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非社会的

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#エッセイ

誕生日。なにがめでたい

誕生日。なにがめでたい

景気付けに、ささやかな愚痴から入ろう。

この頃なにがムカつくかって、YouTubeなんかで「祝・登録者2000人突破」とか自分から盛り上がっている奴ら。そりゃあはお前は広告収入とかあるから嬉しいかも知れんけど、ひとりびとりの視聴者にとってはそんなのどうでもいい数字だから、裏でこっそり一人で祝ってくれよと毎回思う。こういう恥知らずな無邪気さ、多くないですか。結婚披露宴での花嫁が親に手紙を読みながら

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他人の書くものは大体「もどかしい」

他人の書くものは大体「もどかしい」

人の文章を読んでいて「嘘つくなコラ」と思わないことは少ない。「こいつは本当に言うべきことを回避しているな」と感じた瞬間は肉声で叫ぶ。これは本の虫ケラだったチー牛的大学時代から続いている癖。プロ野球を観るのと同じで毒づいたり野次ったり批判すること自体に中毒性の快感を得ているのだ。性悪といえば性悪だけど、誰でもいちおう思い当たる節があると思う。それにこういうときに毒素を排出しないと一体どこで排出できる

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「欲望模倣ゲーム」を降りたいが

「欲望模倣ゲーム」を降りたいが

中古で買ったパソコンでいま本文を書いているのだけど、苛立たされることがいちいち多い。店頭でいじってみて判明しなかった欠点が次々あらわになりつつある。タイピングは大部分身体的な位置記憶に依ってなされることだから、キーボードの配置がすこし変わるだけでも相当に苦労するし、ミスタッチのたびにイライラが募ってしまう。小指がエンターを押したつもりがとんでもないところに着地していたりする。なかでも、いわゆる「矢

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あまりに雑駁な

あまりに雑駁な

私はいわゆる「ゆとり第一世代」に当たるらしいから、「ゆとり世代は円周率を三と教わった」とかいうデマ(ゆとり神話)がいまだに一部で通用しているらしいことにすっかり呆れている。「ゆとり世代」という括りが文脈上蔑称として機能しうることも最近まで知らなかった。つまり「ゆとり世代は打たれ弱い」という種類の物言いを好む人間が一定数あることを知らなかった。だいたいにおいて私は日本の粗雑で底の浅い世代論的言説の大

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「子供」も「老人」も嫌われてしまう世の中

「子供」も「老人」も嫌われてしまう世の中

ああ上階のガキの足音がうるさい。階段は静かに下りろよ。廊下くらい歩けよ。床の上でそうやってジャンプするなよ。脳が反射的に「嫌がらせ」と解釈してしまうじゃないか。そこは大地ではないのだ。それなりに穏やかだった海にとつぜん荒波を立てるようなことはやめろ。もう本当に止めてくれ。あらためて私は問いたい。ガキというのはなぜどうしてこうも「無神経」なのだろうか。あるいはガキの傍にいつもいる「保護者」はなぜどう

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「読書のすすめ」は馬鹿野郎のすること

「読書のすすめ」は馬鹿野郎のすること

読むことは禁断の快楽なのだから、お節介な大人どもは「子供たち」に余計な推奨的働きかけなどしなくてもいいのだ。文学や哲学や社会科学への「嗜癖」は、麻薬や酒へのそれよりも一層強く「人生」に作用する。本を読むことは素朴なる「動物的生」からの卒業であり、身の回りの当たり前の「言説」からの離脱なのだ。「既成の世界」など最早どこにも存在しない。

書物は人を革命家にもすればテロリストにもするし孤独な厭世的思索

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「母の日」が気持ち悪い

「母の日」が気持ち悪い

いわゆる「母の日」とか「父の日」に何かしらのプレゼントを買って手渡すことをかなり多く人がやっていることに、私はいつも皮肉抜きにびっくりしています。この手の感謝イベントはモノを売るサイドからすれば商業イベント以外の何ものでもなく、こういう露骨な消費者扇動作戦を大抵の人は心底から軽蔑しているに相違ないと想定していたのだけど、実はけっこう多くの人がそのイベントに合わせ購買行動を起こしているらしい(nif

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怒りとビビり

怒りとビビり

いったい世の有象無象どもが心を活性化させる動機の最たるものは、怒りの情動ではないだろうか。あらゆる書き物ジャンルのなかでも弾劾文くらい書いていて気持ちのいいものはない。「朝まで生テレビ」が一番盛り上がるのも演者が不意に激昂して放送事故っぽくなってしまったときだ。怒りを忘れてしまった人間にいったい何が作れるだろう。なにが主張できるだろう。私が思うに、意識のある存在者には全て本源的不満とでもいうべきも

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