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感情のエッセイ

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気持ちを込めて書いた文章
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#人生

あなたを見つめた3日間

あなたを見つめた3日間

その電話がかかってきた時、僕は本当にどうしようもない奴だという事実が、避けようもなくやってきた。二日酔いで鉛のように重い体をなんとか動かし、スーパーへ入ろうとした頃のことだったと思う。いつも通り気の抜けた声で電話に応じると、母さんが震えた声で言った。

「陽ちゃん、お父さんがね、倒れたの。心肺停止なの。」



電話の向こうで母さんは救急隊員に呼ばれ、通話がきれた。その後も何度か電話がかかってき

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心の棚に灯りともして

心の棚に灯りともして

そういえば、夏休みに入ったんだなぁ。noteを読んでいてぼんやりとそう思った。

僕たち夫婦に子供はいないので、そういう季節感があまりない。いつだって僕らは2人で、暑い寒いといいながら思い出に色を添えている。
心の棚に飾られたそれらを眺めながら「また2人が彩られたね」と確かめ合う日々。

写真が並んでも埋まらない空白は、子供ができたら埋まるのだろか。

なんて思いながらも、目に見える多忙の毎

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幸せを叫んでやる

幸せを叫んでやる

バス。イヤホンから音楽が流れてくる。軽快に刻むギターとは裏腹に車内はぎゅうぎゅうだけど、それでも心はひろびろとしていた。

ひさしぶりに呑みにいくからか、なんだか不思議な気持ちだった。
おちつかないような、おちついているような。
ウキウキするような、チクチクするような。

また停留所にバスが止まると、たくさんの学生がおりていった。運転席の後ろの席が空いた。このまま立っていたい気もしたけど、せっかく

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種を誇ってなんになる

種を誇ってなんになる

思えば幼ないころから気が長かった。

とっくみ合いの喧嘩なんてしたことがないし、理不尽を投げつけられても黙って泣くだけだった。
お母さんに気持ちを受け止めてもらうことはあったけど、誰かにストレスを思いきりぶつけたことはない。

ただの臆病者ってだけなんだけど、昔からずっと「やさしい子」と言われ続けてきた。
気づけば短気な人を見下してしまっている。でも、そもそも僕は頑張ってこの気の長さを獲得したわけ

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冷酒のように味わって

冷酒のように味わって

夜。風呂上がりに涼もうと外に出る。ひんやりとした風が気持ちいい。
月がでている。そこいらのコンクリに腰かけて、ゆっくりと味わうように息をすいこむ。

日中に揮発した草や土の水分がいっぱいに溶け込んだ空気。ゆっくりと冷やされたそれが、ひとつの贅沢として僕をみたしていく。

あぁ、夏の夜の匂いだ。

季節を彩る香りのなかで、最も芳醇で豊かな味わい。味わうごとにいろんな思い出が通り抜けていって、火照った

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優しくなんて

優しくなんて

あなたってなんでそんなに気が短いの?
そんな風に、人が怒っている姿を見ることがある。

自分だってそうだ。
なんでその程度のことが許せないのとか、なんですぐ雰囲気悪くするのとか。
そんな風に、水面下でいろんな人を見下しながら生活している。

ストレスというのは肌で伝わる。
近くに苛々している人がいる時、自然と空気は流れを止め、ただ物体が動いているだけの空間となる。

この息苦しさを産み出したあなた

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小さな傷

小さな傷

暗い過去が欲しい。
人の傷をどこか羨ましく思ってしまう自分がいる。

その傷っていうのは浅いものじゃいけない。人生が抉れたような、深いものじゃないといけない。なんでかって、そうじゃないと特別じゃないからだ。

志望校に落ちたとか、好きな子にふられたとか、ちん毛が膝のしたまであるとか、そういうのじゃだめだ。ひとつを除いて普通すぎるから。

「みんなと一緒じゃイヤ」

そんな感覚。例えば、好きなアーテ

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隠れた琴線

隠れた琴線

高校生の頃、大事な友人との会話のなかで涙が漏れ、止まらなくなったことがあった。
それ以来、なんだか僕は涙もろい。

アニメやドラマなんか見たらもうだめだ。全然ストーリーを知らないドラマでも、それがグッくるシーンだと涙ぐんでしまう時もある。

昔はそんなことなかった。おざなりに言えば「人の痛みが分かるようになった」なんてことなんだろうけど、そんな単純なことだろうか。

熱いシーンやキャラが好き。絶望

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ランタンほどの明るさで

ランタンほどの明るさで

好きなことを楽しむ姿は素敵だ。それが心からであればあるほど、キラキラと輝いて映る。

6月にnoteをはじめて以来、ぼくも楽しい毎日を過ごせていると思う。酒にまみれているのは変わらないけど。

今日は平日の休み。嫁さんはいまごろ職場で一生懸命やっていることだろう。

彼女は頑張りやさんだ。

コツコツとやれるマメさを持っていて、
チラシなどのデザインをするのが好きで、
研修に行くのが好きで、
物静

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人生を眺める

人生を眺める

他人の人生を見ているのは面白い。

自分にはまったくフィットしない価値観があって、そこから産まれる悲劇や喜劇がある。出来事をどう受け取るかというのはひとそれぞれで、それによって未来はかわっていく。

自動販売機にお金を入れて、ジュースが出てこなかった時、自販機をぶん殴ってしまう人もいれば、その場で「まじかよ」と笑いだす人もいるのだ。
どちらがいいとかではなくて、もうその時点で道は分かれてしまい、ど

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人生を映画にするならば(るんばさんとの交換note)

人生を映画にするならば(るんばさんとの交換note)

るんばさんとの交換note企画です。

人生経験と一口に言っても、どんな出来事がその人の糧になるかはわからない。

蚊を殺した時になにかに気づく人もいれば、母親が死んでも通りすぎていく人だっている。「人生を映画にするなら」というフレーズを思いついて、そんなふうに思った。

さぁ、劇場版ぴぴぷるのはじまりである。
基本的にダメな奴であるが、幼少から高校1年生くらいまでは、透き通った心で育っていたよう

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