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タイムマシンに乗って【短編】

──タイムマシンがあったら何をしますか?

突然話しかけてきた男がいた。戦後の闇市で芋を買う金もなくさまよっていた時。
懐のにぎりめしを半分に割って、俺にくれた。
路肩にしゃがんでむさぼり食った。3日ぶりの飯が腹にしみた。

──私は、先祖達のプロポーズをぜんぶ見たい。お見合いや、結婚式でもいい。
通りすがりの人として、おめでとうと言いたい。

男がなにを言ってるのか分からなかった。
家族はみんな死んだ。戦火によって。
日本じゅうがそうだった。

──もし悲しい生活をしてるなら、命をつないだことにただ感謝を伝えたい。おかげで子孫は元気です、ありがとうと。

俺はぽかんと男を見上げていた。
男はなんとも優しい笑みを浮かべていた。そして俺にひとつうなずくと、「そろそろ次へ」とつぶやいて人混みに消えていった。
最後の言葉が、風にのって流れてきた。

──ありがとう──


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こちらはTwitterの 140字小説( https://twitter.com/asakawario/status/1347502665001889793?s=19 ) を加筆修正し、再掲したものです。

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