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さつき@読む温泉
2021年3月14日 07:33
右手にアザができた。すこし痛い。病院の薬を塗ると痛みは消えた。でもやめると再発する。治らない。理由が分からないまま、アザは手に何年もあった。大小の変化はたまにある。広がることもあるが、数ヶ月かけてまた元の大きさに戻る。考えた。大きさの変化に、法則性はあるのか?ハッとした。自分に合わない仕事についた時や、家族サービスが多い時期に、アザは大きくなっていた。これはつま
2021年3月10日 07:03
暖かくなって、つくしは起きました。まわりはきれいな花がたくさん咲いています。赤、白、黄色。子供たちが、花を思い思いにつんでいます。花束にしたり、髪にさしたりて遊びます。でも、花の咲かないつくしは見向きもされません。つくしは道端に小さくなっていました。「これ、なあに」お母さんと歩いていた子供が、足を止めました。「つくし」ママは笑顔になりました。「小さかったころに、よく集め
2021年3月5日 08:39
私は雪女よ。最期に君は笑った。だから空に還っていくわ。雪国育ちだったね。君の純粋さは、雪のように白かった。クールな所は、雪の冷たさ。微笑みは、日の下の雪のきらめき。君の体は、雪肌のなめらかさ──君の故郷を歩く。君のかけらを探して。気がつくと山に迷いこんでいた。雪が降る。ためらいがちに。ああ、君だね?自由になった君は、雪の舞いで僕の肩をたたく。僕の頬をぬらし、唇にふれ、
2021年3月4日 07:22
「あなたのウェディング姿を見るまでは死ねない」と言った祖母は、私が彼と挨拶にいく前に逝ってしまった。結婚式の日。教会のドアをあけて、ライスシャワーをあびながら階段を下りた時。ピールリー……すんだ鳥の鳴き声。「あ」涙がこぼれた。祖母の好きなオオルリだった。見に来てくれたのだ。--------------------------***こちらはTwitterの 140字小説( h
2021年3月3日 08:25
コロナで社会生活に影響が。でも日本人は「食事中はしゃべらずに箸を動かしなさい」と躾られてるし、手づかみで食べるものもない。ハグはせずにお辞儀を。土足はしない。疫病対策が日常的にある。うち? うちも昔から出来てるよ。食事は毎日無言だし。妻とは1m、娘とは2m以内に近づけないよ。対策はバッチリさ。あれなんだろう目から水が……--------------------------***
2021年3月2日 06:08
彼女は明るくやさしい。誰にでも。こんな地味な私にも。(もっと私としゃべって。笑顔ももっと。どこにも行かないで。他の人としゃべらないで──)蜘蛛の糸のような思い。ずっと自分のそばにいてほしいと願う。他の人をすべて排除したいという思い。これは嫉妬だ。友情ではなく。自分を恥じた。都会への大学進学を機に、引っ越しをすることに決めた。「行かないで」駅のホームで涙ぐむ彼女。「またね
2021年2月28日 06:37
互いの家に、あけましておめでとうとあいさつに行き、甘酒を飲んだ子供時代。お父さん秘蔵のウィスキーをなめて倒れ、こってりと母親たちに怒られた中学時代。久しぶり元気? とビールで再会を祝った大学時代。ワインボトルを真ん中に、別れ話をした社会人3年目。緊張しながら並んで三三九度を交わした結婚式。--------------------------***こちらはTwitterの 1
2021年2月27日 07:53
──タイムマシンがあったら何をしますか?突然話しかけてきた男がいた。戦後の闇市で芋を買う金もなくさまよっていた時。懐のにぎりめしを半分に割って、俺にくれた。路肩にしゃがんでむさぼり食った。3日ぶりの飯が腹にしみた。──私は、先祖達のプロポーズをぜんぶ見たい。お見合いや、結婚式でもいい。通りすがりの人として、おめでとうと言いたい。男がなにを言ってるのか分からなかった。家族はみんな
2021年2月24日 00:28
欲しい神棚がある。でも高い。メルカリで検索したが、無い。仕事の無理がたたったのか病気にもなった。ますます欲しい。すると見つかった。購入して神に感謝した。病気は一進一退。有名な占い師に相談した。「神棚を買い叩きましたね」「でも病気はその後に」占い師は首を振った。「思った時からご加護が目減りしたのです」--------------------------***こちらはTwit
2021年2月22日 05:57
お見合いの時からせっかちな主人。どんどん先に歩いて、私はいつも後から小走り。結婚式では神主さんに叱られてました。お宮参りも初詣も、階段の上で腕組みして「遅い」と怒る。それが、いつからか数歩先くらいに。今日は息切れしてたら、「ほら」と声。目をあげると、手。それと、視線をそらし気味にした主人の顔が。--------------------------***こちらはTwitterの 1
2021年2月21日 08:15
君のことをずっと見ていたのは私なのに。なぜ急に、カバンにうさぎのマスコットなんて付け始めたの。縫い目がバラバラなのは、誰かの手作りプレゼントかな。「貸して」奪うと、君は「返せよ」と。怒った声は初めてだね。「おっと」窓から落とすフリをして、止めた。君に本当に嫌われてしまいそうだから。--------------------------***こちらはTwitterの 140字小説( h
2021年2月20日 21:15
会社の上司が、定年退職をする。仕事は早く人望も厚いが、ロボットのあだ名をもつ人だった。何があっても感情的にならず、淡々と対処していた。私がミスをして謝るときも、「そうか。じゃあこうしよう」と指示を出す。怒られない分、よけいに恐かった。書類の向こうの表情が読めないから。「皆さんと共に仕事をした日々は充実し…」手には下書きの紙。口調は一本調子。最後まで書類の向こう側にいたいらしい。でも彼
2021年1月7日 18:30
経営してた三ツ星のフレンチレストランがつぶれ、借金を抱えた。従業員は解雇し、自分はツテを頼って知人の店に。味の意見が衝突して辞めた。何度かそれをくりかえして、ハローワークへ。そこからまた何軒か転々とした。今は格安のチェーンで、決まったメニューを出す日々だ。味付けは会社が指定している。変えたらクビだと言われた。クリスマスに、客なんか来やしない。すみのテーブルに、牛丼を食べている
2020年12月28日 06:08
社内の気になる先輩が、車の免許を取った。新車か中古車のどちらを買うか、同僚と話している。「傷つけないように気をつけるから新車」「ぶつけても心配ないから中古」「迷うなー」先輩は笑いながら、私のほうに来た。「助手席に人がいると、運転が上達するんだって。こんど乗ってくれない?」