞と鼓動が共鳴し 
其の胸へと抱かれる

街には奇跡が溢れ 
真白な羽が舞い降りる

髪に肌に触れ 

言葉途切れに愛を探した

明日を照らし出す
夜空に輝く小さな星と

蒼を湛えた澄み切った空と

風に吹かれる君が居る

僕の傍 

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最後の言葉 《詩》

最後の言葉 《詩》

「最後の言葉」

沢山の記憶の積み重ねによって

僕等の人生は成り立っている

僕等は暗い空に浮かぶ雲の周りに
希望の縁取りを探し求める

頭上の暗雲の中に

幾つもの願い事を書き連ね

その裏側にあるはずの
明るい輝きを放つ太陽を心に描く

何処でもいいから遠くの国に行きたい

君はそう言った

その言葉は僕の中に眠る
僕自身の代弁でもあり

ふたりは胸の中にある 

それぞれの

暗雲と光を抱

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琥珀のグラス 《詩》

琥珀のグラス 《詩》

「琥珀のグラス」

物事の終わりは 
いつだってあっけないものだ

世界は一定の原理に従い

然るべき方向に流れて行く

僕は夢の中の

彼奴の事を探し求めている

夜の闇は当たり前だけど暗いんだ

彼の歌う詩は 

ひとりで聴くには悲しみが強すぎる

危うさが勝ち過ぎている

琥珀のグラスの中に想い出を留めた

僕が大切にしていたものは 
彼の記憶だと気が付いた

妙にくっきりとした形の月と風の

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詩人の末路 《詩》

詩人の末路 《詩》

仰ぎ見た杭の滝 

凪潮の息吹が斧音に変わり

乱脈を打つ
無言の太陽に突き刺さる黒き羽根

別れを告げた螺旋雲は
戻れない刻の様

乱立した黙礼が我に似る

一律に同じ形の雨が降り続く

其の類型を
突き崩す力を有した風を待つ

少なくとも

雨粒の形など覚えてはいない

其の極めて凡庸な
色彩と形式を持つ輪郭は

記憶に留めるに値しない

ひび割れた月に触れる指先

夜空に綴る言葉は黙り続け

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透明な風 《詩》

透明な風 《詩》

「透明な風」

必要な言葉は何故だかいつも

遅れて後からやって来る

あの日 あの時

僕等に
欠けているものなんて何ひとつ無い

そう君に伝えたかった

きっと君は微笑んでくれただろう

深い緑と青い空を持つ

夏だけが其処にあった

僕等はもう二度と

この場所に来る事は無い

そして君に逢う事も

定められた場所に
向かうそれぞれの道を歩み続ける

僕は一度だけ振り返る

其処には形を持た

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春の風 《詩》

春の風 《詩》

「春の風」

行き場を失くした

憧憬と忘れられない約束

夢の中に見た言葉にならない気持ち

時間は記憶の中で絡まり合う

僕等の心に刻印された時は

決して消える事は無い

泣きたいのに無理して微笑む君の顔

愛とか希望とかそんな言葉より 
君に逢いたい

心の空にある虹の欠片に触れた

春の風 

君の匂いがした

トロイの木馬 《詩》

トロイの木馬 《詩》

「トロイの木馬」

特定の目的を持ち

意図的に作り上げられた

偽装された世界の中で

沈黙を維持し続ける

真夜中の音は鳴り止まず

僕はその音に耳を澄ませている

記憶と意識の形を変えて
其処に留めた

巻き戻せない時を超え 

朱く霞む夕陽の残像が風に逆らう

汚された光に僅かに残る純粋な粒子

永遠に続く掟が
終わりなき夢に堕ちてゆく

トロイの木馬 

血は流されなくてはならない

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忘却 《詩》

忘却 《詩》

「忘却」

無意識の領域から

浮かび上がる記憶と欲求

割れた雲間から見えた幾つかの星

遠く忘却の中に消えた彼奴の言葉は
まだ僕の中に残っている

彼の意志の力は其処に留まり 

星を輝かせる 

光と影の複合体が創り出す本当の姿

其れは美しさの奥に隠された資質

表面上に見えるものが

美しくある必要も無い

例え醜いものであったとしても

僕は彼を正確に理解し
その輪郭を描く事が出来た

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Stand By Me 《詩》

Stand By Me 《詩》

「Stand By Me」

其処にある月が

全てを綺麗に照らしていた

満月に近い巨大な月が夜空に浮かび

僕は夜の音に耳を澄ませた

真夜中の深い静寂の中 

不自然な程明瞭な月明かりが
僕に語りかける 

僕は始めて

自然に呼吸する事の出来る
場所を見つけた

Stand By Me … Stand By Me

君の記憶をひとつひとつ

呼び起こし断片を繋いだ 

世界が夜に属しても月

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海色に沈む 《詩》

海色に沈む 《詩》

「海色に沈む」

目には見えない雲の切れ端 

小さな浮雲

ゆっくりと型を変えて空を彷徨う

其れは僕の過去 

失われた記憶を求めて漂っている 

部屋の窓から 
遠くに少しだけ見える海

巨大な海の切り取られた断片

其処には波音も
潮の匂いも無い海色の小さな塊

僕は記憶の枠の内側に居るのか
外側に居るのか

何も見えない思い出せない 

僕の知らない所で物事は進展し

行き場を失くしたの

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残照 《詩》

残照 《詩》

「残照」

深く歪み堕ちていく太陽の残照

明け方の空に浮かんだ薄い三日月

苛立ちの影が繰り返す
不規則な循環

淀みを含んだ

ある種の流れを暗部が包み隠す

其処にある秘密を知っているのは
僕と君だけだった

今 記憶や想い出が
ゆっくりと老いてゆく

静かなる一幕の幻影

冬の月光 《詩》

冬の月光 《詩》

「冬の月光」

逢う事の無い陽の光 

こだまし誘われ

僕は言葉無く ただ影を踏む

瞬く時は夜半の風と名も無き剣

疵跡ひとつ残さぬままに

あの鐘を鳴らし夜を迎える

冬の月光 生き延びた言葉 

記憶に留め

そして 影を踏む

真の慈愛をと叫び 

また 影を踏む