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春のつくし【掌編小説】

暖かくなって、つくしは起きました。

まわりはきれいな花がたくさん咲いています。赤、白、黄色。

子供たちが、花を思い思いにつんでいます。花束にしたり、髪にさしたりて遊びます。
でも、花の咲かないつくしは見向きもされません。

つくしは道端に小さくなっていました。

「これ、なあに」
お母さんと歩いていた子供が、足を止めました。

「つくし」
ママは笑顔になりました。
「小さかったころに、よく集めたわ。お母さんといっしょに」
「ママのママ?」
「そう、ばぁばとね」
ママはしゃがんで、つくしをそっとなでます。
「思い出すわ。なつかしい……」
目に、きらりと光るものがありました。

「おうちに持って帰っていい?」
子供がききました。
「いいわよ」

子供はつくしをつむと、そうっと頭をなでました。
くすぐったくて、つくしはくつくつと笑いました。

そうしてはかまをぴんとさせ、ちょっぴり胸をはりました。

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こちらはTwitterの 140字小説( https://twitter.com/asakawario/status/1368563201227427842?s=19
) を、追加修正して再掲したものです。

(つくしって地味にかわいいので、春になるとつい探してしまいます (*^-^))

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